108 ダンジョンへ

さっそく4人でダンジョンに向かう。

ダンジョンまでの道のりでは祭りの屋台通りのように店が並んでいた。

ダンジョンに潜る冒険者をターゲットにしているようで、ポーションを始め携帯食料や大きいものならテントなども販売している。


「ダンジョンってやっぱり儲かるのかな?」

「ダンジョンのない冒険者と比べれば儲かるでしょう。必ず獲物がいますから」


魔獣がいるのがダンジョンの利点だ。

他の場所ではまず魔獣を探すところから始まる。

更にダンジョンでは階層別に強さが異なるから、自分の強さに合わせて挑戦できる。

もちろんイレギュラーな魔獣が出現する場合もあるが、魔獣の森などと比べればリスクが低い。


更になんと言っても、ダンジョンでの報酬は少し割り増しされているというのだ。

魔獣が増えすぎるとスタンピードが起きやすい。

ただでさえ魔獣で溢れるダンジョンでスタンピードが起きると大変なことになる。

そのためダンジョンでの討伐を推奨しているから優遇しているのだ。

だからダンジョンに冒険者は集まる。


もちろんダンジョンにもデメリットはある。

魔獣を倒して得られるものがドロップと呼ばれる、その場に残る魔獣の一部かアイテムになってしまうのだ。

ダンジョン外であれば倒した魔獣は丸々素材として得られるが、ダンジョンでは魔獣の一部がドロップとしてその場に残るだけだ。

まあ、それでもドロップは価値のあるものが多いし、とりあえず持って帰れば売却できる。

知識がなくても、解体の必要もないから持ち運ぶ量も少なくできる。

ダンジョンを深く潜る実力がつけば更に多くのお金を得ることができる。


そうやって集まった冒険者を対象としたお店が盛んなのも当然の流れだ。

必要なものは持っているからお店を回ることはしないけど、ダンジョンの入り口に向かう途中チラチラ見ていたのだが。

だんだんと顔を伏せてダンジョンの入り口に早歩きで向かう。


私がお店をチラチラ見るように、リアンさんがチラチラと見られ始めた。

リアンさんはやっぱりAランクということで有名のようだ。

お店の人もそこに寄っている冒険者もチラチラ見て、何かを囁きあっている。

その視線を振り切るように少々足早にダンジョンへと向かう。

これは受付嬢から話が漏れる前に噂になりそうだ。


ダンジョンの入り口では特に監視する人もおらず、出入りは自由だった。

下手に入場でギルドカードの確認をすると混み合ってしまう上に人件費もかかる。

冒険者は自己責任だし、冒険者以外でも入ろうと思えば入れるけど、それも自己責任だそうだ。

まあ冒険者以外がさっきのお店通りを歩けば目立つしね。


「スライムやゴブリンなどしか出ない階層は飛ばして行きますか?」

「ううん。クリスは魔獣との経験がないから弱い魔獣から慣らしていきたい」

「魔獣討伐はダンジョンでできるからって対人戦を優先させられたんだよね〜」


クリスは最初の訓練がじいじとの対人戦だったことに不満があるらしい。

それも今だけだろうけど。

実際に他の人と対人戦したらその経験がどれだけすごいことかわかると思うから。


「だから弱い魔獣から1匹ずつ倒して行こう!もちろんクリスがね!」

「はーい!エルフの里でできなかった魔獣との戦闘、頑張るよー!」

「そういうことなら行き止まりになっている道に行きましょう。ダンジョンに来る冒険者は地図など購入して最短で目的地を目指しますから」


確かに一般的な冒険者であればわざわざ行き止まりとわかっている道には行かない。

それを逆手に取って冒険者が来ない場所で魔獣を狩るのか。

それならリアンさんと一緒にいるところを見られる頻度も少ないし、クリスも気兼ねなく戦闘できるだろう。


「いい案ですね!それで行きましょう!」

「ではこっちです」


リアンさんの先導でダンジョンを進んでいく。

最初に出会った魔獣は最弱定番のGランクのスライム。

前世のラノベでは最強とか言われる場合もあるようだが、この世界では最弱扱いである。

気をつければ子供でも倒すことができる魔獣、それがスライムなのだ。


「スライムで一番買い取り額が高いのは魔石ですが、スライムを狩るのに一番てっとり早いのはその魔石を破壊することです」


高いと言っても目玉が飛び出るほど高いわけではない。

わざわざ苦労して魔石を取るよりも、少し上のランクの魔獣を倒したほうが実入りがいいので、基本さっさと魔石を破壊して倒すのがセオリーだ。


「ダンジョンであればドロップという形で稀に出ることがあるそうです。それも運でしょうね」

「そうだね〜とりあえずさっさと倒すよ!」


クリスは弓矢を引いて一瞬でスライムを蹴散らした。

スライムの体は粒子になって消え、その場所には瓶が落ちる。


「スライムジェルですね。ドロップしやすい代表格です」


スライムジェルはドロップしやすいが、色々なことに使えるため買取対象となっている。

それでもドロップの中では最低価格なので量を集めないと稼ぐことはできない。


「うんうん、魔獣でもちゃんと狙えたね!」


遅いとはいえ動く魔獣をちゃんと弓を射ることができたことに、クリスは満足げだ。

スライムで満足して欲しくはないが、それでも魔獣を倒すことができて満足げだ。


「あっ!レベル2になった!スライムでレベル上がるんだね!」


レベル1だったクリスのレベルがあがったようだ。

エルフの里では対人戦しかしていなかったから、レベルアップはなかったのだ。

思い返せばクリスはレベル1でじいじと対戦したんだよね。

私でもじいじと対戦したのはレベル10くらいはあったというのに。

改めてクリスのポテンシャルに慄く。


振り返ってみると、私のレベルは最近上がっていないと思う。

魔獣の森への遠征以降は盗賊関係ばかり退治して、魔獣を狩っていないことに気づいた。

ローウの街を襲ったドラゴンもじいじが単独で討伐してしまったし、レベルを上げる機会がなかったのだ。


クリスのレベルがあがったら私もレベル上げしよう!

そのためにもクリスのレベルをあげるためにもどんどんダンジョン内で魔獣を倒して行こう!

それでどんな魔獣に会っても対応できるように倒し慣れて行こう!


「じゃあサクサク次に行こう!」

「おー!」

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またちょっと遅れてしまいました〜

切りが良いところと思っていたらズルズルと伸びて。

次の更新はサクサク行きます!

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