85 ランクアップ?
「いやー良かったぜ!うっかり受け渡し方法伝えてなかったから、ギルド内が大騒ぎになるかと思ったぜ」
「うん、ドラゴンを倒した高ランクの冒険者が来るかも!なんて酒場で話していたもんね」
ドラゴンが現れ、あっという間に討伐されたのが午前中の話だ。
その話題沸騰の中にドラゴンの報奨金を受け取りに来たのが私みたいな小娘とじいじだったら絶対絡まれる!
対策してきて本当に良かった。
「しかし、まあ。ドラゴンを倒した冒険者がまさかのCランクとはな」
「冒険者登録してから数ヶ月ですからね」
戦闘技術があれば登録した時点でランクアップの試験が受けられるみたいなこと言っていたけど、それでもせいぜいDランクくらいだというし。
登録して1年も経っていない冒険者がそうホイホイランクが上がるわけないのだ。
「ドラゴン倒した実績もあるし、Aは無理でもBランクはいけると思うがどうする?」
「あっいりません!」
ギルドマスターからランクアップの提案を受けるけど、きっぱりお断りする。
この間Cランクになったばかり。
ましてやCランクでもぎゃあぎゃあ騒がれたし、また面倒なことに巻き込まれるのは嫌なので。
ギルドマスターが残念そうな顔で見てきたが、それでも答えはノーなので。
「あと、盗賊の報奨金も渡しておくな。ちなみに拠点にあった盗品の整理は終わっているか?」
「ありますよ、こちらになります」
ランクアップについては頑なに受けないとわかったのか、残念そうにため息をついた。
そしてうっかり忘れていた盗賊の報奨金も渡してくれた。
部隊長が冤罪を吹っ掛けてきてたから、もらえないかなっと思っていたけど、ギルドマスターはちゃんと手配してくれていたらしい。
ありがたい。
そしてじいじはいつの間に盗品のリストを作っていたのでしょうか?
昨日盗品を渡したかな?
覚えがないけど、きっとじいじのことだから調べて書き出しておいたのだと納得しておこう。
ギルドマスターは盗品のリストからいくつか買い戻しを希望してきた。
「リサ様、盗品の中で持っておきたいものなどないでしょうか?」
「特にないかな」
収納するときにチラッと見たけど心惹かれるものはなかったと思う。
貴金属についても普段付けないので欲しいとも思わない。
どうやらじいじは希望の買い取り以外の盗品も全てギルドに売ろうと思っているようだ。
盗品の処分をまったく考えていなかったので、とっても助かります!
盗品が小物ばかりだったこともあり、その場で全部ギルドマスターに預けることができた。
ちなみに盗品の買取額はギルドの口座に振り込んでもらうようにした。
何回もギルドマスターを呼び出したりすると怪しいし、ドラゴンを討伐した報奨金という現金もあるから、一時は金策しなくても安心だ。
ギルドマスターとの話も終わり、他の人に勘ぐられたくないので、受け取るもの受け取ったらすぐ冒険者ギルドを後にする。
あとは宿でゆっくりするだけ。
宿の部屋に入るとすぐさまベッドにダイブして、ゴロゴロする。
「ねぇじいじ、聞いていい?主神様の加護って変な効果あるよね?」
宿に戻って一息着いて、改めて振り返ると最近巻き込まれ方がひどいと感じた。
港町リーンでも魔獣の暴走に巻き込まれただけだったのが、首都ではレシピ登録を中心に色々あったように思える。
そしてローウでは盗賊とドラゴン討伐と立て続けに巻き込まれた。
ここまで巻き込まれると主神様の加護の称号に疑いを持ってしまっても仕方がないのでは?そう思ってステータスを確認しても、称号の欄に主神の加護としか記載がなく、称号の効果などは記載されていなかった。
鑑定スキル不足なのかと思って、鑑定スキルが私より上であろうじいじに鑑定結果を問いかけたのだが。
「本当のこと言って欲しいです!」
「トラブルに巻き込まれやすいなどそんな効果ありませんよ」
苦笑いしながらそう言われてしまう。
その他にも呪い系のものを持っていないか何度も確認したけど、そんなもの持っていたらじいじが気づくはずだし、当然持っていなかった。
本当にトラブルに巻き込まれる効果はないよね?
疑われても仕方ないくらいの巻き込まれ方がひどいんだけど!
原因が掴めないまま、また巻き込まれるかもと思うとちょっと憂鬱になる。
巻き込まれないためにも対策を考えて慎重に行動しないといけなくなる。
そんな生活嫌だ!
「う〜せめて原因ないかな〜これが生まれつきのそういう宿命だったら引きこもるしかなくなるんじゃ…」
(ナデナデナデ)
「うぅ、パックちゃんありがとう〜」
嫌だな〜とベッドの上を転がる私を心配したのか、パックちゃんが元の姿に戻って頭を撫でてくれる。
慰めてくれるんだね、ありがとう。ちょっと癒やされたよ。
このままじゃ私が引きこもると思ったのか、じいじがある提案をしてくれた。
「リサ様、気分転換にエルフの里にでも行ってみますか?」
「エルフ!?」
生まれてきてから今まで人族しか見たことなかったけど、異世界定番のエルフってやっぱりいるの?!
驚いてベッドから飛び上がると、キラキラした目でじいじを見上げる。
「エルフっているの?おとぎ話じゃないの?」
「えぇ、この辺りは人族が多いですが、ダンジョンの街ヴェッレットなどでは他種族がいますよ」
「おぉ!」
やっぱりダンジョンには色んな種族が集まるんだ!
エルフの他にどんな人がいるんだろう!ドワーフとか獣人とかかな?
前世でも体験したことない未知の出会いがあるのなら早くダンジョンに行ってみたい!
「ダンジョンに行くのもいいのですが、また絡まれる可能性もありますので」
「そうだった。ダンジョン行ってすぐトラブルに巻き込まれたら、絶対引きこもるわ」
「なので先にエルフの里に行ってみてはと思いまして」
エルフの里は秘匿されているため、滅多なことでは人族は入って来ないとのことだ。
エルフにも絡まれたりしないのかと不安になるが、その心配はないという。
エルフは主神様を崇めているため、その加護を持っている私にそのような無礼なことはしないとじいじは断言する。
「それに若いですがドラゴンの素材が手に入りましたし、エルフに洋服など仕立ててもらってはどうでしょうか?」
「エルフって服を作れるの?」
「えぇ、リサ様が今着ている服もエルフに服ってもらいましたから」
「なんと!」
じいじの言葉に驚きと共に思い出した。
リーヴォルの服飾店で世界樹の素材を使っていると言われていたことを。
エルフの伝手があっても難しいと言っていたけど、里に行けば手に入りやすいのも当然。
エルフの服作りか、いっそ作り方とか教えてもらって、ゆったり物作りに集中するのもいいかもしれない。
じいじの言う通りなら絡まれることなく、穏やかな時間が過ごせそうだし。
「うん!エルフの里に行こう!スローライフをしに行こう!」
「リサ様スローライフは長すぎます。せめて休暇にしてください」
「はーい!じゃあスローホリディだね!」
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