114 分配

代表して発見したクリスが開けることになった。

人生初の宝箱にドキドキしてしまう。

何が出るかな〜何が出るかな〜


「これは?」

「玉?」


出てきたのは透明なガラスっぽい玉でした。

これは良いもの?残念なもの?


「これは、スキル玉です!すごいですよ!1階層で出てくるものではありません」

「スキル玉?《鑑定》」


【空のスキル玉】

任意のスキルを入れることが可能

入れる魔法によって色が変わる

魔力を使用してスキルを入れた場合本人以外にも使用可能になる。



わからないことはすぐに鑑定魔法で確認するとそんな説明が出てきた。

今は中に何も入っていないから透明だけど、魔法を込めると色が変わるようだ。

魔法が入っているか入っていないかすぐわかる仕組みのようだ。

鑑定でわかったことを共有すると世界樹の記憶を持つクリスでも知らなかったことらしく、クリスが驚きの声をあげた。


「そんな便利な物があるんだね!」

「ダンジョンでも中々出ないので一般にはあまり知られていないんです。それにこれはその中でも更に珍しいもののようですね」

「珍しいの?」


どうやら普通のスキル玉ではないようだ。

クリスの疑問にリアンさんは頷いてその理由を説明してくれた。


普通のスキル玉は倒した魔獣が使っていた魔法が入っていて使用すると1度で砕けてしまうのだという。

今回宝箱から出てきたスキル玉は好きな魔法を入れることができる上に、他の人にも使える。

さらに1度で砕けるという説明がないということは恐らく何度も使用できるのではないかと言うのだ。


「何度も使用できるなら便利だね!」

「通常のスキル玉だったらゴブリンキングの謎の魔法が入っていたのかな?それはそれで惜しかったのかも」


鑑定をし忘れたばっかりに、折角のレアドロップもちょっと残念に感じてしまった。

できることがあってもちゃんと使えないとこうやって後悔することが起きてしまう。

戦う力を手に入れても万能じゃないんだなって改めて思う。


いや、悔やんでも仕方ない!

次!次の時に同じ過ちをしなければいいんだ!

忘れそうなら繰り返し鑑定をかけて癖にすればいいだけ!

自分に言い聞かせるように繰り返し、落ち着いたところで顔を上げるとクリスも頷いている。


「うんうん、次に活かせばいいんじゃない?それよりせっかくレアなスキル玉がでてきたし、リサお姉ちゃんが使えない魔法とかをおじい様に入れてもらえばいいじゃん!」

「それだと私がもらう前提だよ?普通はパーティーで分配じゃない?」


レアなスキル玉なので、売却したら中々のお値段で売れるだろう。

そのお金を人数割するのが一般的じゃないかな。

どうだろうと思ってリアンさんを見ると、心なしか耳が垂れていた。

急に、なぜ?


「先に話しておくべきでしたね。通常だとパーティーを組む前に分配の話をして、合意が取れてからパーティーを組むようになります」


リアンさんは族長に頼まれたと張り切りすぎて、ダンジョンについての説明が優先になり、分配の説明をうっかり忘れていたようだ。

頼まれたことが果たせていなかったとしょんぼり落ち込んでいたようだ。

まあどの道、パーティーを組まないという選択肢はなかったとも思うけど。


「とりあえず今決めましょう!」

「お金はあればいいけど、今はそこまで必要な訳じゃないんだし」


クリスが言うことにも最もだ。

祖国から逃げ出して来た頃は路銀がどれくらい持つかわからず、なるべく節約してきたが、エストガース国で冒険者登録をしてからは、魔獣の討伐などで程々稼げるようになった。

クリスも族長からもらった旅費があるようだし、Aランクのリアンさんがお金に困っている印象もない。


あと冒険者でお金がかかると言えば、武器や防具だろうがこちらも心配はない。

クリスの弓は自作で作り直し可能だし、私も自分の魔剣を持っているし、その上魔法もある。

防具についても一見普通の服に見えるが、実際はエルフの里で作られた防御力の高い服なのだ。

人族だと国宝級に相当するくらいの…。

なのでダンジョンに深く潜らないのであれば今のところ必要なさそうだ。


後の懸念はリアンさんだと思って質問すると、リアンさんも武器も防具も今のもので満足しているという。

ダンジョンの攻略階層を塗り替える!みたいなことでもない限り、買い換える気はないとのことだ。


「その前に報酬はいらないのですが」

「えっ?」


何やら聞き捨てならない台詞が聞こえた気がするけど、気のせいかな?

気のせいだよね?


「何かすごい圧を感じるのですが…」

「報酬がいらないとか馬鹿なことが聞こえた気がして」

「えぇ、報酬をもらう気はない「えっ?」…といいますか、えっと」


パーティーを組んでいるのに1人だけ報酬なしとか、リアンさんは私たちをゲスにしたいのかな?

そういった想いを目で込めてみると、リアンさんはしどろもどろになった。

ここを逃すまいと、さらにニコニコした笑顔で肯定を求めると、リアンさんはどうにか頷いてくれました。

一緒に冒険をするんだから、分配は当たり前!

パーティーを組む時に分配の取り決めは大事だと改めて感じることができました。

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