93 エルフのお祭り

「エルフの皆さんってやっぱり若いですよね」

「そうしみじみ言わないでよ〜おばあちゃんにお若いって言われているみたいで心外!」


リディさんの反応を見るとエルフさんにとっては二百歳でもおばあさんではない模様。

ふと族長のリアさんの顔が浮かんだ。

族長というくらいだから、リディさんより年上なのは確実。

これはうっかりリアさんにも同じことを言ったらどんな反応になるか、ちょっと恐ろしい。


「族長とか、他の人にも言わないように!意外と気にするから」

「はい!言いません!」


うん、絶対に言わないようにしておこう!

リディさんの言葉を聞いて心に固く誓った。


「よしよし、いい子ね〜!あとね発動速度は勝てないかもしれないけど、リサちゃんはすごく成長しているのよ?自覚ある〜?」

「そうですか?」

「拡張魔法だって最初知らなかったのに、数日で普通の魔法と区別して発動できているわ〜それに発動速度だって前の自分と全然違うの、わかるでしょう?」


確かにちゃんと魔力を操作して拡張魔法だけを使えるようになってきたし、スピードも前の倍以上になっている気がする。

リディさんの魔力操作はとっても真似しやすいから、いつもより早く取得できた気がする。


確かにと、リディさんの言葉に頷いた。

ちなみにじいじの魔力操作はスゴいんだけど、あまりにも早すぎてどう真似すればいいか理解ができなかったというオチです。


「そうでしょう!人族でさらに20年も生きていないリサちゃんがここまでできるようになったのはリサちゃんの努力の賜物よ〜?悲観することなんて何にもないわ〜!」

「へへ、そう言ってもらえると嬉しいです」


すごくテンション高くリディさんは褒めてくれる。

まっすぐ褒められてとてもくすぐったい気持ちになる。

じいじも褒めてくれるけどやっぱりまだまだって感じてしまうんだよね。

さすが100年以上教師をしているだけあって、リディさんは生徒のやる気を上げるのがとても上手です!


「そうそう、もうすぐお祭りがあるんだけどリサちゃん聞いている?」

「お祭りですか?豊穣的なものですか?」

「う〜んそんな意味もあるかな?世界樹の巫女が代替わりするから世界樹へ挨拶する祭りよ〜」

「世界樹!」


今着ている服にも使われているラノベ定番の世界樹ですね!

エルフが祀っているのも定番ですよね!

そういえば里にあると聞いていたのに、世界樹らしきものを見ていなかった。

別のところに祀られていたってことかな?

ラノベの定番の話が出てきてちょっと興奮してしまう。


「世界樹っていつもは見れないんですか?」

「世界樹のところに行けるのは一部の人だけね〜。やっぱり大切だから、さっき言った巫女や族長とか」


やっぱり偉い人じゃないと世界樹って見れないんだ。

素材も希少だって言われていたから取りに行く人も厳しく決められているのだろう。


「あとおじいさまとか」

「じいじも行けるんですか!?」

「そうだよ?」


リディさんは疑問に思っていなさそうだけど、エルフでもないじいじが世界樹のところに行けるのはおかしい気がするけど、これがさすがじいじってことかな?


「おじいさまは世界樹の恩人だから当然だね〜」

「恩人!?」

「あれ?聞いてない?おじいさまは世界樹を救った恩人だからエルフの恩人でもあるの〜」

「聞いたことないです!」


世界樹やエルフの恩人とかそんなラノベの主人公の定番をじいじがやっていたとは!

どんなことがあったんだろう?

じいじが何をやったのかぜひ聞きたいな!

じいじの活躍を知らないことにリディさんは不思議そうな顔をした。


「そうなの〜?じゃあおじいさまの武勇伝でも」

「無駄なお話はそこまでにしておきましょうね?」

「ヒィ!はいっ!」


いつの間にか現れたじいじがリディさんの肩に手をポンと置いた。

相変わらず気配をまったく感じない登場にリディさんは驚いて反射的に返事をする。


「え〜じいじの活躍を聞きたかったな〜」

「普通のことですからわざわざ聞くことじゃないですよ?」

「いや、おじいさまの活躍が普通な訳ない「普通ですよね?」…はい」


じいじはそう言うけど絶対に普通じゃない!

でもじいじの画面圧力にリディさんは屈するしかなかったようだ。

リディさんの返事に満足したじいじはまた里の方へ戻っていく。

じいじの武勇伝聞きたかったのに残念だ。


「コッホン!気を取り直してお祭りについて説明するわね」

「いつかじいじの武勇伝を教えてくださいね?」

「そ、そうね。おじいさまの許可をもらえたらね?で、そのお祭りは普通のエルフでも見ることができない世界樹に会える特別な日なの。だからたくさんエルフが集まるし、エルフに認められた他種族も来るよ!」

「そうなんですね!」

「でね!何でお祭りの話をしたかというと、リサちゃん、屋台出さない?」

「屋台?」

「そう!お祭りだし、他種族が集まるから屋台を出すんだけど、リサちゃんに出して貰えないかな〜って!」


お祭りで屋台が出るまではわかるけど、その流れで屋台を進められる意味がわからず首を傾げる。

リディさんは矛盾していないみたいで、すっごくキラキラした目で見てくる。


「何か希望があるんですか?」

「そう!ぜひ!食べ物の屋台をお願いします!!」


疑問に思って聞くとリディさんは土下座でもしそうな勢いで頭を下げてきた。

なぜ食べ物限定?


「屋台も毎回同じような内容ばっかりで変わり映えしないの!それに折角のお祭りなら美味しいものが食べたいの!」

「それを私に頼む理由は?」

「族長に聞いたわ!リサちゃんのチーズ料理を食べたって!今までに食べたことない、すごく美味しいものだったって聞いたわ!」

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