17 素材の下ごしらえ

素材も大分集まってきたので、一旦お昼にすることに。

丁度人目につかない洞窟にいることだからと、システムキッチンを取り出してその場で料理をすることになった。

宿のご飯も美味しいけど、大量生産だから味も素材も手が込んでいるものは少ない。


さっき倒したレッドフォルクスがあるし、唐揚げにしようかな。

定番の醤油に、塩に、ピリ辛味に漬け込んでいく。

漬けている間に味変用のトッピングを準備しよう。

こちらも定番のレモン擬きの果実に、黒胡椒、ネギ塩擬き、大根下ろし擬きを準備。

唐揚げは別の料理、例えば野菜と炒めて甘酢餡かけてもいいし、チキン南蛮擬きとか、色々にアレンジできるから沢山作ろうと思ったけど、狩ってきたレッドフォルクスだけじゃ足りないかな?


「ほほほ、心配はいりません。」


そう言ったじいじの足元にはレッドフォルクスの小山が置いてあった。調味料の仕込みをしている間に狩ってきたようです。

そのスピードと先を見通す目は流石です。

二人でささっと捌き、漬け込んでは揚げ、それぞれのアイテムボックスに収納してく。

唐揚げだけじゃ栄養が偏るので、お野菜たっぷりの味噌汁を忘れず作る。粗方作り終わったところで、昼食です。


「揚げたての唐揚げはやっぱり美味しいね~」

「この野菜のすり下ろしと食べるとさっぱり食べられますね」


カリッの後にプリっとした食感のハーモニー。口の中にジュワーっと広がるお肉の脂が美味しい。白米とももちろん合うし、大根おろし擬きで何個でもおかわりできる。

お味噌汁もこくを出すため野菜だけじゃなく、バブルボアの脂も足してあるのでこちらも白米と合う。

行儀が悪いけど、〆は味噌汁でおじやにする。



満腹大満足の昼食を終えて、午後からは取った素材の下拵えを行うことになった。

薬草は作るポーションによって様々な処理があるが、今回採取した薬草は大抵が乾燥させることが重要だった。

通常は室内の窓辺に干して乾燥させるのだが、魔法のごり押しでポーションを作るじいじのレシピだから、乾燥も当然魔法で一気に大量に処理してしまう。

ドライヤーをイメージした風魔法とエイジングと呼ばれる時空間魔法の応用で乾燥させていく。

この時、注意するのは乾燥して脆くなった花弁が、温風で飛んでしまわないようにすることだ。

効能のある部位を損なっては大変だ。


薬草の下ごしらえが終われば次は魔獣だ。

ギルドに依頼しようかとしていたイビルベアーの解体も行うことになった。

実際の薬師は魔獣の解体をしないのだが、品質維持のため自分で解体できるようになっておいたほうがいいらしい。

あとはまあ、美味しい肉を食べたいアピールをしまくった成果もあると思う。


イビルベアーの血は増血剤に使えるので、まず血抜きを行う。

本来は首を切断して逆さにして血を出すらしいが、巨体でとても時間がかかり、内部の腐食が始まるので全部取り除くことはできず、途中で断念して解体することが一般的だそうだ。結果イビルベアーの増血剤は高価になりやすく、新鮮なら血だけでも売ることができる。


それなら臓器に影響がない限界まで絞りきろうと、切り口から血管の流れに沿って空気の層を送り込み、血管内の気圧をわざと上げていく。

あとは空気が気圧を一定に保とうとする力によって血が出てくるのを待つだけ。


次は臓器を取り出すために血抜きした切り口から体を切り開くが、その際臓器を一切傷つけないように細心の注意を払う。

少し引っ掻いただけでも、腐食が始まり品質が落ちてしまうのだと。慎重にかつ素早く体から臓器を取り出していく。


あと驚いたのが目玉だ。

前の世界のホルマリンのような液に漬け込んでおくことで、丸い水晶のように固まり宝飾として使える。

Aランクのイビルベアーの一体に2個しか取れないため、希少性が高く、貴婦人の間では他の人と差をつけることができるということで争奪戦になるすごい逸品。オークションなどに出品すればそれは高値で競いあってくれるとのこと。

今後何があるかわからないし、貴族対策として持っていて損はない。

お金に困ったら売ればいいけど、今のところは困っていないから切り札的な扱いにしてアイテムボックスに入れておく。


今日は新鮮なイビルベアーの血があるので、それを使った増血剤を学んでいく。

怪我は回復ポーションを使えばいいが、なくなった血は戻らないし、傷口を回復させるために体力も使うから、増血剤には栄養ドリンク的な役割も含まれるようだ。


まず血から水分だけ抜いていく。

本来は鍋に入れ弱火でじっくり水分を飛ばしていくのだが、薬草を乾燥した時と同じように魔法で処理して時短する。

さっき下拵えした薬草2種類と混ぜ合わせ、丸薬にしていく。

乾燥も混ぜるのも練る作業も魔法で時間短縮できるから、魔法様様だ。使えてよかった。


出来上がった丸薬は血の色と臭いがそのままで、更に乾燥した薬草の臭いが重なってとんでもない悪臭だ。

これ効能が良くても飲みたくないし、逆に具合が悪くならないかな?


「効果は抜群ですから、飲まない選択肢がありません」


じいじはきっぱり言うけど、いざ自分が飲むとなったら私は飲みたくない。

作ったのはいいけど、自分が飲めないんじゃ意味なくないかな。

ちょっと飲めるように改良したい。

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