16 訓練

崖下で探知を使用して見るとすぐ近くにいるのに、目視や気配では魔獣がいるとは感じられない。

探知スキルがなかったら、不意打ち食らっていたんだろうな。


周りを見渡すが魔獣が動く気配がない。

攻撃する機会を伺っているのか、それとも…。

そう考えていると、じいじが振り返って苦笑いを浮かべていた。


「この辺りで何か魔獣を狩りましたか?」

「そういえば、シルバーウルフを狩った気がする?」


イビルベアーを狩った後に、時間をかけたくなかったから向かってきた魔獣を片っ端から倒した気がする。

でもこの辺りというより、もう少し離れていたけどな?


「あまり少ない事例なのですが、崖に巣を作る鳥系の魔獣と共生関係にあることが有りまして」


今それを言うということは、この辺りはその少ない事例の共生している魔獣という事ですか?

しかも私がシルバーウルフを倒したことを知ったので、攻撃しないで隠れていると…?


えっ?この場合どうしたらいいの?

隠れているのにわざわざ見つけて倒すの?

でも今回は戦い方を学ぶだけで、その他に目的はないんだよなぁ~


「最初は広い場所が良かったのですが、仕方有りません。洞窟の方に行きましょう」


いつものように相手から来てくれるなら良かったのに。

じいじの後を追って崖の裏に回り込んでいく。すると大人の倍以上の高さがある洞窟の入り口が見えてきた。

探知を使うと、内部に十数体の魔獣の気配があった。


「こっちは大丈夫そうだね?」


洞窟内に入っていくと、中の魔獣の気配が動く。

警戒・敵意・殺意があがっていくのを感じられる。好戦的でとても助かる。

より近づいていくと魔獣の種類もわかるようになってきた。


「ストーントータス?でも群れの長かな?一つだけ違う気配がある?」

「アイアントータスのようですね。洞窟内に金属を多く含んだ所があったのでしょう」


アイアントータスはストーントータスと比べ物にならないくらい強度が高い。戦っている間に戦法を切り替えないと倒せない。救いはトータスは動きが遅いことだ。

岩系の魔獣の討伐訓練には丁度いいだろう。


「いつも通りまず自力で討伐してみてください」


これから未知の魔獣と戦うとき、戦い方がわからないままでは生きてはいけない。だからまず自分が思った通りの戦法が通じるのか確かめて、改善点を洗い出して、経験を積んでいく。


ストーントータスはやっぱり水魔法だろうな。でもアクアカッターだと、洞窟の壁に当たると崩落の可能性が出てくるからそのままは危ない。

逆にアイアントータスは水魔法は効きづらいよな。アクアカッターなら切れるとは思うけど、こちらも崩落の可能性が…。金属なら雷魔法だよね、ノベルでよく見る合わせ技にしてみようか。


《ウォーター》


消防車の放水を複数イメージして、全てのトータスにかけていく。

水で口を塞がれたのか、それだけで数匹のストーントータスが倒れた。ラッキーと思いつつ、反撃されない内にー


《サンダーアロー》


水浸しのところに雷を落とすと、雷が通らない岩系の魔獣も使えるはず。岩系の魔獣は装甲が岩で固められているだけで、臓器は柔らかいことが多いので、そこまで濡らすことができれば大丈夫だと思ったよ!

アイアントータスは金属だから元々雷が通りやすいし、水で地面に電気が逃げることを抑えつつ更に通りやすくなる!


でも放水の影響で足元がびちょびちょになりやすい。泥が跳ねるし、足が泥に捕られる。他の魔獣がいるところだと、隙が生まれ致命傷に繋がることもある。これは改善の必要があるな。


新しい方法を実践するため、別の洞窟へ向かうことになった。

水浸しにせず雷を通す方法か、まったく別の方法か?

すぐ思い付いたのが水浸しにせず雷を通す方法。これは水の派生の氷魔法を使う。

凍り漬けにした上で雷を落とせばいいかと思ったんだけど、試してビックリ!氷魔法だけで倒せてしまった。


この方法でも倒せるが、素材を納品するために氷を溶かさないといけない。それはとても面倒。他の方法を考えている間に、また別の洞窟へ向かう。


「次は剣を使ってみようかな」


最近購入した魔鉱石の剣は魔力で覆うことで切れ味をあげる。キラーアントくらいならあっさり切り落とせたが、ストーントータスは無理だろう。

ならば目元に剣を突き刺してそのまま雷魔法を直接叩き込む方法にしてみた。

周りも魔獣本体も綺麗なまま倒すことができた。

デメリットとしては1体ずつしか倒せないということだ。


「この方法でどうかな?」

「周囲の地形も魔獣の体もきれいですが、効率が悪いですね。トータス系は大丈夫ですが、岩系の魔獣の中には血や内臓系が素材になるものもあります。その際には雷魔法は使用できません」


ストーントータスであれば及第点だが、他の魔獣のことを考えるとまだまだ試行錯誤が必要だという評価でした。

いくら強くても、冒険者としては素材の価値と効率をあげないといけないと改めて感じました。

…ちなみにじいじの倒し方を聞くと


《エアバブル》


魔獣の顔全体を膜で包んで、その中を真空にして仕留めるという方法でした。ようは窒息させるってことだよね。

魔法操作のスキルがあれば、狙った場所に思い通りの魔法を使用できるから、そう難しくないし。

素材の価値も落とさず、上手くいけば一撃で全滅させられる効率の良さ。

さすがじいじ、チートです。

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