20 遠征依頼

「それに報告してもらった通り、イビルベアーが出る可能性があるなら、それを討伐した貴殿方に参加して欲しい」


イビルベアーの事をじいじは忘れずちゃんと報告していたようだ。

少し丁寧な言葉遣いになったギルドマスターの態度に事の重さを感じる。

報酬次第では参加してもいいかと思うのだが、じいじはどうだろう。


「報酬や出発日など詳しい条件は?」


詳しい内容を聞かないで承諾することはできない。

問えば、報酬は50万G、出発は明後日の早朝、調査状況によるが調査期間は1週間ほど見込んでいるとのこと。


1週間で50万G。前世感覚だと約500万円!

高ランク向けの依頼にしては少ない気がするが、依頼しているのがDランクパーティーだからこの金額なのかもしれない。

でも狩った素材は各自の報酬にしていいと言うところに魅力がある。高ランクパーティーを集める報酬の一つかも。

稀少な魔獣や薬草が生息している森の奥に大人数で入れば安全な上、一攫千金の可能性がある。

冒険者らしいっていえばらしいかな。


「遠征の行き帰りの荷物を預かって頂けるなら、追加で10万Gだ」


おぉ!アイテムボックスだけと見れば破格の金額だ。

これは私もアイテムボックスを使えると公表すべきか?

じいじと合わせれば20万G追加になる!


「持っていく量はどの程度を考えていらっしゃいますか?それを決めていただかないと…森の中で揉めるのは遠慮したいのですが?」


…おっと、まだ確認すべきことがあった。

じいじが、”わざわざ”尋ねるのだから問題になりやすいんだろうな。

金額に釣られて受けたら報酬以上に働かせられたり、自分が討伐した魔獣を持って帰れなかったりするのかも。


「領主兵の荷台2台分はどうだろう?行きはテントなどの重い荷物1台分。帰りは討伐した魔獣分が1台増える形だ」

「容量の判断はこちらでいいですね?領主兵任せではこちらの荷を捨てさせる輩がいるとも限りませんし」


こっちが雇われた冒険者だから、自分の指示には従うべきだとか人を下に見てくる奴が兵の中にいるのかな?

確かに念を押しておかないと、無理な要求を突き付けてきそうだな。


「あぁ、隊長殿に確約してもらう」


容量と判断の決裁権は決まった。

あと確認することは。


「討伐について指示はありますか?夜営の見張りは?食事や休憩時間の有無は?」


矢継ぎ早にじいじが確認していく。

他の冒険者だけじゃなく、領主兵と合同ということで自由にできる事は少なくなるのだろう。

前もって確認しておかないとそれは契約に含まれている、いないと現地でいさかいが起こることもありそうだ。とても面倒。


じいじが確認した内容をまとめると、基本領主兵と一緒に行動する荷物運びがメイン。討伐や見張りは他の冒険者達がすると。


「助けを求められなければ、討伐は参加しないほうがいい?」

「嬢ちゃん直球だな。俺が認めたとはいえ、冒険者歴が浅いDランクが参加するのも渋られたからな、そっちがいいだろう」

「イビルベアーのこと知っているのは誰?」

「隊長殿と副隊長だな。あまり信じていないようだったがな」


Dランクがイビルベアーを倒したと言われて、すぐ信じる人はいないよね。

もし必要ならばその二人に相談すればいいってことだね、わかった。


内容も問題ないことから、遠征に参加することにして冒険者ギルドを出た。自分達の遠征の準備を行う。

道具はこの間の見直しで揃えてるから、採取するときに必要になるかもしれない樽や籠を追加で購入する。

料理する時間がないことも考えて、手掴みでも食べられるおにぎりやサンドイッチ、串焼きも準備しておく。

森の奥は寒いかも知れないから温かい野菜スープも補充した。


それらを収納しようと思ったけど…。


「ギルドでわざわざ荷物の容量決めさせてたのって普通なの?」

「アイテムボックスは個人差があります。容量も時間経過もですね」


私もじいじも容量無制限で時間経過もなかったので、アイテムボックスはそういうものだと思っていたが違ったようだ。

じいじはブラックベアーを収納していたから容量が大きいと知られていたんだろう。Dランクに頼むんだから容量が大きい使い手が少ないんだろうな。

容量無制限なんて一般的でないからギルドマスターに持ち運びする容量を決めさせた訳だ。


改めてじいじを基準に考えてはいけないと改めて思いました…。


「私達の遠征用品は私の”マジックバッグ”に入れておくってことでいいかな?」

「それがいいでしょう。少しでも争いの火種になりそうなものは避けておきたいですから」


私がアイテムボックスを持っていることを悟らせないのは当初と変わらず。更に今回じいじのアイテムボックスがチートだということも悟らせてはいけなくなりました。

今回は領主兵もいるから目をつけられてはいけない。


知られたら「専属に!」なんて言われる姿が思い浮かぶ。

自由に旅したくて冒険者になったのに、捕まってたまるもんですか!

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