60 商業ギルド

予定外に絡まれる事態が起きたが、いつまでも引き摺っているわけにも行かない。

緋色の獅子のメンバーとは冒険者ギルドで一旦解散する。

宿は緋色の獅子のお薦めの宿を取ってくれるとのことなので、早く商業ギルドに行って来いとのお達しだ。

今回商業ギルドで登録するのは料理のレシピのみとなった。

保湿剤についてはリンダさんが後ろ盾を作ってくるまで登録しないようにして欲しいと言われている。

さっきみたいな変な騒動に巻き込まれるのも嫌なので素直に聞き入れた。

リンダさんに言われた通り、首都への道中で全身用・目元用・唇用と特化したした保湿剤を作って既に渡してある。

どれくらいで後ろ盾ができるかわからないが、首都でしたいことはあるし、観光もしたいので首都に滞在中に登録できればとゆるく考えている。


「商業ギルドって大きいねぇ〜」


首都の商業ギルドは街の中心寄りにあり、冒険者ギルドと同じくらい大きな建物だった。

外観は冒険者ギルドより凝った造りになっているからお金掛けているな〜と感じる。

中に入ると窓口は数カ所あって、待合場所も設けられているようだ。

スムーズに対応できるように導線が考えられていて、前世の役所のような雰囲気だ。


「どのような御用でしょうか?」


キョロキョロしながら見渡していた私と目が合った受付のお姉さんが優しく微笑んでくれた。

なんて素晴らしい対応!

こんな小娘が不審な動きをしているというのに、表情に出すことなく、優しく声をかけてくれるなんて!よし、このお姉さんに決定!すべてを任せよう!


「料理のレシピを登録したいです!どうすればいいですか?」

「料理のレシピですね。レシピ内容を専用の紙に記載していただくのですが、レシピ登録する場合は商業ギルドへの登録が必要となっておりますが、お持ちですか?」

「冒険者ギルドは登録しているんですが、商業ギルドは登録していなくて…」

「大丈夫ですよ。先に登録もされますか?」


冒険者ギルドのカードがあれば身分証としてはいらないだろうけど、今後何かあるかもしれないから商業ギルドにも加入して置いたほうが良い気がするけど。


「登録するにあたって、登録料とか必要ですか?」

「先に説明すべきできしたね、すみません」


商業ギルドに登録するのは無料だが、年間の手数料がランクによって発生するらしい。

基本は口座の残高から引き落とされるようになっているとのことだった。

ちなみに登録した年は無料とのことだ。

頻繁に売買をする気はないけどレシピを登録するなら必要だろう。

冒険者ギルドと同じような申請書を書いて商業ギルドへ登録した。


「では今回料理のレシピとのことなので、こちらに内容を記入していただけますか」


そういって出された用紙に目を通す。

料理名・使用材料・手順などを記入する項目が並んでいて、書きやすそう。

パソコンなんてないから、後から探すときも便利かもね。

どこぞの書類FMTみたいで、ここにもちょっと転生者の影を感じる。


「えっと、同じ料理の味付けが違う場合は別紙に書いた方がいいですか?」

「その場合には下の方にある派生に記載してくださいね」

「なるほど」


まずは通常のからあげの内容を記入して、味付けの違う唐揚げの内容を派生の項目に記入して受付のお姉さんに見せる。

お姉さんはそれを受け取り、すぐに目を通すと内容があっていたようで頷いてくれた。


「それ以外にも提出したいのでもう何枚か用紙をください」


そう言ってもらった用紙にチーズ入りオムレツや煮込みハンバーグ、柔らかいパンの作り方などの料理レシピを記入していく。

レシピを書いていると何だがお腹が空いてきたので、受付のお姉さんに気軽に入れる美味しいお店を聞いておく。

レシピ登録が終わったら早速行ってみようと思う。


「これで全部です!確認するのって時間かかりますか?」

「大丈夫ですよ。レシピもギルドカードと同じ仕組みで管理しているので、登録できるかすぐ確認できますので」


ギルドカードは瞬時に個人登録を行い、それを各国のギルドで確認できるようになっているとんでもない仕組みでできているようだ。

そのレシピ版で確認するのだが、記載した分類で検索できるので該当レシピがあるかすぐ確認できるとのことだ。前世の図書館にあった検索パソコンみたいだなと感じた。


レシピを確認している間、レシピを登録した場合の利権について説明してくれた。

商業として使用する場合に権利が発生し、販売価格の5%が入金されるとのことだ。

5年経つと権利料がなくなるが、それまでに無断で商業使用している人がいれば商業ギルドに連絡すれば対応してもらえるとのことだった。

ただ登録者以外が個人の範囲で使用している場合は追及しないようになっている。

思いついた内容が被っていたりするとどちらが先に考えたか証明しづらいからだ。

個人だと後追いも大変だけど、商いをする場合は商業ギルドに登録することが多く、その場合使用料の回収もしやすいので請け負っているらしい。

もちろん商業ギルドにも使用料が入るから取り立てしているとのことだった」


「今回提出されたレシピは全部登録可能でした」

「全部ですか?」


チーズオムレツとか煮込みハンバーグとかって割と定番だと思うんだけど、他の転生者は登録しなかったのかな?

不就労収入があるのはありがたいので、そのまますべて登録してもらう。


「リサ様のランクは今回の登録ですぐにEランクになる可能性がございます」


商業ギルドも冒険者ギルドと同じランク分けをしていて、登録したばかりだとFだそうだ。

私は登録したレシピ数も多いし、どれも使い勝手がいいので使用される可能性も高く、結果年間の売買取引額がFランクの上限を超え、Eランクになるだろうとのことだ。

その場合来年度からの年会料がEランクの金額に上がるのでギルド口座の残高に気を付けて欲しいと助言をもらった。

本当に今回の受付のお姉さんは失礼な言い方だが当たりだと思う!

自分の利益には直結しないのに相手の事を考えて助言してくれる気遣い。

さらに美人!ブラウンの艶やかな長い髪を一つ結びにして、切れ長の目と相まってクールな印象なのに、笑みを浮かべると途端に優しい雰囲気になる。

今後も商業ギルドでやり取りがあるようならこのお姉さんにぜひとも対応して欲しい!思い切って名前を聞いてみると、優しい微笑みで「エミリーといいます」と教えてもらえた。

今回の丁寧な受付に感動したこと、次もエミリーさんにお願いしたいことを伝え、商業ギルドを後にした。

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