112 ゴブリンキングとの戦い
優先するのは攻撃を消滅させる結界らしきものを壊すこと。
そのため魔法の操作性は重要視しない。
クリスは同時に4つの矢を、私は同時に展開できるであろう20本のウォーターアローをゴブリンキングに向けて放った。
ゴブリンキング本体へダメージを与えられたら儲けもんくらいだ。
「グォー!」
ゴブリンキングが今までにないほどの咆哮を上げた。
そして攻撃を消滅させると思わしき結果が可視化された。
あちらも力を温存している場合ではないと思ってくれたのならいいけど。
「っわ!煙?」
「水蒸気だと思う」
矢とウォーターアローが着弾した瞬間、恐らくウォーターアローの水分が蒸発したのだと思う。
数を多くした結果か、全てを消滅できなかった一部が水蒸気になって辺りに暴風のように舞い上がった。
「少しは攻撃が通るようになっていればいいけど《エアーサイクロン》」
「グガァ!」
水蒸気を飛ばすついでに傷をつけられたらいいと、風魔法を使うとゴブリンキングから悲鳴のような声が聞こえてきた。
これはもしかしたらもしかするかも知れない。
「…力押しの戦法でいいみたいだね!」
「だね!ようやくダメージを受けたみたい!」
水蒸気が晴れるとそこにはいくつかの傷を負ったゴブリンキングがいた。
それをみて力押しの戦法は有効だとわかる。
「ねぇリサお姉ちゃん、サイクロンの方が継続してダメージ与えられそうだよ?」
「それだとクリスの矢で攻撃できないよ?」
「大丈夫!矢じゃなくて石を射るから!」
クリスはマジックバッグから手のひらサイズの石を取り出した。
そして手に持っていたはずの弓矢はスリングショットへと変わっている。
いつの間に石を集めていたのとか、世界樹でできた弓矢だから形態変形できたのかとか、色々疑問に思うことは出てきたが、グッと堪えて戦闘に集中する。
「わかった!《エアーサイクロン》」
「よぉし!リアの庭からこっそり取ってきた石の威力を味わいな〜」
それって庭石!?
しかも族長の家から勝手に取ってきたの!?
戦闘に集中しないといけないのに、思わずクリスに視線を向けてしまった。
クリスは悪びれた様子もなく、にんまり顔で次々に石を投げていく。
「グヒィー!」
「やったー!」
「あっ…」
クリスが石を増やした結果か、ゴブリンキングはあっけなく叫びを上げて消えていった。
結構あっけなかった?
「倒せたね!レベルもいっぱい上がったよ〜!」
「力押しだったけど、どうにか勝てたね」
最後はあっけなかったが、攻撃を消すという特殊なスキルを使う中々の強い魔獣だったと思う。
レベル2しかなかったクリスのレベルがたくさん上がるのも当然だ。
クリスの場合低レベルでも元々持っている基礎能力が高いから戦うことができたけど、本来であればレベル2で戦う相手じゃないしね。
もしかしたらここの隠し通路は未発見ではないのかも知れない。
今までも1階層の隠し通路を見つけた人はいたのかも。
そうして冒険者ギルドに報告する前に探索をして、ここのゴブリンキングにやられてしまった可能性もなきにしもあらず。
「ドロップは何かな〜?」
ふとそんなことを考えているとクリスが楽しそうに声を上げた。
そう言えば上位種のゴブリンとゴブリンキングのドロップ品も確認していなかったね。
考えてもわからないことで悩んでも仕方がない。
気持ちを切り替えて、ドロップ品を確認しに行く。
ゴブリンの上位種5体のドロップは、魔石が5つに中級ポーションが2つと魔法の杖。
ダンジョンは初めてだからこれがいいドロップ品かはわからないけど、魔石5つ以外にもドロップがあるので良いと言えば良いのかな?
上位種とはいえ元はゴブリンだし、魔石もそんなに高くないのかも知れないけど。
「後はゴブリンキングのドロップだけ」
「何かな?」
ゴブリンキングだったけど強かったし、それなりの価値があるものが落ちているといいな。
魔石だけだとしても通常のゴブリンキングより質の良い魔石とかであって欲しい!
「魔石…?」
「嫌な方に当たった!?」
「と鍵っぽいもの?」
「おっ?」
クリスがドロップ品を両手に持ってきた。
魔石は以前見たゴブリンキングの魔石より大きいように見える。
苦戦した甲斐はあったってことかな。
もう一つのドロップ品は錆びた鍵だ。
こんな時はやっぱりこれだね《鑑定》
【裏ダンジョン2階層の鍵】
裏ダンジョンの2階層に行くことができる鍵
「裏ダンジョン…?」
そう言えば、あのゴブリンキングの説明に「裏ダンジョン」なんてあったな?
しかも強化種とか。
ギルドが把握しているのが「表」ということで、壁を壊した先のダンジョンが「裏」ってことなのかな。
この説明だとこの場所以外にも裏ダンジョンはありそう。
何処かにある裏ダンジョンへの入り口にこの鍵を使えばいいのかな。
「リアンさん!裏ダンジョンって聞いたことありますか?」
「…いいえ、聞いたことはありませんね」
リアンさんは首を横に振った。
Aランクのリアンさんでも知らないってことはギルドが把握しているかも怪しいかも。
「リサ様、よろしいですか?」
「じいじ、なに?裏ダンジョンについて何か知っているの?」
「いいえ、この度のリサ様の戦闘について、少々」
「びぃ!」
じいじの目端がキラーンと光った。
これはお説教パターンだぁ!
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