27 夜ご飯
さて次に、森の中で採取した薬草をじいじに確認してもらう。
ヒール草以外にも色々生えていたので片っ端から採取してきた。
鑑定である程度どの薬草でどんな効果があるか知ってはいるけど、ちゃんと調合して使えるようになっておきたい。
材料が不足していてもアイテムボックスにいれておけば問題なし!
じいじがささっと確認して、選びだした薬草を並べる。
「これらを使って作るのは虫除けポーションになります」
「虫除け?町で売っていたものと同じもの?」
町で見た虫除けは草をすり潰したものだったが、その草とは違うし、効果も微妙だったから買わなかったものだ。
テントには結界もあるから寝ている間に虫に刺されるなんてこともないし。
「いえいえ、まがい物とは違います。虫といいますが、虫の魔獣にも効果があるものです」
「そうなんだ!」
確かに魔獣まで効果があるのなら全然違うものだ!
しかも現在は森の中、虫の魔獣が入る確率も高い。あって損のないポーションだ!
「作り方は回復ポーションとさほど変わりません。重要なのは材料の分量と混ぜるタイミングです」
「了解です!最初にする際はすり鉢で少量作成してからがいいかな?」
「初めて作るポーションはそのほうがいいでしょう」
じいじが実演で分量と混ぜるタイミングを見せてくれたので早速実践する。
最初に教わった通り、丁寧に、ゴミなんかが入らないように。
ワークスペースという裏技がある私は他の人より楽に調合しやすい環境なのもあり、虫除けポーションをあっという間に取得した。
量は回復ポーションほどなくとも、樽1つ分調合したので、瓶に数個入れたらあとは樽のままアイテムボックスに収納しておく。
「そろそろ夕飯にしましょうか?」
じいじの提案に頷き、焚き火の周りに土魔法で四角い土盛りを作る。
ちょっと不格好だがテーブルと椅子の代わりだ。
アイテムボックスに屋外用のテーブルと椅子があるのだが、流石に近くに他の人がいる状態で使用したくない。
地べたに座るのも遠慮したい。夜間の寒い時間は体を冷やすし、朝露がついている時間に座ったら服が汚れてしまう。
多少魔力を使うだけなら、この方法で食事したほうがいいに決まっている。
さてさて、今日のご飯は何にするかな~
いっぱい動いたからがっつりしたものが食べたい。
ただ人の目もあるから豪勢な食事はしないほうがいいだろう。
ということで、にんにくがたっぷり入った醤油ソースをかけたトンテキにしよう!
じいじが炊いてくれたホカホカの白いご飯と湯気が立ち込めるトンテキを器に盛り、トンテキ丼の完成!
「肉だけでは栄養バランスが悪いので、スープもつけましょう」
そう言ってじいじはアイテムボックスから野菜たっぷりのスープが入った鍋を取り出すと、焚き火にかけた。
飲み物はシンプルにお水にして、デザートは果物をつければ、夜ご飯の準備はできた。
「いただきます!」
箸を持って食べるところに…。
「ほう、いい匂いだな」
会いたくない人が近づいてきました。
そうです、初日から何かと絡んで来た例のクズです。
「何か御用でしょうか?」
さっとじいじの後ろに回り、そうっとクズの様子を伺う。
いつもなら読めない笑みを浮かべながら穏やかに対応するじいじが、笑みも浮かべず、ものすごい冷たい目をしている。
余程このクズの所業が気に触って仕方ないのだろう。
だがそのクズはそんなことに気づく様子もなく、周囲を見回しテントの近くにあった瓶に目を留めた。
「そこにおいてある瓶はなんだ?」
「虫除けのポーションです」
嫌な予感はしつつも、下手に勘ぐられたくないので素直に答えると、相手は嫌な感じに口角をあげた。
これはもしかしなくても…
「食料もポーションも野営には必要なものだな!献上するとはいい心がけだ」
「献上するつもりは一切ありません」
やっぱりねーと思っている間に、じいじが即座に否定する。
予想通りの展開にため息をつきたくなった。
何を考えてこんなことを言い出すんだろう?冒険者のものは俺のものなの?なにジャイア●精神なの?
理解したいとは思わないけど、このクズの考え方がわからなくてとても不愉快に感じる。
大体今から食べようとしていたのを見ていただろうに、なんで貰えると思っているのやら。しかも献上ってことはタダでってことでしょう?
本当に意味がわからない。
「御用は済みましたね?では自分の野営地へお戻りください」
説得しても無駄だと悟ったじいじが早く帰るように促す。
そうだそうだ!せっかくできたての温かいご飯を食べる予定だったのに、冷めちゃう!
ちらりと視線をテーブルに向けると、テーブルの上で食欲をそそる匂いが湯気とともに漂っている。
美味しく食べるために調理したというのに!糧となったお肉も美味しいうちに食べてほしいと思っていたはずだ…!
それが意味のないやりとりに時間をとられ、徐々に美味しさを減らしている。
「…どうなってもいいんだな?」
下卑た笑いとともに溢れた言葉に、辺りに冷気が満ちていく。
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