51 模擬戦3
言い争っているリンダさんとシエラさんは放っておいて、ラウルさんとの模擬戦を始める。
ラウルさんとはどう戦おう。
盾使いなら、敵を足止めして仲間に倒させるか、盾で殴りかかるイメージがあるから、拘束するのも穴に落とす方法もどちらも通用しそうだけど、何故か嫌な予感がする。
「俺にはさっきの戦法をしてくれないのかい?」
「含みのある言い方をされると、やりづらいです!それに嫌な予感がします」
ジリジリ睨み合ったまま動かない私にラウルさんが誘うように声をかける。
私の嫌な予感という言葉に、余計にやりと笑う。
とっても怪しすぎる。
「睨み合っているだけじゃどうにもできないぜ?」
「わかってはいるんですが…」
嫌な予感が拭えず、戦法を考えきれない。
そのため一歩が踏み出せないんだけど、そんな状態を相手が許すはずもない。
「じゃあこちらから一丁行かせてもらうぜ!」
そういうとラウルさんはリンダさん並のスピードで迫ってくる。
あの大盾を構えたまま走れるのはすごい!重たいのもあるけど、普通は盾に足が当たるよ?
向かってくるから、とりあえず受けてみよう。
「いい度胸だな!それじゃ期待に答えて、《吾の力宿れ、シールドバッシュ》」
「っう!」
私が受けることを読んで、ラウルさんが盾を振り上げると同時に技を発動する。
盾の重さもそうだけど、魔力で威力の上がった攻撃に思わず唸る。
とっさに足を強化したから飛ばされはしなかったけど、押されて後ろに後退してしまった。
模擬戦だからってギルドで買った木剣で対応していたけど、魔力纏わせていなかったら、折れて自分に当たるところだった。
「ほうほう、それでよく受け止められたな」
「私もそう思います」
油断していたわけではないけど、決断ができず後手になったのが悪かった。
その様子を見ていた緋色の獅子メンバーの女性陣が納得できないような顔でため息をつく。
「無神経で口下手だけど、戦闘は一番なのよね。」
「ちょっと納得いかないけれどね」
なるほど、盾を自由自在に操れるパワーにあのスピード。
パーティーの中で一番というのもわかる。
じゃあどうするか?
「考えている時間はないぞ?」
そういってラウルさんはさらに体重を掛けてくる。
一歩引いたほうがいいの?このまま攻撃に出たほうがいいの?
どうしていいか判断できない。
「それじゃこれで終了だな《吾の力宿れ、シールドバッシュ》」
《シールド》
とっさに結界の盾を展開して、ラウルさんの追撃を防ぐ。
思いつきだが、これならいいかもしれない。盾には盾で対抗してみる。
「魔法の盾か、力比べするか?」
「相手の得意で対抗するわけないじゃないですか《シールド》」
次は地面に突き立てた状態で結界の盾を生成しラウルさんの盾にぶつける。
力比べは結界に任せて、私は一歩下がる。
「そう簡単に逃さないぞ!…お?」
「逃げられないのはラウルさんですよ?」
結界の盾に粘着力をつけたので、ラウルさんは盾を動かすことができない。
《シールド》
「おっと?これは囲まれたな」
「これだと盾も振り回せないでしょう!」
リンダさんと同じ戦法になったが、結界でラウルさんを囲んで身動きを封じる。
念の為に全てに粘着力をつけているから、振り切ろうと体当たりなどをしたら余計に粘着して動けなくなってしまう。
「結界に粘着力をつけるって意味分かんないだけど?」
「結界って守るために硬いっていうのが普通だよね?何でくっつくことができるの?」
「しかも今は見やすいように薄く光ってはいるが、結界は透明にもできたはずだ」
「透明で見えなくて、触ったら身動き取れないとか最凶の罠じゃない?」
見学側が色々言ってうるさいが、そう難しいものじゃない。
盾の表面に粘着力のあるものをくっつけるイメージをしただけ。
ちなみに粘着剤のイメージはトリモチなので力づくで引っ張ってもちょっと伸びるだけで絶対離れない。
「ラウルさんどうでしょうか?」
「ふむ、盗賊などを捕まえる際に便利だな。だが技量のあるものだと抜け出せるからな!《母なる大地 吾の希望を叶え給えアースウォール》
ラウルさんは盾から手を離すと、自分の下に作った落とし穴に落ちていく。
これは何かやばい予感。
すぐ探知をかけてラウルさんを探す。
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