23 野営地
休憩を終え、再び森の奥へと進んでいく。
例の人とは顔を合わせないように避け、極力距離を取るようにしていた。
会った途端また何を言われるかわかったもんじゃない。
こちらが正しくても、文句を言われ続けていればこちらがイライラしちゃう。そんなものに時間も感情も囚われるなんて嫌だし。
絡まれる可能性からじいじともあまり話ができず無言のまま進んでいく。
ただ歩くだけではもったいないので、じいじから言われていた千里眼と鑑定スキルで辺りに薬草や素材がないか確認していく。
見つけたものは後から採取しよう。
本当は今すぐ採取したいけど戦力外に思われている状況で勝手に一人で歩くと印象が悪くなるから我慢。
同時に探知スキルを常時発動させて、わかる範囲の魔獣の動きを見ておく。
じいじから、3種類のスキルを効率よく発動させるいい訓練になるからとのお達しだ。
予想していたが、森の奥でも魔獣の種類に変化が出てきているようだ。
小型の魔獣から大型に、討伐ランクも上がってきている。資料にあった生息地域よりも更に上のランクに。
やっぱりちょっとずつ生息ランクがズレている。
部隊の人に探知スキルを持っている人がいれば、現状の問題を把握できるんだろうけど、どうなんだろう。
私が伝えても信じてもらえないだろうし、自分のスキルをわざわざ言う必要もないか。
念のため、ギルドでもらった森の地図に魔獣の種類とランクをメモしておく。
周りからは地図を出して位置を確認しているように見えるし、万が一冒険者ギルドから問い合わせがあっても、この地図を渡せばスムーズに情報の受け渡しができるでしょう。
そうこうしている内に宿泊地に到着。
じいじが荷物を出している間に、他の冒険者たちには「ちょっとお花摘みに〜」と断りを入れ、例の人に見つからないように、こっそりさっき確認した素材を採取しに行く。
ほどほど森の奥だから、手付かずのまま豊富に繁っていた。大量の薬草とキノコなどの食料をゲット!
これは依頼が終わってから売却なり食べたりするからアイテムボックスに収納しておく。
またこっそり宿泊地に戻ると次は自分のテントの準備だ。
場所は兵士たちが拠点としている場所からちょっと離れた大木の根本にしておく。近くにいて難癖つけられたくないからね。
見回役の冒険者にはこちらの都合で離れた場所に設営するので、魔獣などの警戒は自分でするから気にしなくていいことを伝えてある。
辺りを見回して人目がないことを確認し、素早くテントを取り出して組み立てる。
ワンタッチで組み上がるテントなので、見つかると絶対目立つことになるし、例の嫌な人に見つかれば最悪取り上げられる、なんてこともあるかもしれない!
トラブルの原因になりそうなことは極力避けるように心掛けて。
わざわざ心労を増やすことはない。
いつもの夜営なら晩御飯作りをするのだが、森の奥なので火元は最小限にしろと言われている。料理なんて論外らしい。
ご飯の匂いと火の明かりで魔獣に気付かれやすいからだ。
だからといって温かいご飯を諦めるわけがない!
私にはアイテムボックスという便利なスキルがあるんだから!
こうなることを予想して温かいご飯をアイテムボックスに大量に入れておいたのだ。
テントの中ならアイテムボックスを使いたい放題で、周りの目も気にしないでいいから温かいご飯も食べ放題!
お昼は手軽なサンドイッチだったから、がっつり唐揚げにしようかな。白米に温かい味噌汁もつけて、日中の鬱陶しさを払拭してしまおう。
そう考えるだけで機嫌が上がる。テーブルを出してご飯を盛り付けようと思っていたら。
「すまない。明日のことについて確認したいことがあるのだが、出てきてもらっていいだろうか?」
外から声をかけられた。
くっそう、出鼻をくじかれた…。
でも聞かなければいけないことなので、さっき出したご飯をアイテムボックスに収納した。
渋々テントから出て導かれるまま冒険者達が集まっている宿泊地の中央へ行く。
「明日は日の出と共に出発予定となる。出発する30分前には一度鐘を鳴らす。その間に準備を済ませておいてくれ」
鐘で時間を知らせて足並みを揃えるようだ。
一人でも遅れると遠征全体が遅れてしまうから、徹底されるのは当然だね。
だから、冒険者を集めて話をしたのかもしれない。
一応この世界にも時計はあるのだが魔道具なのだ。さらに内部が細やかな部品を多用している精密な機械でもある。そのため高価で、市民が持てるほど普及していない。
…まあじいじは時計を普通に持っていたけど。それが普通じゃないって知ったときはビックリしたし、慌てたな~
うんうん、頷いて聞いていると、ガキンッと甲高い衝突音が響いた。それも一回じゃなく何度も聞こえてくる。
聞こえてきた方向が私たちのテントがある方のような気がするんだけど、まさかね…。
宿泊地に近すぎることもあり、一部の見張りを残して、集まった冒険者たちで音が聞こえた方へ向かった。
「…何をされているんですか?」
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