110 ダンジョンの隠し通路
グルンと振り返ってクリスが矢を放った先を見ると、行き止まりだったダンジョンの壁に人が通れるほどの穴があった。
「まさか、本当にクリスの攻撃で穴が…?!」
ダンジョンって破壊できるの!?
でもギルドの資料では不壊って書いてあったけどぉぉー!
「…これは、どうやら隠し通路のようです」
混乱している私をよそに、冷静に穴を観察していたリアンさんはそう呟いた。
その言葉に再度穴を覗き込むと奥の方に階段が見えたのだった。
「か、隠し通路ー!!」
「恐らく、一定の力でないと壊れないようになっていたかと。1階層に来るのは新人くらいですし、わざわざ行き止まりに来ることもありません。だから今まで誰も発見できなかったのかもしれません」
未発見の隠し通路!
ギルドの資料でもそんなものがあるとは記載がなかった。
1階層の行き止まりにゴブリンソルジャーが出てくるのはちょっと不自然に感じてはいたけど、もしかしてこの隠し通路を守っていたのかな。
「予定にはなかったのですが、冒険者ギルドに報告するために、一旦この階段の先に行ってもいいですか?」
「もちろん!行くよ、行く!」
「えっクリス?」
リアンさんは冒険者ギルドに報告する前に調べておきたいらしい。
初めて入ったダンジョンで未確定要素のありそうなところに行ってもいいものか迷っている間に、何も考えていないようにクリスが即答する。
ちょっとは考える素振りしようよ。
「だって未発見だよ、未発見!これこそ冒険じゃない!」
「…っもう!」
楽しそうに目をキラキラさせるクリスに笑みが浮かぶ。
確かに初めのダンジョンで見つけた未発見の隠し通路。
この状況にワクワクしないわけない!
「そうだね!折角だから行こうか!じいじもいいよね?」
「はい。行ってみましょう」
「よっしゃー!クリス組しゅっぱーつ!」
「変なパーティー名前をつけるのはやめようかー」
緊張感の欠片もない状況につられてテンションがおかしくなる。
クリスもどのこぞヤのくつ職業みたいな名前を言い出すし。
本来のダンジョン探索ではこんなことじゃいけないのかもしれないけど、とっても楽しくなってくる。
「階段は下に続いているようですね?」
「先は、曲がっているから見えないね〜」
「ここのダンジョンって罠ってあります?」
「深い階層ではありますが、1階層ではなかったです。でも隠し通路なので絶対はありません」
ダンジョンの罠でどういったものがあるかわからないけど、慎重に動いたほうがいいかもしれない。
なるべく4人固まってゆっくり階段を降りていく。
ガガガガッ!
階段の中腹あたりに着いた頃に背後から何かが動く音が聞こえてきた。
振り返るとクリスが開けた穴の上から壁が降りて来ていた。
そのまま壁が降りきると、あっという間に穴と壁が一体化して、元通りの石の壁に戻っていた。
「穴埋まったね…」
「すごいね!ダンジョンって元に戻るんだ!」
「ダンジョンは一定期間経過すると復元しているのではと言われていましたが、まさかそれを目の前で見れるとは思いませんでした」
Aランクのリアンさんでも見たことない現象に立ち会ってしまったようだ。
隠し通路見つけたから今更感もあるけど。
「ダンジョンって生き物みたいだよね?傷ついた身体をまるで治しているみたいな動きだったよ?」
「クリス!気持ち悪いこと言わないでよ!」
「そういう見方もあるかもしれませんね?出てくる魔獣も身体に入ってくる有害なモノを排除するためのものだと考えると一致する部分もあります」
「じいじもそんなこと言わないで〜」
ダンジョンはダンジョンでいいでしょう!
異世界ならではのダンジョンという名の魔獣とか言うオチは嫌だよ!
それなら魔獣のお腹の中に入っているってことでしょう!?
「ダンジョンの中に取り残されたものは跡形もなくなくなると聞いていますから、それは消化されたということでは…?」
「リアンさんまで怖いこと言い出さないで〜」
なんで、なんでだ?
みんな揃ってどうして人が怖がるようなことを言い出すのかな?
生き物の身体に入っていると思うとダンジョンに入りたくなくなるんですけどー!
「何か扉っぽいものが見えるよ?」
「あれは…ということはこの先は守護者がいるのか?」
「守護者って10階層ごとにいるって言われる?この扉が守護者の部屋に入る扉なんですか?」
ダンジョンには10階層ごと守護者、所謂ボス部屋が存在する。
その階層はボス部屋のみとなっており、階段を降りた先にある扉を通るとすぐボスと対戦になるらしいのだ。
そのボス部屋の扉がこの先にある?
「10階層の守護者の部屋に直通ってできるってことかな?」
「10階層の守護者はゴブリンキングとゴブリンの上位種5体ですが、魔獣が全く同じとは限りません」
隠し通路だもんね。
都合よく10階層のボス部屋があるとは限らないってことか。
もしかしたらもっと深い階層のボスが待ち構えているかもしれないけど、それだと1階層から来た冒険者に何を求めているんだよって抗議したくはなるけど。
「入ってみないことにはわからないよね〜」
「そうですね。危険かもしれませんが、確認しておきたいです」
「じゃあ入る前にそれぞれの配置決めておこうか?」
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