14 ポーション作り
じいじが実際に行う方法を横で確認することになったのだが、ごめんなさい、よくわからない。
それもこれも、じいじが高速で作業を進めるため、内容が頭に入ってこない。
順序だけは辛うじてわかるが、作業の意味がわからないまま進む。
じいじが本気出して時間を短縮しようとしていることだけはわかるが。
「じいじ、待って、待って!早すぎ!!わからない!!」
「おや、そうでしたか?」
「あと、作業だけじゃなくてその説明も欲しいです」
「それもそうですね」
私の必死の掛け声にやっと止まってくれたじいじは、改めて最初から作り始めた。
えっと、まず乳鉢にヒール草を入れるが、この時葉先を揃えておく。この後乳棒で潰す際に繊維を断ち切るように潰す必要があるから揃えて一斉に擦り潰す方が効率がいいと。
粗方潰したら水を入れ、ヒール草の液が水に溶け易いように円を描くように更に潰していく。
この時ほんの少し魔力を練り込んで回復効果を高めてやると。
最後に濾し布に出し、水分と削りかすを分けるように絞り出して、出来上がりっと。
「これが一般的な方法です」
「あんまり難しくないようだけど、冒険者は自前で作らないの?」
「私も疑問に思って聞いたことがあるのですが、そもそも製法知らないし、細かく擦り潰す作業と魔力を練り込むのが上手くいかないらしいのです」
ポーションを作りたいなら、基本的に薬師ギルドに登録して、製法を師匠から教わっていくのだとか。でも潰す作業一つとっても細かい作業なので教わって万人が出来るとは限らないとか。
私は薬師ギルドに入っていないけど、製法を聞いて良かったのかな?
「勝手に大量販売しなければ問題ありません。ギルドでも全ての売買を管理している訳ではないので」
野良薬師が個人に販売する分にはさほど問題ないが、店を持つなど大量販売するときはギルドに入っておかないといけない。
まあギルドに登録してない薬師の信用はないから、わざわざ無登録で店を開く人はいないらしい。
「この製法は手で行うので、どうしても品質にバラつきが出たり、大量生産しにくいのです。次に教える方法は精度が高くさらに大量にできますよ」
じいじの説明に頷きながら、何でその方法を薬師はしないんだろうと首を傾げる。
が、その答えはすぐわかった。
「水魔法で大きな球体を作ります。その中に歯車の形を作った結界魔法の間にヒール草を挟んで、水流で一気にかき混ぜます。魔力は水魔法から練り込まれるので、新たに混ぜる必要はありません」
…つまりじいじの時短製薬方法は魔法のごり押し。
一般的にできる方法じゃないね。
魔力が多くないとできないし、魔法属性も結界・水・風の3属性いるし、歯車の形とか水流とかの魔法操作の技術も必要だ。それができる人なら薬師より魔導師になるよね。
ただ、じいじはこっちの方法を学んで欲しいらしく、いかに早く大量に高品質のポーションができるかを力強くアピールしてくる。
乳鉢使ってゴリゴリしてみたかったんだけど、断るという選択肢がないようだ。
気を取り直して、初めてのポーション作りです。
やり方を直で見たので、後は再現するだけのお手軽コースです。
そしてあっという間に出来ました、初級ポーション。
瓶に入れるのも、水球から直接でいいから、本当にじいじが用意していた道具は一切使わず、短時間でできました。
今までのじいじの修行の中でも一番簡単でした。あまりにも簡単すぎたせいか、なんか達成感がありません。
目標を達成できず、試行錯誤するっていう行程がないからだよね。
このままだと楽しくないので、じいじの方法より早く大量に高品質のポーションができないかチャレンジすることにした。
真空の中で圧縮して搾り出すのはどうかな?
ヒール草を凍らせて粉々にするのは?
煮沸とか蒸留をしたらどうなるかな?
じいじに聞くとすぐ答えが返ってきそうなので、聞く前に自分で実験を繰り返した。
色々な方法を思い付くと楽しくて、つい夢中になって試しまくった。そして採取したヒール草が全てなくなって、はっと正気になった。
恐る恐る振り返ると、そこには大樽に入ったポーションがいくつも出来上がっていました。
うわぁ〜やっちまったな…この量どうしよう。
じいじも私も戦闘になっても攻撃を避けるので、ポーションのお世話になることがほとんどない。持っていても宝の持ち腐れ。
売るにしても、薬師ギルドに登録してないからこの量全ては無理。大量じゃなければいいらしいけど、この量を捌くのにどれくらいかかるだろうか。
薬師ギルドに登録する?
でもなぁ、どこで製法を学んだのかとか、この量をどうやって作ったのかとか、騒ぎになるのが目に見えている。
とりあえず見なかったふりして、アイテムボックスの肥やしにしておこう。
アイテムボックスの中なら劣化しないし、きっとそのうち必要になる気がする。
うん、そうしよう。
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