134 鉱山へ

翌日、早速鉱山へと向かう。

ギルドで教えてもらった一般人でも散策できる鉱山の裾野の場所を聞いていたのだ。

裾野なので、大規模なものでないなら掘ってもいいらしいが、取り尽くされているので出ても小さな欠片という場所だ。


ギルドに時折現れる勘違いした冒険者というのは、がっつり鉱山で採掘ができると思っている人らしい。

がっつり採掘できる場所は決まった鉱夫しか入ることができず、もちろん勝手に入ると罪になる。

鉱山も街の立派な資源だから、それを勝手に採掘しようとすれば盗賊になるのは当たり前だよね。

大体は盗賊扱いになると脅すと大体は大人しくなるらしいけど。


今回教えてもらった場所はがっつりと採掘することは無理でも、体験したい人に案内をしている場所らしく、ギルドの売り場では簡易的なツルハシや手袋の貸出と販売をしていた。

ギルドもちゃっかりしていると、ちょっと笑ってしまった。

私たちもがっつり稼ぐためというより、鉱山を体験するために来たのでちょうどいい。

ギルドから必要なものを借りて向かうことにした。


「何が採れるかな〜」

「あんまり期待しないほうがいいよ?取れても爪より小さい欠片だって話だし」


今までにも掘り尽くされているだろうし、変な期待をすれば、がっかりすることもある。

殆どは砂や石の中にキラキラしたものが見えるくらいのもので、良くても爪先大の大きさの鉄鉱石が取れるという話だ。


「でも砂状の鉱石は見れるんでしょう〜自分の掘ったところからそういうものが出てくるのも楽しいそうじゃない?」

「まあね」


鉱山を掘るなんてもちろん初めてのことだし、わくわくするのは仕方ない。

掘ったところから土以外の何かが出てきてくれれば嬉しいし。

もし砂状の鉱石が出てくるのであれば、小さいガラス瓶に入れて思い出として持っておくのもありかな。


「ガラス瓶はございますので、いつでもお声掛けしてください」

「じいじ!準備がいいね!」

「以前海辺で砂を小瓶に入れてみたいと言われていましたので準備しておきました」


そういえば港町でそんなこと言ったような気もしないでもない。

前世で海の砂を小瓶につめたお土産があったな〜と思い出した時にでもつぶやいたのかな。この世界の人からみたら謎の言葉だと思うけど、じいじは準備してくれたんだ。

そんな話をしながら、あっという間に採掘場所に到着した。


「さてどの辺から掘ろうかな〜」

「結構な人が頑張ったのか、結構穴ぼこだらけだね」


山の斜面には至る所に削られた跡が残っている。

その跡の数も多いし、大きいところでは人の1人分の大きな穴が空いている。

鉱石が取れないとわかっているはずなのにこの大きさの穴を掘るなんて、どれだけ鉱石が欲しかったんだろう。


とりあえず穴が空いてなさそうなところを探して山の斜面を進んでいくが、めぼしい場所はすでに掘られているようだ。

比較的浅く掘られているところを掘ったほうがいいかな。


「う〜んできれば誰も手をつけてないところ掘りたいんだけどな〜」

「誰も手をつけていないところか。あるにはあるけど」

「どこ!?」


結構ガチに掘りたいらしいクリスの勢いに押されて、その場所を指す。


「上か〜!」

「うん、手が届く場所は大体掘られているから、それなら人の手が届かない上の方なら手つかずかなって」

「おぉ〜!それでいこういこう!」


嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるクリスに苦笑しながら、土魔法で土台を作って大人の手でも届かない場所にあがる。

この辺りであれば、掘られた形跡もないし、次に来る他の人の迷惑にもならないだろう。

クリスは待ちきれないとツルハシを構えている。

テンションが上がりすぎて土台から落ちないか心配になるよ。


「じゃあ、掘っていこうか?」

「おー!」


どれくらい鉱石を取れるなんてわからないから、とりあえず目の前の土壁にツルハシを立てていく。

ポロポロと落ちていく土の中に今のところ鉱石は見当たらない。

キラキラとした鉱石の粒も見当たらないようだ。

まだまだ掘り出したばかりと、ツルハシを無心に振るっていく。


それから10分ほど掘っていくが、何も出てくる気配がない。

クリスも無言で掘り進めているが、出るのは土ばかりで段々テンションが下がってきているようだ。

ついに1時間掘っても何も出ず、仕方ないので昼食を食べるついでに休憩することにした。

でも休憩しても考えるのは鉱山のこと。


「こう無闇に掘ってもダメかも?」

「そもそも鉱山だとしても、鉱脈に近くないと鉱石が混じらないのかな?」

「そんな〜爪先くらいでもいいから自分で掘って出したいな〜」


クリスが嘆くが、流石に鉱山の知識なんてない。

こういう時の神頼みならぬ、じいじ頼みです!

じいじをちらっとみると、仕方なさそうに苦笑して山肌を指した。


「鉱脈のことに気づけたのは良かったですが、鉱脈の見分け方まではまだわからないようですね」

「どれも同じに見えます…」

「よく見てよく考えてください」


じいじに言われて見る山肌は本当に茶色の土の色一色なのだ。

でも、炭鉱のイメージだとカツンカツンと硬い音が響いている気がする。

鉱石を含んだ土ならどちらかというと石のように硬くて、もしかして灰色をしているの?


「そうです。鉱石は土ではなくどちらかといえば石です。なので硬い石が多くある地層をまず探すことが必要です」


じいじの説明になるほどと頷く。

鉱石のせきは石だもんね。

踏み台に使っていた土魔法を解除して、掘っていいと許可を得ている範囲の土をよく見て回る。

硬そうなところを少し削って灰色っぽい土を探していく。


「うーん?もしかしてここ?」

「そんな感じがする?」


そうしてクリスと一緒に探しあてた鉱脈は、なんと足元だった!

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