105 パーティー登録
「僕に敬語は必要ありませんよ?ラクな口調で接してください」
「リアンさんも砕けていいですよ?」
「いえ僕は無作法なことはできませんから」
口調が砕けることは無作法とは思わないけど、もしかして世界樹のクリスにってことかな?
エルフの里の先生たちはクリスには砕けた口調だったと思うけど。
「族長を始め、リサ様に関わったエルフはエルフの中でも無駄に年を重ねた連中でしたから。クリスに対しても度胸があるのです」
「リサお姉ちゃん声に出ていたよ」
「いえいえ、僕が若輩者で恐れ多いだけですので!決して族長たちがご年配ということではありません!」
3人から同時に色々言われてしまったが、リアンさんはエルフの中でも若いからクリスに対して口調を崩せないということで。
決してリアさんたちがご年配だと確信したわけではナイヨ。
「リサお姉ちゃん、また口から出ているよ」
クリスが何か言っているが、心の声が口から漏れたことについてはスルーしよう。
私は何も口にしてイナイヨ。
「クリスはともかくとして、私は年下だから口調を崩してもらっていいですよ?」
「いいえ!主神様の加護を持ち、おじい様が見守っているリサ様に口調を崩すなんてとんでもない!」
なんとお断りされてしまった。
主神様の加護をここまで敬ってもらったのは何気に初めてかもしれない。
リアンさんの対応を見ると主神様はやっぱり偉い存在なのかな?
「まあ口調は強制するものではありませんから」
じいじはそういうが、リアンさんがこんな年下に敬語使っているのを聞かれたら怪しまれないか不安なんだけど。
じいじも敬語使っているから今更といえば今更か。
その日はそれでお開きとなり、翌日冒険者ギルドに向かうことになった。
ちなみにリアンさんがおすすめするだけあって、夕食は大変美味しかったです。
*
次の日、朝食を食べたらすぐに冒険者ギルドに向かった。
さっそく資料室に向かいダンジョンの上層階の情報を優先的に見ていく。
昨日確認した依頼書を思い出しながら、優先的に採取と討伐する物を考えていく。
本当はメモしておきたいところだが、ダンジョンや森でメモを片手に探索するわけにはいかないから頭に叩き込んでいく。
これもじいじのスパルタの賜物です。
資料室に入るのも初めてのクリスはというと、意外なことに流し読みで終わってしまった。
そもそも世界樹の知識として、魔獣の種類などもいくつか覚えがあるそうだ。
こういう時は知識量があるのを羨ましく思う。
「ダンジョンに潜る際にはパーティーの登録をしておきましょう。ダンジョンでは予期せぬことが起きますから」
昨日の受付嬢からはそんな話を聞いていないけど、やっぱりダンジョン内では予期せぬことがありえるんだろうな。
その対策の一環がパーティー登録の推奨っていうことかな?
「まあ一時的なパーティーになるかとは思いますけど、念のためですね」
「一時的なんですか?」
「僕では最終的に足手まといになってしまうかと思いますので」
リアンさんはじいじを見て苦笑する。
確かにじいじが1人いればダンジョンも攻略できそう。
思っていてもわざわざ口に出さないけど。
「僕とこの方たちとでパーティー登録を」
「えっ!Aランクであるアードリアン様がですか?!」
リアンが受付に向かいパーティー登録の依頼をすると受付嬢が叫んだ。
へぇ〜リアンさんAランクなんだ。
数が少ないAランクだから受付嬢はギルドカードを出す前にリアンさんのランクを把握していていたんだろうけど。
周知の事実だとしても個人ランクを大声で叫ぶのは受付嬢としてどうなんだろう?
「僕がパーティーを組むのに何か問題が?」
「いいえ!でも、その後ろの方たちとですよね?」
受付嬢が不審な目でこちらを見てきた。
リアンさんに問題ないと返答してすぐ否定的なことをいうのは認めていないと同義じゃないかな。
こちらのメンバーはじいじと年端もいかない小娘2人だから疑問に思うかもしれないけど、それを表情に出すのは受付嬢としてはどうかと思う。
しかもリアンさんの目の前でそんな対応するなんて、自分が何をしているか理解できていない証拠だ。
「リサ様たちを侮るというなら許さない」
「ひぃ!」
そんな視線に気づくのは私たちだけでなく当然リアンさんも気づく。
自分が尊敬している世界樹と世界樹の恩人であるじいじを何も知らない人族が勝手に見下すことは見逃せないのだろう。
リアンさんが怒気を滲ませながら受付嬢を睨む。
「お前では話にならない。ギルドマスターを呼べ」
「あ、いえ、それは…」
「2度も言わせる気か?」
「す、すぐお呼びします!」
受付嬢はようやく自分がしでかしたことを理解してきたようだ。
そ何とかアードリアンを宥めて誤魔化そうとしたのだが、またその態度がアードリアンの癪に障ったようだ。
殺気を滾らせて受付嬢を睨みつけ、最後の忠告をした。
それを感じ取った受付嬢は文字通り飛び上がってギルドマスターを呼びに行った。
「不快な気分にさせ、失礼しました」
「リアンのせいじゃないよ!だから謝る必要もないさ!」
「愚か者はどこにでもいますから」
何故か謝罪するリアンさんにクリスとじいじは首を横に振る。
クリスもじいじも受付嬢の対応に怒りを通り越して、呆れていたようだ。
私もその意見に賛成だけどね!
「アードリアンが問題を起こすなんて珍しいな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます