33 輸送依頼

「お前さんたちは依頼を普通に終えるってことができないのか?」

「それについては誤解です!したくてしたことではなく、むしろ巻き込まれやすいだけだです!」


神様からの凡ミス転生から始まった勇者騒動を思えば、自分が巻き込まれやすい運命だと嫌でも気づく。

こうなれば開き直って、周りの人にも伝えておくのがいいだろう!


「だけということではない規模だろう?まあこの街に来て短期間でも色々あったから、今までもそういう経験してきたってことなんだろうな」


ギルドマスターが遠くを見る目になる。それにこの街に来てからした体験をちょっと振り返る。

最初はブラッドベアーの首を落とした。次にゴブリンの群れを討伐して、今回の荷物運びの3つくらいしかないから、そんなたくさんあったみたいな感想は出てこないと思うけど?

疑問が顔に出ていたのか、ギルドマスターは首を振って、なんでもないと返した。


「それよりお話とは?」

「オークションに出す品の輸送ついでに、罪人の護送も手伝ってもらえないかと思ってな」

「罪人…?」


罪人の護送は荷物の輸送ついでに頼むことではない気がするけど。

話を聞くと罪人と言っても盗賊とか殺人などの凶悪犯ではないらしい。

魔の森の奥に勝手に住み着いて研究していたらしい。そして住んでいた際に使った魔獣避けが強すぎたらしく、今回の魔獣の大移動を発生させたらしい。

勝手に住んだことと魔獣の縄張りを荒らしたことは重罪だが、街に直接被害がなかったことや強力な魔獣避けがあるなら首都や大きな街でも活用できることを加味して、罰は軽減されるらしい。

魔獣避けの研究のためにも一度首都に連れて行くことになったらしい。


巻き込まれ体質と開き直ったけど、普通に終われよ的な愚痴を言った人が、変な依頼に巻きこもうとしているのっておかしくない?

どう考えても、普通に首都に着いて護送が終わるとは思えないんだけど。


「ギャレンが持ち込んだ魔獣もあるから、それをじいさんのアイテムボックスに入れて品質を落とさず運んで欲しいんだよ」

「依頼だからもちろん報酬が発生すると思うんだけど、ギルドにメリットあるの?」

「オークション落札価格の5%は手数料としてギルドに入るからな。倒してから腐敗していないAランクの魔獣なら十分に利益は見込めるさ」


そういう事ならと依頼を受けることになった。

基本的には護送は別の冒険者が担当するので、主にオークションに出す荷物運びがメインだ。

護送と輸送を一緒にすることで、戦力を強化して安全に運びたいみたいだけど、その裏でAランクの魔獣を倒せる戦力を期待されている気がする。


「もちろん、報酬の方も弾んでいただけるんですよね?」


じいじもそのことに気づいて、報酬のつり上げを要求しだした。

輸送の依頼はどちらかといえば割安な報酬だ。

アイテムボックス持ちということで追加報酬があるが、それでも魔獣の討伐と比べ命の危険が少ないので報酬額が下がってしまう。

でも今回は護衛も期待されているとわかっているので予め吹っかけておかないと損をする。

輸送中に討伐した魔獣を売ったり、捕縛した盗賊の賞金をもらえたりするけど、もらえるものは最初からもらっておいたほうがいい。


「この輸送依頼が完了したらCランクに昇格でどうだ?」

「そのまま依頼を達成していればいずれ上がるのは確実です。ならばわざわざ報酬を下げる意味はないですよね?」

「だよな」


ギルドマスターも頷くはずないと思いながらも、もしかしたらと思って提案しようだ。

あんまり急にランクが上がっても面倒なのが増えそうだし、Aランク以上は名誉色が強くて縛りがきつそうなので精々BもしくはCランクでいたほうが安定して稼げそうだというのがじいじと私の見解だ。


「じゃあ護衛と考えた場合の金額はこれくらいで」

「護衛経験のない冒険者たちに、この金額はないだろう。発覚したときに不正を疑われるぞ?」

「では護衛代はこのくらいで、残りは輸送の量を増やすことで対応するということで?」


ギルドマスターとじいじで依頼料の話を詰めていく。

口を挟むのもどうかと思うので、首都に行ったら何処に行こうかと出されたお茶をゆっくり飲みながら話が終わるのを待った。


「後は護送する冒険者との顔合わせと…手合わせもしておいたほうがいいでしょう」

「まあ輸送の冒険者だと顔合わせしたら、指示は自分たちがするから従えって言いそうではあるな」


実力を見たことない冒険者からみれば、こちらは若い女と年寄りの2人で頼りないパーティに見えるだろうし、当然か。

Dランクなのもじいじのアイテムボックスの価値があるからと考えるだろうし。


「顔合わせとともにお互いの技量を確認するという建前で集合させるか。ただ、手加減はしてくれよ?」

「1対1の2戦にしましょう。どちらと戦うかは相手に選んでいただいて、…手加減は私は大丈夫だと思いますが?」

「私もできるよ!多分…」


じいじにちらっと目線をもらい、食い気味に言い返したけど、確約はできない。

記憶を取り戻してから戦った相手は、魔王国の人とじいじと魔獣だけ。

魔王国の人もなかなか強かったし、魔獣は命を奪っても問題ないから、手加減する必要がなかった。

じいじは言わずもがな。手加減をして対戦をしたことがないのだ。


「まあ、それも経験ですね。致命傷さえ避ければどうにでもできますから大丈夫ですよ」

「なら大丈夫かな?」

「本当に大丈夫なのか?」


じいじの言葉に安心した私とは逆にギルドマスターは早まったかと不安な表情だけど、じいじが大丈夫っていうなら大丈夫!

2日後に顔合わせと手合わせを行うことになった。


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ストックがなくなってきたため、更新速度落ちそうです。

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