50 模擬戦2
「あーあ、もうちょっといい攻撃できると思ったのに〜」
「残念だったがシエラにとってもいい経験になっただろう。じゃあ次はどっちがする?」
「先に私がやるよ」
拘束を解いたシエラさんは唇を尖らせながら見学側に戻っていくと、次はリンダさんが結界から抜け出た。
次の対戦はリンダさんになりそうだ。
「さっきの戦法は私には通用しないよ?」
「そうですね」
リンダさんが言うように斥候職の人を拘束するのは難しい。
移動速度が早いため、移動先を予測して魔法を展開しても間に合わないか避けられる可能性がある。
けど今回はあくまで模擬戦。試してもいない方法を諦めることはないだろう。
やれることはやってみたほうがいい。
「では、はじめ!」
「いくよ」
リンダさんは斥候定番の短剣を取り出し、開始合図と同時にこちらに一直線に向かって走ってくる。
あまりに真っ直ぐなので罠かと思うが、それを考える暇はない。
通じないと思われている先程と同じ魔法を展開する。
《グラスバイン》
「それは通用しないって言ったわよね?」
リンダさんが怪訝な顔をしながら、ひらりと避ける。
やっぱり避けられるよね。
私も当然そうなると思っていたからリンダさんから距離を取るため、左側に走りながら、次の魔法を展開する。
《グラスバイン》
「悪いけど、すぐ避けれるから、魔力の無駄よ?」
次の魔法も避けられる。
そう、避けられるのはわかっている。
《グラスバイン》《グラスバイン》《グラスバイン》《グラスバイン》
「自棄になっているの?連発したところで捕まえられないなら意味はないのよ?」
《グラスバイン》《グラスバイン》《グラスバイン》《グラスバイン》
リンダさんの忠告を聞かず、私は同じ魔法を連発し続ける。
「あ…」
見学側の誰かがかすかに驚いた声をあげる。
私が何をしたいかわかったようだ。
「…まさか?」
ずっと私ばかり見ていたリンダさんが後ろを振り返る。
そこには歪だが、囲いができた。
ずっと連発していた魔法は消さずに、お互いを拘束させることで、植物の壁ができあがる。
そしてリンダさんの倍以上伸ばせば後は仕上げだ。
《アースホール》
「っきゃ!」
斥候が素早く捕まえられないのであれば、逃げられない場所に追い込めばいい。
まあ、やろうと思えば、一帯をまとめて落とし穴にすることはできるのだけど、地形を変えるのはよくないからね。
先程の戦法は自分に知られているから成功するはずがないというリンダさんの慢心をついてみたのだ。
無事ハマって良かった。
「あ〜これは上がれないわ。降参よ」
「やったー!」
リンダさんの降参の声にガッツポーズをする。
一応落とし穴の底はふかふかにしておいたので、飛び上がって脱出することもできない。
「あーシエラより早く負けるとは思ってなかったわ」
「えーリンダひどい!私は中近距離だから都度の対応ができるんだ!リンダも斥候以外の技を磨けばいいんだよ!」
「そうはいうけど、手段が分散するとその分練度も分散することになるわよ。効率的じゃないわ!」
シエラさんの言いたいことも、リンダさんが言いたいこともわかる。
シエラさんは1つの手段しかないと、それが使えない時のリスクを懸念している一方、リンダさんは複数の手段を使えるようにするには倍の時間がかかって非効率になると。
「また始まったな」
「ごめんなさいね。どちらかが何かミスをするといつもあの議論が始まるのよ」
「どちらも一理あるから下手に止められなくてな。いつも放っておいている」
放っておいて本当にいいのかと首を傾げるが、「仲裁に入るとどっちが正しい?と巻き込まれる」とラウルさんが言う。
なので巻き込まれないように傍観しておくのが一番だという。
「時間も勿体ないし、さっさと対戦してしまおう。対戦が始まれば2人も落ち着くだろうし」
「はーい!ラウルさんよろしくお願いします!」
「おう!よろしくな!」
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キリがいいところだと短くなってしまいました。
明日更新できるように頑張ります!
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