128 仮ダンジョンの攻略

「まあまあ、リサお姉ちゃん。おじい様が作ってくれた森だから迷うこともないだろうし、ある意味安心して地図の練習ができるよ?」

「そう言われればそうだけど…」


やるせない気持ちにうがーっと気持ちが溢れそうになるが、そこにクリスがなだめてくれた。

クリスにも得があるし、私も地図スキルの練習にはなるけどさ。

じいじのあまりにひどいチート具合を認識すると一般人としては格差を感じてしまうんだよ。


「リサお姉ちゃんも十分に一般人から逸脱だと思うけど…」

「うん?なに?」


クリスが何かを言ったような気がして聞き返したが、なんでもないと微妙な笑顔で返された。

クリスもじいじのチート具合に呆れているのかもしれない。

そう不満ばかり垂れ流しても自体は好転しないので、とりあえずやるべきことをやろうと気持ちを持ち直す。


「気を取り直して森の探索と地図作成をやろう!」

「うん!今できることをするのが建設的だよね!」


クリスとも気合を入れ直して、いざ再開!

森の外周は無理だったけど、一歩森の中に入って、内周から進めていく。

これで拡張された森の大きさがわかるはずだ。


黙々とクリスは歩幅がずれないように集中して、私が薬草採取をしながら魔獣を見つけた魔獣を討伐していく。

リアンさんは私を抜いてきた魔獣の対応をしてもらうローテーションになった。

11階層の森を参考にしたと言いつつ、じいじが好きに弄くったのを知ったせいか、遠慮のなくなったじいじが容赦なく11階層にいないであろう魔獣たちが襲ってくる。

ギルドの資料でしか見たことはなかったけど、大体の魔獣は首を飛ばせば倒せるので安心して狩っていく。

注意するのは毒持ちとか魔法を使う魔獣くらいかな。


薬草も今まで見たことない薬草も多く生えていた。

その中にはエルフの里のフィリップさんに聞いていた希少な薬草があった。

変なところに雪が積もっていたので、怪しんで雪をかき分けたら中から極寒でしか生えない薬草が出てきた。

ダンジョンって環境さえ合えば希少な薬草も生み出せるんだ。


そしてふと思い出したのが、人族がダンジョンを研究しているという話。

ダンジョンがどうやってできたかは、まだ解明されていない。

何のために魔獣を生み出し、宝を与えるのか。

それが解明できれば、人が求めるものを無限に出せるようになるんじゃないかって研究している人族がいるってエルフの族長のリアさんに聞いたな。

目の前の薬草を見て納得してしまう。

確かに人里からは遠い雪山にしか採れない薬草がダンジョンで生えるならそう考えてしまうのも仕方ない。


まあその研究結果が出る前に、じいじはダンジョンを好きに弄って好きなものを生み出しているわけですけど。

これは本当にチート過ぎないかとちょっと遠い目をしてしまう。


内周の地図ができあがり、次は門の位置からまっすぐ探索することになった。

これで森の半分の範囲を絞ることができ、さらに横にまっすぐ進んで行くことで森を1/4ずつに区切ることができる。

そうして1/4ずつ探索を進めることができるというのだ。

最初に地図作成の手順を考えた人はすごいな。


そうして探索を続けていると、なんと嬉しいことに果物がたくさん実っていた!

しかもリンゴや梨系の木に実る果物からイチゴなどのラズベリー系の草に実る果物など、多種多様な果物が!


鑑定をかけるとどれも完熟して食べ頃と出ている。

念のためと1つ味見してみたが、どれも甘く果実の美味しさが味わえる物ばかりだった。

この世界にも砂糖は存在していて、過去の転生者のおかげかそれほど高級なものではない。

それでもやっぱり庶民が大量に使えるほど安くないので、基本的な甘味は果物になる。


今までは果物は店で買うか、森で採るしかなかったので大量に確保することが難しかった。

お店の果物を買い占めるのも気が引けるし、森で採取するときは森の生態系を崩さないようにある程度残していたからだ。

でもダンジョン産なら心置きなく全部採取できる!

アイテムボックスのフル活用と言わんばかりに、見つける度に採取しまくった。


このダンジョン探索が一段落ついたら、色々作りたいな。

ジャムにゼリーにフローズンにドライフルーツも!

後はドライフルーツの入ったマフィンやクッキーも美味しそう!

高級店とかでしか売っていない生の果物と生クリームたっぷりのケーキも食べたいな!

でも普段気軽に食べれるジャムのタルトケーキもいいな!


想像して涎が出てきそうな口元を押さえて耐える。

今は探索に集中して早く探索を終わらせなければ!


あー楽しみすぎる!

手のひら返しと言われようが、じいじに伝えたい!

じいじのチートありがとう!

ダンジョンを乗っ取るとかどんだけチートだと思っていたけど、こんな嬉しいチートなら大歓迎だ!


テンションも上がって、探索するスピードもどんどん上がっていく。

探索というよりも美味しいものを探していると言ったほうが正しいかもしれない。

でもなんでも楽しい方がいいもんね。


「ようやく地図ができたところで、これかぁー」

「もしかして狙っていたんでしょうか?」

「探索の動きを見ながら、最後に配置した可能性は高いかな〜。でも魔力を練っているような動きは全然感じられなかったんだけどね」


3人がそれを見つけた瞬間、同じようなことを思い浮かべたのだった。

そう思われても仕方ないのだけど。

だってようやく森の中を制覇したと思った最後の場所であったのは、階段ですよ、階段!

このダンジョンで初めてとなる階段があるんだよ!


「これ本物かな?」

「見た目はダンジョンの次の階層に繋がる階段にそっくりですが」

「これ降りたらどこに繋がっているだろう?」


ここって元は裏ダンジョンの3階層なわけで、こんなところに階段なんてあるはずもなく。

あると言うことはじいじが設置したと言う他にならない。


そういえばダンジョンって下に降りていくのになんで2階層とか階層が増えていくんだろうと、なんて意味もないことを考えてみたくなってしまう。


まさかとは思うけど、この階段を降りれば通常のダンジョンに出れるとか言わないよね!?

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