127 仮ダンジョンの出口

ちらっとじいじを見るけど、微笑んでいるだけで何も言わない。

じいじに聞いたほうが一番早いけど、多分聞いちゃいけない。

これも修行の一環なんだと思う。


「とりあえず森の中を全部見てみる?」


時間はあるし、この仮ダンジョンの11階層を全部回ってもいいだろう。

11階層にいない魔獣もいるし、薬草がたくさんありそうだし、採取の練習にもなる。

ダンジョンで魔獣の討伐に慣れたら、本格的に魔の森で狩りの練習もしないといけないし。


「そうだね!ついでに迷わないように地図の練習もしてみようかな?」

「それね!地図がある場所しか行かないってわけにもいかないし、地図がない場所での探索の練習になるかもしれないね!」


クリスの提案に賛同する。

今回みたいにいきなり訳のわからないところに迷い込むことがないとは言い切れない。

どこに行っても迷わないように地図作成の練習をしたほうがいいだろう。


私が討伐と採取を優先して、リアンさんはクリスに地図の書き方を教えてもらおう。

初めての地図作成を道の途中から始めるのは難易度が高いので一旦入口に戻ってから再度スタートすることになった。

道はリアンさんが覚えていたので道に迷うことなく、来た道に戻ることができた。


スタートした扉の近くまで戻って、まずは道具を準備する。

使う道具はペンと紙があればいいとのことで、クリスに渡す。

地図の作り方は人によって異なるが、今回教えてもらうのは初心者向けの方法らしい。


「紙を縦と横にそれぞれ5回くらい折り曲げます。歩数は自由ですが、決まった歩数のところで目印となるものを1折り目に書いていく感じになります」


初心者向けというが、難しそうに感じる。

この地図作成って、絶対1人じゃできないよね。

自由とは言え、同じ歩数を同じ幅で歩くようにしないとズレが発生するだろうし、だからといって歩幅に集中しすぎて魔獣の接近に気づかないと大変だ。

しかもまっすぐ進んでいるつもりが微妙に左右にズレていきそう。

未知の場所ならパーティーで役割分担しないと地図なんて無理そうだ。


クリスのその作業を見ながら、そういえば自分が持っているスキルに地図スキルがあることを思い出した。

地図がある場所ばかり行っていたし、地図がない場所もじいじの先導で歩いていたから地図スキルにはまだお世話になったことはない。


持っているスキルを把握しておくのも大事だと思い、さっそく地図スキルを使ってみる。

すると目の前にデジタル画面が出てきて、歩いた場所が自動で反映されていく。

私のスキルでは筆記用具や紙は使わないようだ。


このスキルがあれば、どんな場所でも来た道を戻ることができる。

そう考えると私が持っている地図スキルがどれだけ便利なスキルかわかるよ。

これはチートと言ってもいいくらい便利なスキルなんじゃないかな。

迷惑をかけられた神様だけど、授けてくれた感謝は後で祈っておこう。


あと意識すれば某ポッケに入りそうなモンスターのゲームと同じようにデジタル画面の地図に魔獣のマークと薬草のマークのスタンプを押すことができた。

うーん、やっぱりこのスキルは便利だな。とってもイージー。

地図もない場所を探索するときも道に迷うことなく、重宝しそうです。


そんなことでいよいよ探索しながら地図の作成を作成することになった。

クリスはまっすぐ進む自信がないということで、森の外周から地図を作って行くことになった。

これなら迷わずなおかつ正確な地図が作りやすい。


私もじいじが作ったダンジョンだから、もう使うことはないかも知れないけど、現れた魔獣の場所と採取した薬草を地図に残していくようにした。

熟練度をあげればスキルも進化するかもしれないし、本番でいきなり地図が必要になったときに困るから、今の内に練習しておくことにする。


元々は石造りの四角い部屋だったので外周の地図は直ぐに出来上がったのだが。


「これおかしくない?」

「だよね!?」


どう考えても森の中を歩いた距離と外周の距離が合いません!

ということは、どういうことかというと。


「じいじ!森の中の空間を広げているの?!」


この狭い…狭くはないけど仕切られた部屋なのに、たくさんの種類の魔獣が出てきたり、薬草が生えていたりするなとは思ってたけどさ!

まさか森の中が広がっているとは思わなかった。

これじゃあ本当にダンジョンじゃないか!ダンジョンの中だけど。

折角書いた外周の地図が役に立たないよ!


ちなみにダンジョンの仕業でもないと確信している。

なぜかって?

じいじが持っていたテントは空間拡張している。

初めてそのテントを使う時、外見と内側の広さの違いに驚いていた私に、

「意外と簡単に作れますよ?」と言っていたのを覚えている。

だから空間魔法系をじいじは持っていると断言できる。


その時はそんなもんなんだと思って深く考えなかったんだけど、冒険者になって段々世情を知っていくとその技量がとんでもないものだとわかってきた。

空間魔法を持っていたとしても、いちにのさんでできることではないんだよ、一般的には!


アイテムボックスもレア中のレアだけど、マジックバッグだってかなり高価だ。

入手するにはダンジョンから手に入れるか、空間魔法持ちが作成するしかない。

空間魔法を持っている人だってマジックバッグを1つ作るのも大変だと聞いた。


それなのにダンジョンの中を勝手に弄って、さらにその中の空間を拡張するなんておかしい所業ができるのはじいじしかいない!


「部屋の広さの森では訓練になりませんからね?」

「そのために森を広げる?普通のダンジョンか魔の森で探索すればいいんじゃない?」

「できる手段があるのですから、わざわざ別の場所に移動する必要もないですよ」


なにその、すぐ食べれるご飯がないならリビングで作って食べてしまえ的な理論は。

こういうところが、やっぱりじいじだ。

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