41 ふわとろサンドイッチ

「お昼ごはんって食べないんですか?遠征では食べてましたよ?」


遠征の時もお昼ごはんを食べていたから、3食しっかり食べるものだと思っていたけど、周りの反応を見ると違うようだ。


「依頼中は基本食べないな。特に今回は馬車での移動で歩かないから小腹が空いたら携帯食料を各自で食べるくらいだ」

「遠征のときは森の中歩いて行ったから、休憩を兼ねていたんじゃないかしら?」


まさかの話だった!街の人も昼食を食べていたから、普通に食べるものだと思っていた!

じいじとは依頼中だろうが移動中だろうが毎日3食取っていたし。


「まあ悪いことではないし、いただこうか?」

「ぜひください!」


私が動揺していたからだろうか、フォローしてくれる。

そしてシエラさんはブレることなく、手を握ったまま笑顔でお願いしてくる。

そう期待の込めた目をされると、ちょっと余計に出しづらいのですが…。


「はいはい、シエラは一旦離れよう。手を握っていたら出してもらえないわよ」

「それは困る」


シュパッと手を引っ込めた。シエラさんは腹ペコさんなのかな?


「えっと、こちらになります」


満足してもらえるといいのだけど、ちょっと不安になる。

移動中だから、手でつまめるサンドイッチにしたのだ。

サンドイッチといっても具材はチーズがたっぷり入ったオムレツとトンカツを挟んだボリューム満点のサンドイッチ!


「おぉ!すごーい!これ食べていいの?」

「どうぞ。数もたくさんあるので」

「じゃあいただきます!」


余ってもアイテムボックスがあるから、別の日に食べることができると考え、時間の許す限り作ってきたので、数はたっぷりある。

シエラさんは受け取ると大きな口を開けてかぶりついた。


「…んん!これ美味しい!中に入っているのはカツっぽいけど、すごく分厚くてジューシーだし!オムレツのこのふわふわなあにー!なんで卵がこんなにふわふわしてトローってしているの!!」


シエラさんの口に合ったようで、一口食べて絶賛してくれた。

お肉のジューシーさとオムレツのふわとろに拘った甲斐があった。


「…シエラ?」

「みんなが食べないなら私が全部もらうよ!いいね!?」

「よくないわよ!あんたが怒涛の勢いで食べて喋りだすから驚いているのよ!」

「だってだって美味しいんだもん!!これならここにあるの全部食べれる!!」

「やめろ!俺も食べる!」


シエラさんの言うことが本気だと感じたのか、ラウルさんが乗り出すようにサンドイッチを取って食べる。

それに釣られるように周りのメンバーも手にとって食べ始めた。


「おおー!本当にうまいな!サンドイッチって腹にたまらないと思っていたけど、中にたくさん入っているし、味もタレが濃くて好きな味だ!」

「本当ね!卵がこんなにトロトロなんて、いくらでも食べれるわ〜」

「こんなサンドイッチ初めてだわ。美味しい…」

「でしょでしょう!」


次々に称賛の声をあげてもらえて嬉しい。エイルさんは無言で食べ続けているがその表情を見れば美味しく思っていることがわかる。

誇らしく思いながら食べそびれたくなかったので、自分の分も食べ始める。


「うん、美味しい!」

「美味しくできて良かったですね」


味見もしていたので美味しいことは知っていたが、こうして美味しそうに食べてくれる人たちと一緒に食べているからか、いつもより美味しく感じる。

じいじも美味しく食べてくれるし、とても嬉しい時間になった。


「そういえば、このメニューって商業ギルドで販売しているのか?」

「商業ギルド?」


食べ終わりにラウルさんがそんなことを言い出した。

商業ギルドっていうと文字通り商業を取り扱っているところらしいけどそれとサンドイッチに何の関係があるのだろう。販売って?


「商業ギルドでレシピを買ったわけではなかったのか?こんな美味しいもの売っていないわけないんだが?」

「もしかしてリサが考えた?」

「考えたことに…なるのかな?」


チーズ入りのオムレツをサンドイッチにしようと考えはしたけど、それって誰でも思いつきそうなものだし、商業ギルドにすでに登録されているんじゃないかな。


「自分で考えたものだとしても、商業ギルドで販売していたら使っちゃだめなの?」

「個人で食べる分だったらわざわざ商業ギルド行く必要はないけど、こんなに美味しいから屋台とかで食べれないかと思ったのよ。商業ギルドでレシピが出ているならその内売る人も出てくるだろうし」


シャロンさんの丁寧な説明になるほどと頷く。

誰でも思いつきそうなものだから登録してありそうだし、行く必要はないかな。


「行きたくなさそうな感じだけど、一応商業ギルドに確認して欲しいな」

「それでレシピがなかったらぜひ登録して欲しい!この美味しいものが食べれなくなるなんてものすごく辛い!」


エイルさんとシエラさんが商業ギルドへ行くように押してくる。特にシエラさんの圧が強い。

それだけサンドイッチが美味しかったのかな。口に合ったようでなによりです。

商業ギルドか、ちょっと気になるな。

ちょっと確認するだけなら、そう時間はかからないだろうから行ってみていいかも。

リーンの街じゃ商業ギルドには行かなかったから、一度経験しておくのもいいだろう!


「じゃあ、首都に着いたら行ってみます。でも販売されるかはわかりませんよ?」


レシピはあってもチーズが高いとか、そういう理由があって売っていない可能性もあるし。

でも自分が作った以外にもチーズオムレツあれば食べてみたいな〜

卵とかチーズの種類でも味が違うだろうし、こだわりのある人なら特製ソースとか使っていそう。


故郷では逃げることしか考えてなかったから、自炊以外は宿か屋台の食事ばっかりだった。

依頼で稼いだ依頼料もあるし、オークションで落札されたら更にお金は増えるはず。

首都に着いたらちょっとお高いレストランとかにも行ってみよう!

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