122 予想外の結末

2階層での食事が終わり、一休みしてから挑むことになった。

休憩でやる気も満タンになり、意気揚々と進んだ3階層はクリスの予想通り石造りの部屋だった。

これなら延焼の心配はないな!


そしてこちらに視線を向ける無数のアントとビーの群れ。

その奥にクイーン達がチラ見えする。

作戦通りまずは群れを片付けるため、扉の近くで火と風魔法を放ち、同時に水魔法で操作した液体を一緒に浴びせる。

そう、さっきトンカツを揚げる際に使った油の残りだ!


まとめ揚げしたのでかなり酸化してしまったから廃棄する予定だったのだが、それなら火魔法を使うし一緒に処分してしまえと考えたのだ!

酸化しているけど元は油なのだから、多少なりとも火力もあがるだろうと思って投げ入れたのだが。


「「「「「「「ギイィィィィィィ!!」」」」」」」

「あれ?」


クリスとリアンさんの風魔法に流され、廃油はクイーンたちの方まで広がり、そのまま私とじいじの火魔法に引火し…爆発した。


そして、なんということでしょう!

石造りの部屋に無数にいたアントとビーの群れのみならず、クイーンたちも跡形もなく消し飛んでしまいました…!


「えっ?廃油最強?」


そんなバカなことがと思いつつ、目の前の惨状を否定することはできない。

少しの間呆然としていたが、全ての魔獣がドロップアイテムに変わったところで正気に戻った。

なんか釈然としないが、とりあえず手分けしてドロップアイテムを拾うことにした。

しかし拾いながら思うのはやっぱり先程呟いたことと同じ。


「廃油最強なのでは?」

「いいえそれはないです。火炎瓶のような道具はありますが、ここまで一掃できるものではありませんでした」


どうやらすでにそういった道具があったようだ。

お店でもそういった物を見たことがないのだけど、もしかしたら魔法が使えるから無意識にスルーしていたんだろうか。

もうちょっと注意深く見るようにしよう。


「ならたまたま燃えあたりが悪かったってこと?」

「意味はなんとなくわかるけど、食あたりみたいな熟語を勝手に作らない」


話が逸れるとわかっているがついついクリスの言葉に突っ込んでしまう。

言いたいことはわかるけどね。

でも群れは兎も角、クイーンたちまで消し飛ばすことできるんだろうか?


「おそらくですが」

「じいじ何かわかったの?」

「あの油で揚げたのはオーク肉ですよね?そのオークから出た脂により燃えやすくなったのでは」

「あぁ〜」


魔獣の肉にはその魔獣の魔力が含まれている。

なのでオークトンカツを作った際にオークの脂とともに魔力が出てより可燃性が増したのかも知れない。


「それは!もしその通りであれば先程言った火炎瓶の道具の改良ができるかもしれません!」


今の火炎瓶は精々ゴブリンを退けられる程度のものらしいのだが、もしそれにオークの油を混ぜるだけで威力がアップするのであれば冒険者の戦力強化になる。

ヴェッレットの街はダンジョンの恩恵でオーク肉の供給も多く、ダンジョン周りの飲食店でもオーク肉を扱っている所が多い。

だから料理に使わなかったオークの脂身や揚げ物で使った廃油を集めるのも簡単なのだという。

上手くいけば価格を抑えながら威力があがる火炎瓶ができるかもしれない。


リアンさんは目をすごく輝かせている。

Aランクだからか、元パーティーメンバーがギルドマスターをしているためか、冒険者の

強化には目がないようだ。

下手に関わると変なことに巻き込まれそうなので、この件はリアンさんにお任せしよう。


「えっ?リサさんが発見したのでリサさんが報告すべきでは?」

「こういうことに関わるとロクなことが起きないので、リアンさんにお願いしたいです!」


今までの経験からいうと、利益になりそうなことを報告すると、意図せず変なことに巻き込まれるので本当に困る。

身代わりをお願いできるならぜひともお願いしたい。

Aランクのリアンさんからの報告であれば、疑われることや妬まれることも少ないだろうし。


リアンさんが報告しなければこの件は冒険者ギルドに報告しないので、期待している火炎瓶の改良はされないだろう。

そういったことを説明して、渋々ながらリアンさんにも納得してもらった。


「さて、若干消化不良の戦いだったけど、これからどうしようか?」

「次に挑戦するとなると40階層の守護者の強化種になるよね?」


ドロップアイテムを拾い終わったあと、これからのことを相談することになった。

群れを殲滅してから鑑定をする予定だったからクイーン達の鑑定はできていない。

廃油の力があったとしても4人の魔法で一掃できたことを考えると4階層も突破できそうな気がする。

元々30階層を目安にしていたのも、そこに着くまでにかなりの数の戦闘を予想していたからだし。

そもそも10日かけて行く予定だったしな。


「40階層はゴーレムです。階層も環境変化の階層になっていて、属性のゴーレムとミスリルゴーレムが出てきます」


環境変化の階層、火山とか雪山とかの階層だったっけ。

だからその環境に適応したゴーレムが出てくるってことか。

守護者の魔獣の難易度が急に上がっている気がする。


「31階層からはBランク推奨になっています。通常の物理攻撃だけでは突破できないからですね」


ただでさえ硬いゴーレムを物理攻撃だけでは倒すのが難しいのに、さらに属性持ちがいるなら物理以外の力も必要になってくるもんね。

もしくはゴーレムを一発で破壊できるくらいのパワーがないとダンジョン攻略は難しいか。

魔法はあるけど、今の力量でゴーレムに勝てるのかな。

まだミスリルゴーレムと戦ったことはないから、実際どれだけ硬いかわからないから挑むか撤退するか迷う。


「では時間もあることですから、ここでゴーレムと戦ってみますか?」

「えっ?」

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