133 再出発

じいじがいないのにダンジョン脱出は大丈夫なのか不安になったけど、ダンジョンの脱出には冒険者ギルドで保管していた帰還石を持って行くのでダンジョンに閉じ込められることはないらしい。


リアンさんたちもすぐ準備してダンジョンに潜る予定だというが。

私たちのことは別の予定があるとギルドマスターに話してあるためなるべく早めに街を出たほうがいいと言われた。

これはもう決定事項らしい。

ということはリアンさんとはここでお別れということになる。


10日間という短い間だったけど、ダンジョンでは色々お世話になった。

普通のダンジョン探索ではできないことだらけで、規格外のじいじに振り回されっぱなしだったけど、それでも一緒についてきてくれた。

色々面倒だったと思うけど、最後にはギルドへの報告も請け負ってくれて、とても助かった。


「リアンさん、改めてありがとうございました!」

「うんうん、面倒なメンバーだったと思うけど助かったよ!提案通り明日には街を出ることにするね」

「はい。またいつかお会いできる日を楽しみにしています」


それぞれと握手をして、リアンさんは宿を出ていった。

私たちも不審に思われない程度に旅の準備をしてから、翌日には首都のラーナルに向けて出発したのだった。


「そういえば、隣街のローウに寄るのは危ないかな?」


ヴェッレットの街を出て、そのままローウへ続く街道を歩いている途中、ふとローウでの出来事を思い出して眉をひそめた。

冤罪かけてきた部隊長やドラゴン討伐を知っているギルドマスターに見つかったら面倒かも。


「ローウに何かあるの?記憶だと放牧が盛んでのんびりした街って感じだけど」


そういえば、クリスにはエルフの里に来る前の話をしていなかった。

ローウではじいじがドラゴンを退治して牧場主に感謝されたことや、ローウに向かう途中で盗賊を捕まえてローウの領兵に渡したけど、なぜか盗賊の冤罪をかけられたことを話した。


「おじい様もリサお姉ちゃんも派手な行動するね〜」

「目立ちたくてしたわけじゃないよ!目の前に困っている人がいたから助けただけ!」


そう人助けをしただけなのに、周りが変な方向に話が進んでいくのが悪いのであって非はない!

確かにドラゴン退治は派手だけど、それだって誰かが追い払わないと被害が出てしまうだろうし、仕方ないことでしょう。


ちょっと隣街に移動しただけなのに、なんであんなに色んな出来事に巻き込まれるのやら。

首都での出来事もいくつか共有しておいたほうがいい気がするけど、まあその話は行きながらでいいかな。


「ローウの街でまた絡まれるのは嫌だけど」

「そうですね。ローウを通らないとなると行く方法は2通りでしょうか?」


じいじが提案したのはローウの街には寄らずに野営しながら森の中を通る方法と、遠回りになるけど東の方面に進んでから首都に入る方法だ。

その東にはヴェトネスという街があるそうだ。


「小さめの鉱山があるだけで特に目立った特産がない街です」


鉱山も立派な特産に思えるけど、特産にならないくらい小さいのか。

住んでいる人には悪いけど、人の流通が少ないのであれば絡まれることもないかも。

森で野営するのもクリスの経験になるけど、それは魔の森で体験できるから今慌ててする必要はない。


鉱石に興味を持っていなかったので詳しくは知らないから、街に寄るついでに見て回ってもいいかもしれない。

鉱山がある街なら普通の街では見れない鉱石とかが売ってあるかもしれないしね。


「鉱山のほうに行ってみる?」

「そうだね!鉱石は実際に見てみたいしね!」


結果、ローウの街への懸念と鉱石への好奇心が勝って遠回りな道を選ぶことに。

もともと明確な期日も決めていないのんびりとした旅だ。

楽しそうなことや気になることがあればいつでも行き先を変えることができる。


普通の人なら収入を気にしてそんな変更できないだろうけど、現地で稼げる冒険者の特権だろうな。

前世と違ってこの世界では民の生活の保障なんて何にもない。

個々人で判断して生き抜いていかないといけない世界だから、お金が稼げる間は好きなことをしても罰は当たらないはず。


「じゃあ進路をヴェトネスに変更!」

「おー!」

「この街道からは進めないので、森を突っ切って東側の街道にいきますよ」

「ええっ!?」


どうしてそう意気込みを折るような事を言うのー!

せっかく気合を入れたところなのに。


ちょっとテンションが上がりすぎていたから、注意したかったのかも知れないけど、もう少しやり方があったでしょうに。

毎度のように口を尖らせて不満をアピールするけど案の定じいじにはスルーされる。


グチグチ言っても仕方ないので、じいじの言う通り街道横の森に入って東側への街道を目指す。

出たばかりのヴェッレットの街に戻るのも変に怪しまれそうだし、仕方ない。

街道横の森は人が近くにいるためか、魔獣なども出ず、あっさり抜けることができた。


そうして東への街道を進み、数日後、何事もなくヴェトネスの街に到着したのだった。

早速冒険者ギルドにお邪魔して、この街のおすすめの宿と食べたほうがいい料理などを聞くことにした。

もちろん鉱山に関しての注意事項も忘れずに聞いたよ。


ここの鉱山は小さいし、産出するのは鉄鉱石などありふれた鉱石で、時折珍しい鉱石が出てくるくらい。

飛び抜けてすごい鉱石とかはないけど、産出量が安定しているので街は鉱山の街としては穏やかな街なんだそうだ。

時折勘違いした冒険者が暴れるが、そこはギルドで抑えているので安心して欲しいと言われた。

今度はゆっくり過ごせそうな街だといいな。


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その言葉がフラグになるのは定番ですよね?にっこり!

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