76 首都出発

料理長にお高いレストランの紹介を確約してもらえたので、ここ一番くらいテンションがあがっている。

牛乳プリンのアレンジレシピもその場でスラスラ書けるくらい、お高いレストランでの食事が楽しみでしかたなかった。

最近いろんなことに振り回されて、楽しむことができていなかった気がする。

人生は楽しんでナンボ!楽しまないと損だ!


「早ければ今夜、お高いレストランに行けるかもしれないよ、じいじ!」

「ようございました」


じいじもにこにこ笑ってくれた。

その笑顔を見ると、じいじもここ数日実はピリピリと気を張っていたんだなと思った。


「今晩の予定が決まるまで、明日以降の行きたいところでも話しましょうか?」

「そうだね。昨日のこともあるし、不用意に宿から出ないほうがいいか」


昨日のことは、この国に来てから一番最悪な日だった。

思い出してもイラつくだけなので、記憶を振り払うように首を振る。


「本日は料理長おすすめのランチもあるそうですから。一日ゆっくりしてもいいでしょう」

「うんうん!あっ、でも次の行き先は検討しておきたいかな?」

「わかりました。参考になるかわかりませんが、この国の地図を見ながらのんびり決めますか」


行き先を決めるとは行かないが、こういうところに行きたいという候補は出しておきたかった。

その要望を叶えるためじいじは懐から地図を取り出して机に広げた。


「これがこの国の地図?」

「えぇ、今いる首都はここですね」


地図で見ると首都は国の中心ではなく、海寄りだった。

その事をじいじに聞くと、理由は2つあった。

1つは攻められた際の防衛がし易いように、もう1つは貿易がしやすいように海寄りにしているとのことだった。

港町リーンから数日で首都に着いた訳に納得する。

海側から攻められてもそんな大量に人を運ぶことは難しいだろうし、港町以外から上陸しようとすれば魔の森に阻まれる。

この国を開拓した人はそこまで考えて開拓したのかな。


「隣の領地のローウは放牧が有名なので、織物やチーズが有名ですね」


そう言ってじいじは海とは反対側を指した。

山と平野に囲まれた地域のようだ。

新鮮なチーズを買いに行くのもありか。


「こちらはダンジョンがあるヴェッレットで、冒険者が多くおります」


やや左方向にずらして場所をじいじは指した。

ほうほう、この国にもダンジョンがあるのか。

前世のノベルとかで読んだことはあるけど、同じように魔獣リポップするのかな?

それならダンジョンに行って魔法や剣の練習をしてもいいかな。


「こちらは国境です。他の国に行くことができます」


ダンジョンとは逆の右側をじいじは指した。

次の国か、昨日考えたな。

でもまだこの国を堪能していないから、まだまだ観光したいな。

これ以上余計なことが起きなければの話だけど。


「いかがですか?」

「まだ観光したいです!チーズ買いに行きたい!ダンジョンも行きたい!」

「では、先にチーズを買いに行ってからダンジョンに行きますか?」

「はーい!」


次に行く場所はチーズになった。

ダンジョンに潜るのにしても美味しい食事は欠かせないからね!

そうと決まれば、ささっと準備しないと!

首都にいるとまだまだ巻き込まれそうな気がするので、できれば早めに出た方がよさそう。

問題はオークションのお金をどうするか。


「事前に伝えておけば、オークションの落札金額はギルド口座に振り込んでもらえますよ」

「そうなんだね!じゃあいつでも出発できるように準備を整えて手続きに行こうね!」


タイミングがいいことに、その夜に料理長おすすめのお高いレストランに行くことができた。

お味はもちろん言うことなし!

今まで食べた中で一番美味しい料理でした。

そのため翌日には話していたオークションの落札金額をギルド口座に入れてもらうように手続きすることになった。



「おう、もう行くのか?」

「はい!なのでチキンステーキを営業に問題ない程度売ってもらえないかと」


旅支度のために訪れたのはエミリーさんから紹介してもらったチキンステーキのお店だ。

レシピ登録したいくつかのソースもすでにメニューとして販売しているようだ。

そのためか、お客さんが前来たより増えているように感じる。

提供されている料理を見ると、やっぱりここの焼き加減は自分では再現できないと改めて思う。

毎日は食べれないが頑張ったご褒美的な時に食べるように確保しておきたかった。

こういう時、時間停止可能なアイテムボックスを持っていて良かった。


「そうか。ソースの味も見て行って欲しかったが冒険者を足止めするわけにはいけねぇな」

「…ありがとうございます」


1回会っただけなのに、こういう対応をしてくれることが嬉しい。

エミリーさんの知り合いはエミリーさんと同じように配慮してしてくれる。

自分の利益のため引き止める人もいるのに、他人に配慮できる人は貴重だ。

それに大量に購入しても保存をどうするのかと野暮なことは聞いてこない。

ちゃんと美味しく食べてくれるって信じてもらえているんだと思う。


「チキンステーキなくなったらまた買いに来ますね!」

「おう!こっちも次に買いに来てもらえる前にソースの味をもっと磨いておくぜ!」


店主の力強い声のお陰で明るい旅立ちの挨拶ができた。

次に商業ギルドに行ってエミリーさんにも首都を出ることを伝える。

ここでも惜しまれつつも「よい旅を」と笑顔でお見送りしてもらえた。

湿っぽいお別れにならずに済んでよかった。

その後冒険者ギルドでオークションの落札金額について口座に自動入金されるように手続きをする。

緋色の獅子のメンバーにもお別れを伝えに行こうとしたのだが、じいじの情報によると不在だということだった。

寂しいけど、思い立った時に動いたほうがいいと思う。

緋色の獅子には冒険者ギルドで伝言を依頼して、思い切って首都を出ることにした。

さて、次は美味しいチーズをゲットするぞ!

…次は面倒なことが起こらないといいのだけど、今までの経験からそれは期待できないよな〜

まあじいじと一緒ならどんなトラブルでも乗り越えられるでしょう!


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ちょっと打ち切りみたいな書き終わりですが、まだ続きますよ〜

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