26 森の奥に到着
道中はあの役人と離れていることもあり、比較的穏やかな道のりだった。
ただ、森の奥に近づいているので、出てくる魔獣も強くなってきている。
兵士たちも向かってくる魔獣に対応しているが、徐々に討伐が間に合わず、こちらに流れてくる魔獣が出てきた。
《エアーカッター》
ちゃんと戦えるDランクであることをアピールするチャンス!
ここぞとばかりに、流れてきた魔獣を狩り取っていく。
「嬢ちゃん、戦えるんだな」
「こう見えてもDランクですからね!」
呆気に取られて洩れた一言に、にっこり元気に返した。
「ちょっと安心したぜ。また討ち逃した時はよろしくな!」
「こっちで狩った魔獣の素材はこちらが貰うからね!」
「ははは、そりゃ当たり前だぜ!」
初日では嫌がる素振りを見せていた兵士さんたちも笑顔で返してくれた。
これで戦えない冒険者の汚名返上かな?
その後も時おり襲ってくる魔獣を狩りながら、拠点となる森の奥近くへ到着した。
指定の場所に預かっていた荷物を渡すと、調査が終わるまで一時的に荷物の任務はお休みだ。
予定では2日くらいはフリーの予定だったはず。何か問題が発生したら1日延長するかもしれないけど。
作ってきた料理も少なくなってきているし、さっき手にいれた魔獣の解体もしたいし、道中の見つけた薬草の採取もしておきたいな~
急ぎじゃないけど、できる時にできることはしておきたい!
「まずは拠点を作りましょう?」
「っはいぃ!」
色々考えていたことを見透かすようにじいじから声をかけられる。
やるべき事をしてから考えましょうね?と副音声が聞こえて、背筋が伸びた。
そうだよね!寝る場所というか安全地帯の確保が最優先ですよね!
夜営に適している拓けた場所は領軍が押さえているから、そこから離れた場所に移動する。
快適な夜営をするためには人目があっては憚れる。
この辺りの魔獣であれば、持っているテントの結界で防げるから離れても問題ないとじいじ談。
木に覆われた奥の木を3本ほど土魔法で掘り起こしてすぐさまアイテムボックスに収納する。
以前夜営をした際は木を切り倒し、切り株を掘り起こしていたんだけど、それだけと森の中に謎の平地ができてしまい、生態に変な影響が出る可能性があるとじいじに、大・変・怒られました。
退去する時に再度植え直せば、さほど影響もないだろうということでこの方法がベストらしい。
もっとも人目につかないときだけ限定だけど。
手慣れた作業なので、簡単に野営地の完成です。
「じゃあ、日が高い内に薬草を摘んでこようかな?」
「作業を分担いたしましょう。リサ様が薬草を採っている間は解体はしておきましょう」
「了解!」
じいじに収納しておいた魔獣を渡し、自分に隠行魔法をかける。
万が一にも森に引き返している姿を見られたら色々面倒そうだし。
さっさと目印をつけておいた薬草を手早く摘んでいく。ついでに見つけたキノコや木の実なども。
魔獣や人に見つからず、でも丁寧に正確に採取するのは、集中力を使う。
私から提案したけど、これも修行の一環だったりするんだろうか…!
恐るべきじいじの手腕…!
疲労困憊で野営地に戻ってから、そう思った。
まあ気分を変えて、ご飯作りに励みましょう。
美味しいご飯のことを考えれば調理の手間なんて微々たるもの!
今日使うのは猪っぽいボア系魔獣です。
ステーキやカツに使える厚みのある切り身から、しゃぶしゃぶや肉巻きおにぎりに使える薄切り肉まで色々なバリエーションで解体されたお肉が、お肉が、並んでいます!
さすがじいじはわかっていらっしゃる!
さて何から作ろうかな~
まずは下味をつけて!
味噌漬けに、しょうが焼きに、ステーキに、カツに、ポークチャップに。厚切り肉と薄切り肉の両方を準備して。
ネギ塩焼きや酢豚も準備したいけど、流石に手が回らないのでまた今度ということで。
このまま一気に全部調理したい…アイテムボックスにいれておけば冷めることもないけど。
調理しないといけない時もあるかもしれないから、断腸の思いで半分…の半分を、下拵え済みの肉として収納する。
残りは時間があるこの場で料理だ!
小型システムキッチンとワークスペースのおかげで匂いも気にせず調理可能!
どうやら思っていた以上にストレスが溜まっていたみたいで、全て発散すると言わんばかりに一気に揚げて、焼きまくった。
あぁ!早くホカホカ白ご飯と一緒に食べたい…!
垂れそうになるよだれを押さえて、出来上がったものからすぐアイテムボックスに入れていく。
私が調理をしている間、じいじには消費気味であった白米を炊いてもらっている。
お肉だけでは栄養が偏るので、森で採取したキノコを入れた味噌汁も作って、今日の晩御飯の準備は完了!
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