38 打ち合わせ
翌日は打ち合わせのためギルドに赴いた。
緋色の獅子のメンバーも、昨日のあまり良くなかった態度から緩和していた。
どちらかというとちょっと怖がられている感じがするのは気のせいじゃないよね。
「…すまない。昨日のことが尾を引いているようで、悪気はないのだが」
「私もじいじも気にしていないので他の冒険者と接するように対応してもらえたらそれでいいです!」
恐縮した感じのエイルさんに食い気味に返答する。
ギクシャクした状態で合同依頼なんて受けれないからね!
それを聞いて安心したのか、空気が和らいだ。
「なら良かった。改めて緋色の獅子のリーダーをしている剣士のエイルだ」
「昨日は生意気だなんて言ってごめんね。斥候のリンダよ」
「見ての通り盾使いのラウルだ。よろしくな!」
「魔術師のシャロン。昨日は叫んだりと、みっともないところを見せたわね。道中できれば魔法について議論できれば嬉しいわ」
「ちょっとズルい!私も魔装技について教えて欲しい!槍使いのシエラだよ!よろしく!」
一転してじいじへのアピール合戦が始まった。じいじに学びたいという気持ちはとってもわかるけど。
「じいじの講師料は高いですよ!」
「えー!ちょっと教えてもらうだけじゃん!いいじゃん!」
やっぱりタダで教えてもらおうと企んでいた!
そうはいくか!
「私が知っている中でじいじは最強です!長い時間かけて磨いたその技術をタダで教わりたいなんて許しませんよ!自分だって新人がタダで教えて!って言ってきたらすぐ教えてあげますか?しないでしょう!それを他人に求めるなんて厚かましいですよ!」
一切口を挟むことを許さず一気にまくし立てる!
反論することすら烏滸がましい!
「わ、かったです…」
口元を引きつらせながらシエラさんは納得してくれた。
理解が得られたようで何よりです。
ムフーと満足した笑みを浮かべる。
「…すっごい勢いだったけど、この子大丈夫なの?」
「少々損得に敏感になっているようですが、まあ搾取されるよりはマシでしょうから」
じいじとシャロンさんがそんな会話をしているのにも気づいていなかった。
*
「で、打ち合わせってことだけど、具体的に何をするの?ギルマスって必要なの?」
打ち合わせの場所にギルドマスターがいたので気になって聞いてみた。
合同依頼の度にギルドマスター同席していたら、体が足りないんじゃないかと思うけど?
「お前たちは合同依頼は初めてだったからな、今回限りだ。…放っておいて何か問題が発生しても困るからな」
最後にボソッと呟いた言葉は聞こえなかったけど、まあギルマスが大丈夫ならいいんだけどね。
「ルートは昨日話した通りだ。その他移送中のルールを決めてくれ」
「食事や休憩の準備は各自で行うのがいいでしょう。また戦闘に関しても自分で対処し、討伐した魔獣は倒した者がもらうでいいでしょう」
「ほとんど一緒に行くだけの状態ね。こういうときはランクの上が討伐でランク下が食事や雑用を行うことが多いのだけど」
一般的にはランクが下のパーティは守ってもらう代わりに雑用をやるっていう慣例なのはわかるけど、それをこちらに求められても困る。
「討伐は自分たちでできるから雑用を請け負う理由はないよ。じいじのアイテムボックスをタダで使おうとか思ってないよね?」
「いやいや!一般的な話で、そうできたらありがたいと思っていただけだ。アイテムボックスがあるとないとじゃ食事の内容がまったく異なるからな」
誤魔化すように言うのは盾使いのラウルさん。
やっぱりタダで使おうと思っていたな!油断も隙もない!
一見常識的に話すけど、鵜呑みにしたら利用されるってこと多いよね、嫌になるわ~
「こちらを利用する気っていうなら、ギルマスには悪いけど合同依頼は解消させてもらうけど?」
「いや!そんなつもりはない!お前さんたちの実力は昨日見せてもらったからわかっている!」
「ラウルは口下手なんだから、余計なこと言わないの!話がややこしくなるでしょう!」
シャロンさんはラウルさんを殴ると申し訳無さそうに頭を下げた。
魔術師って聞いていたけど、結構手がでる人なのかな?
「ごめんなさいね?あくまで一般的な話を教えておこうって思っただけなのよ?冒険者になったばかりで、まだ経験が少ないって聞いたし。一般的にはこういう事が多いってわかっていると誤解や問題も少なくなるでしょう?」
「そう、なの?」
疑心暗鬼になりすぎていたのかな?
不安になってじいじに視線を送るといつもの感情を読ませない微笑みを浮かべている。
これは自分で考えろということかな?
信じるか信じないかはとりあえず置いておいて、アイテムボックスを使いたいのであればお金を取る方法にすれば利用されることはないかな。
ただ相場はよくわからないので、ここは素直にじいじに聞く。
「アイテムボックスを利用するためにかかるお金ってどれくらい?いくら払えば適切かな?」
「この間の遠征や今回の荷物運びの報酬はどうしても高額になります。ですが数日分の食料であれば少額でいいでしょうが、今はお金に困っていませんので、お金以外の報酬を提案してみてはどうでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます