132 ダンジョンからの帰還
さて目標としていた10日間のダンジョン探索も裏ダンジョン4階層攻略もできた。
当初決めた通りに街へ帰還することにした。
帰還石を使って帰るものだと思っていたが、じいじからストップがかかった。
ダンジョンでも手に入れるのが難しい希少な帰還石を使うのはもったいないと。
じゃあどうするのかというと、例の如くじいじがダンジョンを弄って出入り口をあっさり作ってしまった。
とてもありがたいんだけど、他の冒険者が必死になって探したであろう出入り口がこうも簡単にできることに、世の中の不公平さを感じてしまう。
恩恵を受ける立場なんだろうけどね、なんかじいじがすみませんと謝りたくなるのはなんでだろう。
ちょっと意識が遠くなりそうになったけど、無事ダンジョンから出て街に向かうことができた。
通常の冒険者であれば、ギルドに行って魔石などを売却するのだろうけど、普通じゃない私たちは先に宿を取って休むことにした。
一晩休んで、さっぱりした頭で話し合うのはギルドへの報告内容と売却だ。
裏ダンジョンについては報告が必要だけど、伝えるのはギルドマスターだけにすることにした。
もしかしたらギルドでは把握していて、難易度の高さから公表していないだけかもしれないからだ。
帰還石がないと脱出は難しそうだし、公表して宝箱に目が眩んだ冒険者が何人も行方不明とかになられても困る。
だからギルドマスターにだけ伝え、どこまでの情報を公開するかはギルドに任せることにした。
行方不明者が出て、情報を流したお前たちが悪い!なんていう逆恨みがあるかも知れないし。
そしてギルドマスターに報告するのはもちろんリアンさんだ。
ギルドマスターは元パーティーメンバーだし、日頃からダンジョンに潜っているリアンさんの言葉は無視できないだろうからね!
決して面倒だからリアンさんに押し付けたというわけではないよ?
ギルドに行くのであれば、ついでにパーティーメンバーがいらない魔石などのドロップ品も売却してもらう予定だ。
群れの討伐が多かったから予想以上に魔石が溜まってしまったのだ。
アイテムボックスがあるので保管はしておけるが、使う予定のないものを死蔵するのはもったいないということで売却してその売上金額を分配することにした。
リアンさんはまた分配に抵抗していたけど、クズな冒険者になりたくないとゴリ押しして納得させた。
そうしてリアンさんをギルドに見送り、私たちはその間、次に行く場所を検討することにした。
「ダンジョンで魔獣討伐や地図作成ができるようになったから、次は実際の森で魔獣を倒せるようにならないとね?」
「ここから近い魔の森だと隣国ですね」
実際リアルな魔獣を倒すときには気をつけることがたくさんある。
それがスムーズにできるようにならないといけない。
私も色々じいじから教えてもらった、
事前に森にいる魔獣の種類と素材となる貴重部位を確認しておくとか。
森に損害を出す魔法は禁止とか。
倒す際はなるべく傷をつけずに、最低でも価値のある部分を傷つけないようにとか。
あとは解体もできるようになっておいたほうがいいだろう。
アイテムボックスがあればそのままで収納してもいいけど、マジックバッグだと容量制限があるから貴重な部位だけ選別して解体できるようになって欲しいな。
「えぇ〜できれば辺境じゃなくて、人がたくさんいるところに行ってみたい!」
「…なんで?」
人がいっぱいいるところなんて煩わしいだけな気がする。
顔が整っているクリスが行っても面倒事が舞い込んで、得になりそうなことなさそうだけど?
私も首都に行った時に何か色々巻き込まれたし、あんまり近づきたくはないけどな。
あぁ、でもチキンステーキのお店には行きたいかな。
ダンジョンでも食べたから補充しておきたい。
お任せしているソースもどうなったか確認しよう。
あのおじさんならもっと美味しくしてくれていそうだしね!
そうだ!
ダンジョンで採った果物もあの宿の料理長に差し入れしようかな!
きっと美味しいデザートを作ってくれるはず!
そう考えると首都に行くのも悪くないかも。
「リサお姉ちゃんも行く気になってきたみたいだね!」
「そうだね。会いたい人はいるかな〜」
私の心境の変化にクリスはにんまりと笑う。
ちょっと心を読まれたようで恥ずかしく感じて、誤魔化してしまう。
「あとね、海を見てみたいな!」
「海か」
「森ばっかりだったからね!実際に見てみたいな!」
海なら港町のリーンに行けばちょうどいいかも。
海も見れるし魔の森もすぐ近くにある。
ちょうど来た道に戻るように、首都を通って港町に行けばクリスの希望も叶えられる。
「じいじはどう思う?」
「それでよろしいかと」
じいじの反対もないようなので、行先はこれで決まった。
首都に寄って港町で海を見て、魔の森で魔獣狩りだ!
リアンさんが帰ってきたらそれを伝えて、明日から出発の準備をすることになった。
それまでは宿でゆっくり休もうと話した。
しかし冒険者ギルドに報告しに行ったリアンさんはその日に帰ってこず、翌日昼過ぎにげっそりした表情で帰ってきた。
この状況で首都へ移動することを伝えるのも心苦しいと思いつつ、次は首都に行くことを伝える。
「そうなのですね。実はギルドマスターより裏ダンジョンの調査を依頼されまして」
リアンさんも申し訳なさそうに報告してくれた。
裏ダンジョンの報告を聞いたギルドマスターはリアンさんの話を信じないわけではないが、実際確認しないといけないということで、数人連れて裏ダンジョンに向かうことになったというのだ。
ギルドマスターはじいじも含めて発見者全員に参加して欲しかったようだが、リアンさんがそれを止めてくれたそうだ。
調査に行くのがリアンさんだけならいいが、他の人も一緒なら遠慮したいので助かった。
それでも発見した者が1人もいないというわけにもいかず、リアンさんがその調査に参加するこということで落ち着いたのだという。
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