40 出発
翌日は晴天!出発日和である。
まずはギルドに向かい、オークションに出す素材を預かったけど私たちが狩った物以外にも出品するものがあり、その量にちょっと驚いた。
私達が今回売る分は最低価格で売っても、平民なら一生働かなくていいくらいの金額になるってじいじが言っていたから、前世換算だと億の価値があるってことだよね。
そこそこ量があるとはいえ、魔の森にいる魔獣がそんな高い価値があるって聞くと、冒険者になって一発当てようと思う人が多いのも納得する。
冒険者になるのに資格がいらないっていうのもあるだろうけど。
「冒険者になったのはあくまでも身分証のためです。首都に行ったら他にも選択肢が出てくるでしょうから、これから自分が何をしたいのかゆっくりと考えていくといいでしょう」
今回の遠征で乱戦の中Aランクの魔獣が狩れたこともあり、冒険者として一定の強さがあり、稼げることを証明できた。
数年集中して稼げば、残りの人生は平民の中でも裕福でゆとりがある生活を送れるらしい。
説明してくれるじいじには悪いが、そもそも平民の生活がどういうものかよく知らない。
10歳までいた村の様子を思い出すと前世に比べて不便なことも多いように思うし、じいじのチートアイテムがないと今の快適な生活ができないと思う。
急いで決めることじゃないって言ってくれているし、ちょっとだけ頭の片隅に置いておくくらいにしておこう。
早速ギルドが手配した馬車に乗り込む。搬送する人は別室のように仕切られているので、顔を合わせる必要はないみたい。完全個室になっているから見張りもいらないらしい。
御者はラウルさんが務めるようだ。
馬の乗り方は教わったけど、馬車の経験はないからこの遠征の間に教えてもらったほうがいいかな。
「首都までの道のりで宿を使うのはリーヴォルとキオッシャの街になるが模擬戦はどこでする?ギルドの訓練場を使ってもいいが目立つだろう?」
エイルさんからの問いかけに頷く。
狭い場所で訓練するのは構わないけど、目立つのは遠慮したい。
周りに被害を出さないように手加減するにしても最初からできるとは限らないから、訓練場を破壊して弁償したくない。
「対戦する内容によりますが、模擬戦はできれば最寄りの森の中がいいかと思います」
木なら万が一に破壊しても弁償しないでいいし、障害物にもなる。
あまり破壊しすぎたら森の魔獣を挑発したり、街の冒険者の迷惑になるから気を付けないといけないけど。
「それがいいな!冒険者とはいえ、自分の技術をそう簡単に他の冒険者に見られたくないし。あんたらもそうだろう?」
ラウルさんの言うことは最もだ。自分が磨いた技術を盗まれるのは嫌だろう。
なら最寄りの森で模擬戦を行うってことで。
「リサくん、新しいことを試す時も気を付けるんだよ?君は昨日の魔装技のようにすぐできてしまうこともあるようだし、見つかったらきっと騒ぎになる」
エイルさんは顔合わせしたときに私がやった行動について注意してくれた。
あのときは思いついたことをすぐ実践してしまった。後から考えると確かに迂闊だったな。
「ありがとうございます。次からは気を付けます」
「敬語は不要だよ。同じ冒険者だし、変なやつだとそれを理由に難癖つけてくる」
「わかった。同じ冒険者でも理不尽な人っているんだね」
「どこにでも変な奴はいるさ。面倒だけど、さらに面倒な事態を避けるためには仕方ないさ」
苦笑いを浮かべるエイルさんをみると苦労したことが伺える。
エイルさんは好青年っぽいし、パーティーメンバーには女性が3人いる。さらにCランクだからお金を稼げる能力もある。
Cランクに上がれず燻っていそうなEやDランクの冒険者から嫉妬されていそう。
「じゃあ、あまりエイルさんに近づかないほうがいいかな」
「なんでそうなったの?!俺が何かしたかい?!」
「いや〜嫉妬の煽りを受けそうだと思って」
「依頼だから大丈夫さ!流石にそんなことないよ!」
大慌てで否定するエイルさんは気づいていないが、周りにいるメンバーは目を逸らしたり、小さく首を横に振っている。
本人が無自覚という、質が悪いパターンか。
そう考えていると、シャロンさんがスススっと近づいて耳元で囁かれた。
「一緒に依頼するなら、離れて行動するなんて無理よ。やっかみはないわけでないけど、逆にどこにでも頭のおかしい人はいるし、そんな奴のために自分やりたいことができなくなるのは嫌でしょう?」
「…確かに」
自分の好きなことをするために冒険者になったんだから、遠慮しすぎるのもおかしいよね。
まあ、変な嫉妬で絡んでくるような奴なんて無視すればいいか。
「エイルさん、では程々にお願いします」
「程々って…まあ避けられないならありがたいけど」
程々と言ったのはいうのは、ちょっとリンダさんからの視線が怪しかったからだ。
大丈夫です!エイルさんはもちろん、私に恋愛感情なんてありません!という気持ちを込めてリンダさんに視線を向けて頷いてみる。
「そういえば、どれくらい進んだらお昼ごはんにします?初日だから調理不要のご飯を準備したけど?」
「お昼ごはん?あるの?!」
シエラさんが立ち上がると目をキラキラさせながら手を握ってきた。
周りの人たちもなぜか驚いた表情をしている。おや??
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