125 選べるのは実質1択

じいじの非常識さを改めてわかったところで、これからどうしよう。

じいじが言う通り、魔獣が配置されたら攻略すべき?

せっかく準備してもらったんだからという思いと、疑似ダンジョンなんて作っちゃダメでしょうという思いががが…。


そういえば、私以外の2人の様子はと思い、クリスとリアンさんに目を向けると、クリスはどこか慈愛の目で、リアンさんは目を開いたまま呆然としている。

いや、クリスの慈愛の目は現実を認識できず、どこか遠くを見つめているだけのようだ。


現実逃避したくなるのはよくわかる。

けどずっと現実逃避をしてはいられないのだよ。

2人の意識を戻すため、なるべく強めに手を叩いて大きな音を出した。


「「はっ!」」

「2人ともあまりのことに驚いて気が遠くなるのはわかるけど、固まっている暇はないんだよ?どうするか決めなきゃいけないからね?」

「…?何を?」


気を戻したけどやっぱり現実を理解しきれていないようだ。

まあ仕方ない部分ではあるけど。


「何を、じゃなくて。どうしてじいじが目の前のダンジョンを準備したと思っているの?」

「…あぁそうだよね。でも実際には一択しかないんじゃないかな?」

「クリスの言う通り!」


そうクリスの言った通りなのだ!

私たちが選べる選択肢は2つ。

1つ目はじいじが作り出した森ダンジョンを探索する。

もう1つは後ろの扉に鍵を使って裏ダンジョン4階層を攻略する。


だけど、裏ダンジョン4階層を攻略するための修行をしていた私たちには、2つの内1つしか選べない。


「じいじが作った森ダンジョンを探索します!」

「だよね〜」

「…はい」


私とクリスの様子を見て、リアンさんも選択肢がないことがわかったのだろう。

静かに頷いてくれた。


「では魔獣を召喚して本当のダンジョンのように配置していきますね」


まるで駒を置くように気軽に言うけど、じいじ自分が規格外のことをしているって自覚あるのかな?

色んなことができるから、きっと色んなことを体験してきたと思うけど、その時の同伴者にじいじの規格外をツッコんだ人いないのかな?

世界樹の記憶を持っているクリスだったら何か知っているかも知れないと聞いてみた。


「おじい様に忠告しても無駄なんだって」

「やっぱりじいじにツッコんだ人はいたんだ?そして無駄と悟ったと…」

「リサお姉ちゃんも同じようなことしているじゃん!例えば食事の準備とかさ、普通はあり得ないけど美味しいもの食べたいからしているでしょう?」


美味しいご飯は生きる糧だから当然だね。

そう言われてみればこういった考えってじいじに教わったんだっけ?


「おじい様が言うにはバレなければ快適で美味しいほうが優先なんだって〜」

「確かにそうだね!」


それはわかる!

バレたら煩わしいことになるから極力隠すけど、使えるものは使って快適に楽しく美味しいものをいっぱい食べて過ごしたい!

いや、でもダンジョンの掌握はそれとは違うのでは…?


「おじい様には同じようなものなんだよ〜ここでダンジョン探索できれば、煩わしい他の冒険者もいない、いわば貸し切りでダンジョン探索ができるんだよ!人目を気にせず魔法とか使って楽に快適に過ごせるっていう考え方!」

「へぇ〜」


確かに快適な視点でいくと同じようなものになるのかな…?

納得できる気もするけど、なんかモヤッとする。


「ついでにリサお姉ちゃんの要望も叶えられるし、おじい様的には一石二鳥なんじゃないかな?まあ、だからってダンジョンを掌握できるていうのはまた別問題だけど…」

「そうだね!」


普通は快適にしたいからって、普通はダンジョンを掌握することはできないもんね!

モヤッとしていた部分がわかったよ!

それが解決してもじいじの非常識な行動と規格外の力は変わらないけど。


「準備できましたよ」

「お疲れ様でした」


森の中から颯爽と話題のじいじが歩いてきた。

歩いている姿をみれば、とても柔和で紳士な執事に見えるのに、その後ろの魔獣を配置した人とは思えない。

でもダンジョン探索できるようにしてくれたのだから否定的なことは考えちゃだめだよね。


出しただけで注いでいなかったお茶をじいじの分も用意して、座るように席を勧める。


「さて、今日はダンジョン探索をするとして、ここって11階層イメージなんだよね?」

「はい、森ダンジョンの上層をイメージしています」

「じゃあリアンさん、11階層以降に出る魔獣と注意する点を教えてください!」


今日はダンジョン探索と割り切って、本当のダンジョン同様にどのように探索するか相談することに決めた。

準備されちゃったんだから、するしかないないでしょう!

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