124 ダンジョンができた

とりあえず、魔剣に魔力を通して首を落としていく。

3体いるとはいえ、ゴーレムの動きは単純なものが多く、一応剣術を学んでいた私にとっては目をつぶっても相手できる相手だった。


「クリスとリアンさんは、…大丈夫そうだね」


ゴーレムのドロップアイテムを拾いながら、2人の戦う様子を見ていたが、2人は難なく倒していた。

ゴーレムが複数いるとはいえ、元はDランクの魔獣だから2人の敵ではないようだ。

じいじもにこやかに笑って見ているから想定内だったんだろうな。

このパターンで次にじいじがしそうなこととしては1つしかない。

通常ゴーレムを3体を簡単に倒せるなら、通常ゴーレムの集団、上位種1体、上位種が複数体と召喚してくるはず!


「正解ですよ。次の階層に挑むのであればどれも倒せるようになっていないといけませんからね」

「ですよねー!?」


心を読んだタイミングで、じいじは言った通りのゴーレムを次々生み出していく。

しかも3人で戦うのではなく、1人ずつ対応するように次々とだ!

通常ゴーレムが3つの集団が押し寄せてきて、部屋の中でゴーレムで圧迫されるかと思ったよ!


上位種のゴーレムを倒したところで今日の修行は終了となった。

夜ごはんについては、さすがに作る気力がなかったのでアイテムボックスにある作り置きご飯を食べて、そのまま泥のように就寝した。


ダンジョン1日目とは思えない濃厚な時間だった。

特にお昼以降はダンジョンにと言うよりかはじいじの修行が大変だった。

でもどうにかダンジョン1日目を乗り越えることができた。


翌日、十分に睡眠時間がとれたのですっきりとした目覚めで起きれた。

朝ごはんは軽めにやわらかいパンと目玉焼きとベーコン、サラダとスープといった定番メニューにする。

そして一番肝心の今日の予定の話がでた。


「今日はどうしますか?」


来たっ!

ここで押し負けると昨日みたいにじいじの修行三昧になってしまうから、強気で意見を言わなければ!


「じいじが召喚できるなら他の低階層の魔獣とも戦ってみたいです!」


せっかくダンジョンに来たのに、正規のルートは1階層の途中までしか経験できていないのだ。

まだ2日目なので帰還石を使って街に戻るのももったいない。

探索はできないけど、やっぱりダンジョンを楽しみたい!


ちなみに帰還石で戻って表ダンジョンに入り直すことは考えていない。

裏ダンジョンだったら他の冒険者がいないんだもん!

今までの経験上、自重したって絡まれるなら、自重しなくていいこの場所にいたい。

ご飯だって好きに作れるし、結界付きで空間拡張されているテントも使い放題!


実際に昨夜、そのテントを使ってみたけど、畳んだ状態から広げるだけで組み立てできるテントを見てリアンさんは目玉が飛び出すかと思うくらい驚いていた。

さらに中が空間拡張され、結界付きということを知ると、口を開けたまま塞がらない状態だった。

エルフという美形でもあんな残念な顔になるんだね。


そういうこともあって、私としては衣食住を快適に過ごせる裏ダンジョンで表のダンジョンっぽいことをしたいなって思っている。


「そうですね。せっかくダンジョンを体験しに来たのに、ここでは普通のダンジョンの経験ができないからですね」


そう言ってじいじはちょっと考え込み始めた。

なんだか嫌な予感がする気が…気の所為であって欲しいけどこういうときの勘は当たってしまうもので。


「できなくはなさそうですね」


辺りを見渡してじいじがポツリと呟いた言葉に嫌な予感がどんどん増していく。

これ絶対なにか、とてつもないことを考えているよね!


「リサ様たちは扉の近くで休んでいてください。ちょっと準備をしますので」

「…はい」


嫌な予感はさらに警報のようになり続けるけど、じいじの言うことには素直に従うしかない。

クリスとリアンさんを連れて扉の近くで待つことにする。

ただ立っているだけというのも間抜けなので、テーブルと椅子を出してお茶を準備する。


「…おじい様は何をする気でしょうか」

「ものすごい量の魔力を練り上げられているようですが?」

「とっても、とっても嫌な予感がする」


集中しだしたじいじを見て、出していたお茶を飲まずについ見てしまう。

魔力が最高潮になった瞬間、じいじの足元の魔法陣が広がってまばゆい光を放つ。

あまりの強烈な光に、思わず目を閉じて防ぐ。

次に目を開けたときは、


なんということでしょう!

石造りだった守護者の部屋が、草木が生い茂る森になったではありませんか〜


「ってどういうことー!?」

「11階層の森に似せてみました。あとは同じような魔獣を召喚して配置すれば、擬似的ですがダンジョン攻略のようなものができるかと」


じいじはにこやかに笑っているけどさ、やっぱりじいじがしていることって、召喚じゃないよね!

どう見てもダンジョンを作り替えてるよ!

むしろダンジョンの権限取り上げたりとかしていないよね!?


「取り上げるなんてしていませんよ?」


ちょっと首を傾げながら可愛く言っているけど、取り上げてないだけで絶対ダンジョン権限を利用しているよね!?

それってハッカーみたいにアクセスしているってことでしょう!

ダンジョンのコア的なものにバレたらどうするの!?


「大丈夫です。そんな勘付かれるようなことはしませんから」


いつもながらに心の声に返事しないで!

その自信の根拠を知りたい気がするけど、とんでもないことを知りそうなので絶対聞かない!

今は流石にキャパオーバーなので冷静に対応できないよ!


「久しぶりにそんな反応をされましたね、最近はじいじだしとかさすじいじとかで反応が薄かったですが。昔は何かをする度に驚いた顔をしていて、懐かしいですね」

「昔はじいじの非常識具合を知らなかったからね!チート具合になれたけど、まさか今も驚かされることがあるとは思わなかったよ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る