129 次の仮ダンジョン

流石にこの階段に関しては下りるという安易な選択肢が取れないので、じいじに素直に聞くしかない。


「で、じいじこれどうなっているの?」

「最近じいへの扱いが雑に感じるのですが?」


真顔で声だけで抗議を表さないでよ。

そういう扱いをさせているのはじいじでしょう!

訳のわからない状況に追い込むんだから。

振り回されている身にもなって欲しい!


こちらもプンプンと頬を膨らせて抗議を表してみるが、じいじはそれを首を振って受け流した。

抗議しても仕方ないので再度仕切り直す。


「で、これは?」

「ダンジョンの階段ですね」

「そうだけどっ!そうじゃないー!」


じいじはわかっていて遠回しな事実しか言ってないでしょう!

聞きたいのは事実じゃなくてその先!


「一応12階層に続いていますよ?」

「それは本当の?」


「えぇすべて探索したら出現するように組んでおきましたから」


この階段が最後に現れたのはどうやらそういったギミックを仕組んでいたかららしい。

クリスが魔力を感じなかったって言っていたのは、予め組まれていたからなんだろうか。

ダンジョンに存在しなさそうなそういう罠みたいなことも組み込めるものなのか怪しいけど。

本当にダンジョンマスターとかになっていないよね、じいじ?


しかし今考えなきゃいけないのは目の前の階段だ。

12階層に行けるなら行ったほうがいい?

裏ダンジョンの今までの階層の鍵を持っているから行こうと思えば、1階のあの突き当りからまた行けそうだし。


でもな、他の冒険者がいる場所はなぁ。

衣食住どれも快適に過ごせそうもない。

できるならじいじが作った11階層で採取を続けて、作りたいものを作っておきたいな。


「クリスたちはどう思う?このままじいじの作った仮の11階層を探索する?本当の12階層に言ってみる?」

「快適なのはここだけど、同じところを探索しても経験にならないよね〜」

「ということは?」

「でも他の選択肢もあるよね?」


12階層に行く?と聞く前にクリスはにんまり笑ってじいじの方を向いた。


「おじい様、11階層を作り直したり、もしくは階段下の12階層をおじい様が作ったダンジョンに変更できる?」

「おっ?」


クリスの提案になるほどと頷く。

仮の11階層を作ったのはじいじなんだから同じように12階層を作ってもらえばいい!

その時に魔獣のランクなども上げてもらえば、討伐に地図作成のスキルレベルも上げられるはずだ。

他の冒険者がいないのであれば、ついでに果物をジャムにしたりデザート作りもしたい。


「私もそれがいい!ついでにドロップ品に砂糖や肉や魚が欲しいです!あと野菜や香辛料も採取できればなおいいです!」

「リサお姉ちゃん、欲張りすぎじゃない?というかドロップ品まで操作できるの?」


クリスに呆れた目で見られたが、欲しいものは欲しいのだ。

デザートを作るためには砂糖が必要なのだ。

肉も魚も一応アイテムボックスに保存しているが、使っていけばどうしても減っていく。

特に魚類は港町で買ったきりなので残りが少ない。

それに新鮮な野菜も欲しいし、香辛料をたっぷり使ったカレーも食べたい!


衣食住の食は消耗品なのでどうしても使うと減ってしまうのだ。

貧乏性のためか減っていくのが辛い。

常に同量を確保するかむしろ増やしておきたいと思ってしまう。

人の性かな。


これも容量無制限で時間停止機能がついているアイテムボックスがあるからだけど。

アイテムボックスがなかったら、生モノを長期間保存なんてできないからね。


「そうですね。魔獣の強さに応じて希望のドロップが出るように調整しましょう」

「やったー!」

「ドロップも調整できるんだ」


ダンジョンの森を作った時点でドロップ品も調整できると思っていたよ!

さすがじいじだね!


早速じいじが作り直すということなので、守護者の門のところに戻った。

そしてじいじが作り直す間に昼食の準備を行う。

午前中はダンジョンの森を探索しっぱなしだったので、お昼はガッツリしたものが食べたい。

ということで定番のステーキにすることにした。


もちろんただのステーキではない。

お肉もソースも複数用意して焼き肉のように、好きなだけ焼いては好みのソースにつけて食べるようにする。

そして首都で買ったあの美味しいチキンステーキも準備する。

チキンステーキはたくさん購入したとはいえ、補充するには首都に行かないといけないので今回は1人2枚までで我慢して欲しい。


お肉だけでは栄養の偏り過ぎなので、サラダとスープなど付け加えて、これで野菜不足も解消。

そして昼食の目玉は先程ダンジョンで収穫したばかりの果物!

食べやすい大きさに切ってをテーブルに並べる。


「うわー美味しそう!これはさっき取った果物?」

「そうそう!甘くて美味しいから早く食べよう」

「じゃあいただきます!最初は果物から!」


クリスはそう言ってリンゴみたいな果物を口に入れると、とろけるような表情に変わった。

今まで食べたことあるどの果物より甘くて美味しいもんね!

食べたことない果物だけど、元々美味しい果物なのか、ダンジョン産だからなのか、それともじいじがそういったものに改良したのかわからないけど。


「これは、オーロアップルでは?」

「うん、鑑定したらそんな名前だったと思うよ?」

「これは貴重な果物なんですよ!簡単に取れるものじゃないんです!」


アップルって出たからリンゴみたいな果物と思っていたんだけど、有名な果物のようだ。

そんなのんきな事を考えていたら、リアンさんから注意を受けた。

魔の森でも奥深くか、ダンジョンでも深層にしか生えていない果物らしい。

特別な薬効はないが、とても希少で美味しい果物だから高値で取引されるらしい。


薬効がないから薬草図鑑にも載っていなかったんだね。

果物でも希少で高価なものがあるということを知ったよ。

言われたらそういうものもあり得たなと思ったけど、わざわざ調べないからな。


まあ希少と言われても、美味しいものだから売りには出さず自分用に持っておこう。

薬効もないならなくて困っている人もいないだろうし、採取した人の特権だよね!

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