72 ピアスの魔道具
「えっ?リンダさんどうしたんですか?」
リンダさんが突然、保護者のような発言をして驚く。
窓口になってくれるのはとても助かるのでお願いしたいところであるけど、いきなり過ぎて戸惑ってしまう。
「ちょっとね。強いて言うなら私の自尊心のためよ」
「はぁ」
いつものツンとしたリンダさんにすぐに戻った。
まあ保護者感のあるリンダさんは慣れないので、戻ってくれて助かるけど。
「貴族の対応してくれるのであれば、有り難いのでお任せしたいですが、一応じいじにも確認していいですか?」
現在の保護者はじいじになるから、保護者の承諾は一応取っておいたほうがいいだろう。
特に貴族の対応を人に丸投げするのだから、じいじに相談せず、後から何か問題が起きた時に知らなかったではすまないのだ。
それにいい加減連絡を入れておいたほうがいい気がしてきた。
すぐ登録して買い物をするはずが、登録だけでかなりの時間がかかっている。
この後ショッピングに行く気力もないだろうし、宿に戻ってじいじに説明するのも億劫だ。
さっさと片を付けてベッドで休もう。
そう考えて、左耳につけているピアスに魔力を流す。
『じいじ、今話しても大丈夫?』
『はい、どうされました?』
『商業ギルドでゴタゴタ起きて、リンダさんが貴族の窓口になってくれるって言っているんだけどいいかな?』
『すぐに向かいますので、そのままお待ち下さい』
『は〜い』
じいじとも無事連絡が取れた。
すぐ来てくれるというのでこれで一安心だ。
「今、話していたのおじいさん?」
「はい!すぐ来てくれるそうです!」
「おじいさん宿にいるんじゃなかった?!」
拠点での話が終わったら宿に帰ると言っていたので宿だと思うが、それがどうしたんだろう?
隣を見ればリンダさんやシャロンさんも驚いているようだ。
「それって魔道具なの?しかも交信ができるって、そんな魔道具みたことないわ!」
「そうなんですか?でも手紙の魔法と同じですよね?」
どうやらこのピアスの魔道具はあまり知られていないらしい。
けれど原理としては手紙の魔法と同じだとじいじから聞いたから、魔法で事足りることをわざわざ魔道具にしていないだけかもしれない。
ちなみに手紙の魔法は、専用の魔法紙に書いて魔力を込めると相手にその手紙が届く魔法だ。
基本じいじはそばにいるのでピアスを使うのは初めてだったが無事繋がってよかった。
まあ、繋がらなかったら手紙の魔法を飛ばすだけだったけど。
「…えぇ!えぇ!手紙を送る魔法はあるわ!あるけど!そもそもその魔法を使えるのはごく一部の限られた者だけよ!その魔法を応用した魔道具って!一体どれほどの」
「お待たせいたしました」
「ぎゃあ!」
何やら怒り出したリンダさんのすぐ近くにじいじが現れたので、リンダさんは大きな悲鳴をあげた。
だがじいじはそれに対応することなく、いつもの微笑みを浮かべている。
いやちょっと困ったような表情をしているかも?
「おおよその状況は把握できましたが、いやはや首都ともなると人が多くなるせいか、騒動に巻き込まれやすいですね」
じいじの言うことに同意するしかない。
首都に着いてからの騒動の数々。
冒険者ギルドのランクアップで絡まれ、食べに行ってはレシピの登録を頼まれ、警護という見張りをつけられ、そして今回の騒動だ。
数日で起こっていい頻度ではない。
祖国でも港町リーンでも騒動はあったけど、こんな頻度ではなかったのに。
まさか主神様の加護の影響とか言わないよね?
パワーアップしているとかないよね?
「そのような効果はないはずです。どちらかというとリサ様が有能な故でしょうな」
「私が有能っていうなら、じいじは才能の神様になっちゃうじゃない?ってまた心の声を読んで〜」
恨みがましく口を尖らせて抗議するがいつも通りじいじはすぐスルーする。
しかし、いくらじいじの言葉とはいえ有能という言葉は受け入れられない。
じいじがスーパー執事だってことをわかっているし、比べるのも烏滸がましいことだとわかっている。
けど有能ならそもそもこんな事態になっていないと思うんだよね。
「まあその話は結論がでないから置いておいて。貴族の窓口をリンダさんにしてもらっていいかな?」
「そうですね…見たところ善意の申し出のようですし、お願いいたしましょう」
「ですって!じいじの許可が出ましたよ!」
「えぇ。って何から突っ込んでいいの!?」
許可を貰えたはずのリンダさんが大きな声を上げた。
理由がわからず首を傾げるが、横にいるシャロンさんとシエラさんは首を大きく縦に振っている。
「突っ込むようなことありましたか?」
「たくさんあるわ!ありすぎるから1つずつ答えて!」
「答えられることなら」
「ありがとう!」
壊れ気味のリンダさんの勢いがすごい。
質問を断ったら暴走しそうだったのでとりあえず了承する。
「まず、そのピアス!それは離れた場所でも交信ができるってことで間違いない!?」
「ですね!実際にじいじと連絡しましたし」
見ていたはずのリンダさんからそんな質問が出て不思議に思うがとりあえず肯定する。
「どれくらい離れた距離でできるの!?」
「正確な距離は知らないです。宿までは届くかなってやってみただけなので」
今回初めて使ったから、どれくらい離れてできるかなんて検証したことない。
じいじは知らないかなっと視線を向けると首を横に振った。
「流す魔力量次第というだけしかお答えできません。交信できる距離でしか使ったことはございませんので」
じいじでも測ったことがないらしい。
必要な時は繋がっていたらしいから、わざわざ調べるなんてしないだろうし。
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