46 目立たない方法

「まあ、そうですね。もし人前でする必要があるときは、信用のできる人間なのか。そうでないなら、どうやって気づかれずに行うか考えなければなりませんよ?」


そっと見守っていたじいじが同意する。

割と非常識に色々やっていたじいじに言われたくないよ。


「緋色の獅子の皆さんは大丈夫でしょうが、もしここに他に野営する人がいたらどうなったでしょうか?」


さっきまで、焚き火がしやすいとしか考えてなかったけど、周りに人がいたらシャロンさんみたいに大騒ぎになっていたかもしれない。


「魔力を感知できる魔術師がいたら?シャロンさんと同じように魔力を感じたら?」


寝ていた魔術師の人を起こすことになったりするのかな?

それってすごい迷惑なことだよね!それはダメだ!


「これからは周りの目に気を付けます〜」

「それがいいです。基本は2人旅ですが、時には同行する人も出てきますし、ダンジョンの休憩所など使う時に迷惑になってはいけませんからね?」


じいじから小言を言われるが、それについてはちょっと反論したい。


「それっておじ様が言うことではないんじゃない?リサちゃんが色々するのっておじ様が教えたからじゃないの?」


私が思っていたことをシャロンさんが言ってくれた!

そうそう、何も知らなかった私に色々なことを教えてくれたのはじいじです!


「楽しく生きたい、便利な生活をしたいのが本能ですよ。人の目を気にしすぎて好きな事ができないのはリサ様の望みではない。ならどうやってリサ様の要望を叶えられるか考えるのです」


確かに縛られた生活だったから、自由に楽しく生きたいのは私の望みだ。

目立つのが嫌なのも、目立った結果、強欲な人から目を付けられて、縛られそうだからだ。

だったらどうするか。


「人目につかないように、バレないようにする!」

「なんでそうなるの!!」


考えだした結果にシャロンさんのツッコミが入る。

シャロンさん的にはダメらしい。


「ダメなんですか?」

「なんでいいと思うのよ!そもそも目立つことしなければいいでしょう!」

「じゃあシャロンさんはすごい魔法が使えるようになっても使わないんですか?試さないんですか?」

「そ、それは…」


魔法が大好きなシャロンさんが新しい魔法を覚えたら使用しないはずがない。

私も楽しく快適に過ごせる方法を知ったら使わずにはいられない。それと同じことだ。


「でも楽だから、快適だからで、魔法でなんでもしてしまって目立つことは良いことじゃないこともわかっています」


シャロンさんが注意してくれるのも心配しているからということだってわかっている。

だからこそ、バレないようにするのだ。


「快適さも諦めたくない、目立つのもイヤ。なら快適でもバレないようにすれば、目立つこともないはずです!」

「そうです。今まで知らなかったからできなかっただけです。ならば学んでできるようになればいいのです」


シャロンさんに理解してもらうため、熱く説得する私の言葉に、畳み掛けるようにじいじが話し出す。


「目立たなくする方法はいくつもあります。状況によって方法を変えていけばさほど目立つことはありません。それに目立ったところで、厄介な人物に目を付けられなければ良いことです」


人生経験が豊富なじいじだから言える言葉だと思います。

でもその方法を学んでいけば、私も快適に自由に楽しく生きることができるってことだよね!


「まあ、万が一目を付けられても、潰してしまえばいいことですしね」


最後にぼそっといったじいじの言葉は聞こえなかったけど、何故かシャロンさんが引いた顔をしている。


「さて、先に少し目立たなくなる方法を教えておきましょう」


おもむろにじいじは話を切り出した。

話を聞くと実はこの依頼中に2つの魔法を使用していたらしい。

1つめは軽度の人避け、2つめは気配を薄くして、人の視線が集まらないようにする視線誘導系の魔法。


「えっ!魔法が使われたのに全然気が付かなかったわ!どうして!?」


私もシャロンさんも魔力を感知しやすいはずなのに、じいじが使っていた魔法に気づかなかった。


「ちょっと知られていない技術ですね。それも後日学んで行きましょう」


じいじはイタズラをこっそり暴露するように言った。

本当にじいじは色んなことを知っているし、色んな道具を持っている。

だから目立たずこっそり自分の好きなことができているんだろうな。


じいじが持っているテントは外から見ると普通のテントなんだけど、組み立てが簡単で結界が張れて、さらに空間魔法で広くなっているのは、目立たないようにってことかな。


「こういう技術は誰にでも教えるわけにはいかないことはわかりますね?」

「犯罪に利用されるからだよね」


人避け、視線誘導、魔力感知を無効、どれか1つでも悪人が知ったら犯罪し放題になってしまう。


「しかしこういう技術は同行者がいる時でないと練習できないのです。教える者と教わる者、そしてまったく関係ない第3者がいないと、成長具合がわかりにくいのです」


言われてみれば、教える人じゃ判断しづらい。方法を知っているから、知らない人より注意深く見てしまうから。

何も知らない人で試さないと成功しているかわからない。


「それを私が知ってもいいものなのかしら?」

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