43 魔法の温存
場所の説明が終わった後はテントの設営に移る。
今回は馬車があるから、準備するテントは見張り用の1つだけなので緋色の獅子が持っているテントを立てることになった。
じいじが持っているテントはワンタッチで組み立てできるチートテントなので見せることがなくて良かった。
前は普通のテントはいらないと思っていたけど、見せる用のテントを持っていたほうがいいかもしれない。
ちょっと首都に行ったらお店を見てみよう!
「俺たちが持っているテントは中心に柱を立てるタイプだ。耐久性がなく狭く感じるが、代わりに組み立てやすく持ち運びがしやすいのが特徴だ」
「利点と欠点を考えて、より自分たちに向いているものを選ぶといいよ。あれもこれもできる便利なテントなんてとんでもなく高級品だから気を付けて」
テントは男性陣で行うようだ。組み立てしやすいとはいえ、力は必要のようだ。
「テントを持てない冒険者はどうしているんですか?」
「マントや毛布に包まって雑魚寝だな。大体見張りとかみんなと一緒に固まって寝ていることが多い」
「稼げない時はやっぱり辛いことが多いからな、テントを買えた時は稼げるようになったなって実感できたよ」
やっぱり稼げない時は快適とは程遠い生活なんだな。じいじがいなかったら魔王国の旅も大変だったんだろう。ありがとうじいじ!
「準備の注意点はこれくらいかな?」
「じゃあ夜ご飯の準備しますね!」
色々教えてもらったし、夜ご飯は気合を入れて作らねば!
そんなに動いていないけど、がっつりお肉系のご飯がいいだろう。
ステーキでもいいけど、女性も多いからもう少し食べやすいハンバーグにしようかな。
「じいじお肉…」
「はい、こちらに準備しております」
ハンバーグ用のお肉を出して欲しいと口にする前に、デーンと山盛りのハンバーグが置いてあり、その後ろには大きな鍋にトマトソースがグツグツ音を立てている。
テントの組み立てを聞いている内に既に殆ど準備が終わっていた。
「…後はトマトソースで煮込むだけ?」
「えぇ、リサ様は煮込みをお願いします。私はサラダを準備しますので」
元々ミンチ肉を大量に用意していたよ。けどさ、下味をつけて丸めて、表面を焼くだけとはいえ、行動が早くないですか?私にも対価に貢献させて欲しいです。
じいじのすることだからと諦めて、ササッと山盛りのハンバーグをお鍋に入れ、後は適度に混ぜるだけ。もう少し他に何かしたい。
「そういえば、食べる場所ってどうするんだろう?」
野営地は本当に平べったい場所で、腰を掛けるところもない。
ハンバーグとサラダ、あとパンか白ごはんを食べるだろうから、テーブルは必要だよね!
「シエラさん!食べる場所って決まっているの?」
「あの辺で食べる予定だよ〜夜ご飯も美味しそうで楽しみ〜!」
「ありがとうございます!」
ちょうど通りかかったシエラさんに確認すると馬車の近くで食べるようだ。
ハンバーグには十分に火が通ったようなので、かまどの火を消して、食べる予定の場所に持っていく。
ハンバーグは配膳せず、自分で食べたい分を取れるようにしたいが、鍋をそのまま地面に置いておきたくない。それならテーブルと一緒に鍋を置く場所も作ってしまおう。
《アースウォール》
本来は土壁を作る魔法だけど、形を意識することで自分の好きな形にできる。
それを応用することで鍋を置く台と食事をする長テーブル、それから見張りと食べる人を分けるかもしれないから、ベンチ型の椅子を作成した。
「あと、飲水もいるよね!水差しとコップと、カトラリーもテーブルに置いておこう!」
アイテムボックスには予備の食器なども入れておいたのでそれを並べて置く。
水差しも水を入れたまま収納しておいて良かった。
「これで食事の準備は大丈夫かな?」
「…ちょっとコレはどういうこと?」
振り向くとシャロンさんが呆然とした表情で立っていた。
どうかしたのだろうか?
「何がですか?」
「何がって、椅子とかテーブルとか水差しとか食器とか色々ツッコミたいことはあるけど…まずテーブルと椅子から!」
「はい!」
シャロンさんの剣幕に思わず返事をしてしまう。そして逃さないと言わんばかりに肩を掴まれる。
「テーブルと椅子から魔力を感じるから、コレは魔法で作ったのね?」
「はい、アースウォールを応用しています」
「アースウォール、なるほどやり方はわかったわ。でもまず基本から、教えるわ。普通、魔法は、極・力・使わない!」
「使わない…?」
魔法を使ったほうが便利なのにどうして使わないのだろう?
使わないなら魔法は何に使うの?
「疑問が表情に出ているわね。リサちゃんは魔力が多いようだけど、普通の人はそんなに多くないの。だから野営地で魔法は使用しないというか使わない。魔獣とか盗賊とか襲ってきたときに使えるように温存しておくの」
「温存…」
魔力は多いほうだと聞いてはいたけど、そんなに違うものなのだろうか?
今までの比較対象がじいじだから、普通の人がどれくらい魔力を持っているか知らない。
けどお城の人とか街の人とかが魔法を使っていた記憶がない。
日常使いできないっていうくらいの魔力しかないのかもしれない。
「魔力ない時は体術で応戦するわけには?」
「魔法も体術もってなると中途半端になる可能性が高いから、大体最初はどちらか1つから鍛え始めるのよ」
そうなんだ。確かにお城では剣術ばっかりで魔法は一切使わなかった。
魔法はじいじに会ってから教えてもらったものだし、私も集中して修行したものだ。
うんうんと納得して頷く。
「あと水差しとかコップとかおそらくマジックバッグから出したんだろうけど…」
「けど?」
「マジックバッグにも容量が限られるから、普通は必要最低限しか入れないの!予備だとしてもポンポン出さない!というか基本は入れない!」
ついアイテムボックスがあるからって予備の日用品とかも入れていたけど、容量が制限されているマジックバッグなら、普通はそんな入れないってことよね。
魔獣を討伐したらその素材を持って帰らないといけないし、余分なものは入れないのも当たり前だ。
マジックバッグに偽装するにしてもポンポン余計なものを出さないように気をつけよう。
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