19 薬草の成長
魔法水と川の水との違いはなんだろうか?それぞれを鑑定してみると魔力の含有量なるものがあった。
鑑定によると川の水に比べ魔法水は4倍の含有量になっている。魔力の含有量が肝かな?
念のため街の水について鑑定をすると魔力はほぼ含まれていなかった。
魔獣の森の川だから魔力が含まれていたのだろうか?
もしかして今まで栽培が確立されていなかったのは、与えていた水に魔力が含まれていなかったためかな?
「じいじ、ヒール草の栽培研究がどんな内容だったか知っている?」
「成長スピードがとても遅く、成長しても花や種ができず枯れていくというものだったと思いますが」
私のヒール草は成長している。感覚的な判断だけど成長スピードが遅いようには感じられないからやっぱり魔力の含有量が栽培に大きな影響を与えている…?
でもそれだと水をあげていないヒール草も育っている理由にはならないか。
水の違いについて、結論を出すにはもう少し検証が必要のようだ。
では採取したときから思っていたことを確認したいと思います。
「何をなさるんですか?」
「ちょっと確認したいことがあって」
新しく生えてきた芽の下を掘り返し始めたことに、じいじはちょっと驚いた声をあげた。
じいじに答えながらも、芽や根を傷つけないように、目を離さずそっと土を避けていく。
「根が横に?」
「あぁ~やっぱりか」
種を植えていないのに新しい芽が出たってことで予想していたが、掘り返した根の状態をみて確信した。
新しく出てきた新芽と採取して植えたヒール草の根は繋がっている。
このヒール草は種子ではなく地下茎で増えていく植物だ。
これは前の世界で知っていたから理解できたが、まだこの世界では地下茎のことを知らなかったりするんだろうか?
「種がない植物とか知られている?」
「種がなければ栽培することはできないので、知られていないと思いますよ」
…そっか、知られていないか~
農家の人が栽培しているものは種があるものばかりだから、研究職の人もまさか根っこから増えていく植物があるなんて思い付かないよね。
私もたまたま庭の雑草除去の手伝いで覚えていただけだし。
地下茎があれば、ヒール草の群生すべて採取しても根を取らなければ枯渇することはないだろう。
そこだけでもわかってひと安心だ。
まあ枯れない保証はないから栽培研究はするけど。
成長に光が必要なのはわかったから、全部のプランターを日向に移動させよう。
ワーキングスペースを日が当たる部屋の角に設置し、ワーキングスペースのドアとその周辺の壁をすべて取り払う。
全面的に日が当たるところへ8個全てのプランターを並べる。
後は宿の人に見えないように不可視の魔法をかけておけば大丈夫!
さて、次はどうするか。
水については街の水を加えて、4種類を比較していくことにしよう。今は成長していても、1か月後とか枯れているかもしれないし、もう少し様子を見て、魔力の含有量の有無を決めよう。
*
それから1週間。
採取・討伐したり、剣や魔法の練習をしたり、料理やポーションを作ったり、雑貨を追加購入したりを繰り返して過ごした。
もちろん、冒険者ギルドの依頼も2つほど受けて達成した。あんまり数を受けすぎると目立つし、余計なトラブルには見舞われたくはないから。
あと武器屋に行って、ちゃんと剣の代金も渡してきた。
店を訪れたときは私が剣を返却すると思っていたらしく、お金を出すと驚いていた。
どうやって使うことができたのか、しつこく聞いてきたが、にっこり笑って話を流した。
今さら使い方を聞いてどうするのか。
もうあの剣は私のものなので、返しませんよ。それなら聞いても無駄だから話す必要もないもんね。
さっさとお金を払ってお店を出ました。
今日は冒険者ギルドで依頼を受けようかとやってきたのですが、何故かギルドマスターに捕まりました。
「で、ドンナゴヨウデショウカ?」
「何で平坦な声になってんだ?」
「呼ばれた理由に心当たりがないのと、依頼を受けようとしていた気分を害されまして…」
こちらの気分の問題だが、冒険者ってそういうもんでしょう~とスネぎみに言ってみる。
押し問答して時間を無駄にする気はないので、改めて尋ねる。
「それで忙しいはずのギルドマスターがどうしたんですか?」
「森の奥への調査日が決まってな、そのメンバーに入ってもらえないかと」
「高ランクパーティーと領主兵で行うのではなかったのですか?」
ゴブリンの団体を殲滅したとき、そんな話をしていたはずだ。
私たちはDランクパーティーで高ランクパーティーには該当しない。じいじが疑問に思うのは当然だ。
「まず集まった冒険者の中で魔法使いが少ない。そして折角森の奥に行くなら素材を余すことなく持って帰ってきたいという思惑からだ」
ブラックベアーを風魔法で倒した実力のある私で魔法使いを補充し、アイテムボックス持ちであることを公表しているじいじに荷物持ちをして欲しいという、遠慮のない言葉だった。
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