18 臭い問題
一番の問題は臭いだけど、消臭剤を作っても薬や食品には使えない。いや、作り方もわからないけど。
薬といえば前の世界では子供用の服薬ゼリーがあったよね。苦い薬の味を感じないようにって飲んでいたから、そんな感じに臭いも閉じ込めておけないかな。
薬を包むっていうとオブラートがあった。あれはデンプンで作られているはずだから、デンプン液に絡めて乾燥させたら臭いも封じ込めるかもしれない!
「まずデンプンを作ります!」
「デンプン…ですか?」
「食べられる根っこをすり潰して、水に置いておけばできたはず!」
考えても始まらないから、とりあえずすり潰す作業から。
ジャガーイモというじゃがいもによく似た根菜を取り出す。
…このネーミングはどう考えたって転生者か転移者が付けたんでしょうね。もうちょっと考えてから付けて欲しいわ、記憶を取り戻してから改めて現物みた時どれだけ混乱したことか。
そんなことを思い出しながら、風魔法で細かくしていく。
細かく刻んだ方が細胞が壊れてデンプンが出やすいんだっけ。
篩いがないので、目の細かい布で粉と繊維質を分け、次に水に混ぜて撹拌し、木箱に入れて粉が沈殿するのを待つ。
本来数十時間かかるところだが、風魔法と時間魔法で時間を短縮。沈殿した上澄みをまた水と撹拌して沈殿させを繰り返す。
「これでデンプンは取り出せたはず…!」
ここから丸薬にどう生かすかだ。
薄い四角の所謂オブラート状にして丸薬を包んでみる。
持って嗅いでみると少しは軽減されたみたい。
「…うぐっ!?」
口に入れた瞬間、口内に物凄い臭いが拡散した。
オブラートは薄いからすぐ溶けてなくなるようだ。これではダメだ。
次にデンプン液に直接潜らせて、口に入れた瞬間の臭いを防ぐための層を厚くしてみたらどうだろう。
粘りがあるから、かなりの厚い層になった。
臭いは完全になくなったみたいで安心だ。口内にいれてもちゃんと溶けきる前に喉を通るから大丈夫。
これで完成ー!と思ったがじいじからストップがかかった。
「ちゃんと鑑定してみましょう?」
言われてできあがった丸薬を鑑定してみると、水分が丸薬に染み込んで丸薬の効能が落ちてしまっていた。
効能が落ちてはそもそも意味がないので、別の方法を考えることに。
「デンプンにこだわるからダメなのかな。口の中で溶けにくいって何?油とかで包んだ方がいい?でも油も水分があるか…」
1枚のオブラートで少し効果があったのだから、重ねたら完全に臭いを抑えることができるかもしれない。
薄いオブラートで包んでは臭いを確かめてを繰り返していく。
薄いオブラートを10枚ほど重ねると臭いが漏れることなく、喉を通っていくことができた。
けれど1つ作る度に10枚重ねていく?
それだととても手間がかかる。デンプンを作るだけでもかなり手間がかかっているから、これ以上面倒なことをしたくないしな~
10枚分の厚いオブラートを作っても丸薬を包むことはできない。
どうしたものかと、オブラートとデンプン液をちらちら見て考える。
…オブラートと潜らせる両方してみるか。
まずオブラートを1枚丸薬に包む、そしてデンプン液に直接潜らせて、直ぐ乾燥させる。
乾燥されるまでのデンプン液の水分は先にオブラートで塞き止められ、丸薬に水分が届くことはなかったので…。
「できたんじゃなーい!!」
「ほほほ、そのようですね」
だよね!臭いもないし、鑑定しても丸薬の効能は落ちていない。
期待を胸に口に入れても、臭いが爆発することはない!
これで増血剤が必要になってもスムーズに飲むことができる!
まずいお薬とはおさらばできる!
そこでハッと気づいた。
「他にも臭いがきついもしくは苦い丸薬ってある?」
「ごさいますよ。その方法なら他の丸薬にも応用できるでしょう」
増血剤のためにやったことだけど、他の丸薬にも使えるなんてラッキー。他の丸薬を作った時か買った時にこの方法を試して飲みやすくしておこう。
作っておいたデンプン液の半分はオブラートにしておき、丸薬をすぐ加工できる状態にしてアイテムボックスに収納した。
一段落ついたので、今日はここまでにして街に戻ることにした。
宿に戻る前に、原材料となるジャガーイモも多めに購入するのを忘れない。デンプンは食品や糊なんかにも活用できたはずだから、明日辺りにでもデンプン液の増産をできるだけしておこう。
使えるものが色々できそうで、とても楽しみだ。
宿に戻り、食事などを済ませ、《ワーキングルーム》内のヒール草の栽培状況の確認を行うことにした。
ざっと見た感じ、どのプランターも草原や森の中で見た時より青々しくとても元気に見える。
いくつかは新しい葉っぱの芽がでている。土に種が混じっていたのかな?
水をあげていないヒール草も元気がいいってどういうことだろう?普通萎れていると思うんだけど。
鑑定して各プランターの状況を比べると成長速度の違いがあった。成長速度が早い順に、
日向と魔法水>日陰と魔法水>日向と川の水>日陰と川の水>日向で水なし>日陰で水なし
の順番だった。
日向がいい理由は前の世界で学んだ光合成にあると思っている。
数日だけど光を浴びることで、自らの栄養を作っている可能性が高くなった。同じ理由で水も必要みたいだ。
ただ、川の水より魔法水の方が成長が早い。
栽培を成功させるヒントはこの点にありそうだ。
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