13 薬草栽培
今日は昨日の反省を生かし、冒険者業以外のことをしようと思う。
前から気になっていたヒール草の栽培だ。
ヒール草は回復ポーションの材料なので、冒険者に欠かせない薬草だ。
まだ森の奥に群生しているが、そこも採取し尽くされたらポーションが作れなくなる。
じいじにも確認したが、ヒール草の栽培に成功したという話は聞いたことないそうだ。
個人的に使える分くらいは栽培できるようにして、将来の不安を少しでも取り除いておきたい。
「うまくヒール草の栽培ができたら、ポーションも作ってみたいな」
「初級ポーションであれば、簡単にできますからね。栽培の研究と一緒にポーション作りもしてみますか?」
「じいじはポーションまで作れるんだ?」
「おおよそのことは経験しておりますので、知識はございますよ」
ほほほ、と得意気に語る姿に流石スーパー執事だなと感心します。
この間採取したヒール草はすべて納品したので、再び採取に向かう。
前回の採取地の傍でブラックベアーが出たから警戒していたが、今のところ近くにはいないようだ。
流石に刈り取ったところはまだ成長していなかったが、まだ沢山生えていたから良かった。
栽培用に根をつけたままのヒール草を10本、ポーション用に200本を採取する。
あと育てるには土も必要だから、採取した辺りの土をがっつり取っていく。そして周りの木もいくつか伐採する。
土の違いで栽培速度に違いがあるかもしれないので、ちょっとしかヒール草が生えていなかった草原の土も取っておく。
これでおおまか栽培の準備は整った。
「ポーションを作る道具とか、保存するの瓶とかはいらないかな?」
「器具も瓶もある程度はございます。大量に作ると決めたときにまた買い物に行きましょう。栽培する場所はどうしますか?」
この街に拠点をおくことは考えていない。
まだまだ世界を旅したいからね。だから土地を借りたり、家を買ったりはしない。
そして栽培する場所はー
「《ワーキングルーム》作業はこの中で行おうと思っているの!」
先日創ったこの部屋はアイテムボックスとは違い、時間の経過があるようで、その代わり生きている物も置いておける。
これなら宿暮らしでも、生育状態を確認しながら栽培の研究ができる!
宿の人は勝手に部屋には入らないし、部屋で作業がしたい時は壁にワーキングルームを出して不可視の魔法をかけておけば大丈夫でしょう。
前の世界じゃ植木鉢に石や土を入れて種を植えていたけど、植木鉢はこの世界じゃそう安くはない。失敗する可能性もあるものをホイホイ買いたくないので、自分で準備することにした。
そこで取り出したのは森で伐採してきた大木!
まず風魔法で余計な枝と葉を切り落とし、丸太ができたら半分に切断する。
外皮から5センチ内側を全てくり貫いて、底にさっき切り落とした枝と葉を入れ、その上に持ってきた森の土と草原の土を入れる。
これで合計8個の簡易プランターの完成!
「本来なら次に準備するのは種なんだけど」
採取しているときに気づいたんだけど、このヒール草は種がないかもしれない。
それを確認するためにも、まず栽培させて成長過程をみないとね。
根っこごと持ってきたヒール草をプランターの中央に1本ずつ植えていく。
全部同じに育てても栽培条件はわからないので、色々違いを出してみよう。
まず日当たりが良い悪いで違いはあるのか。
水は必要か、必要なら川の水と魔法で出した水どちらが良いか。
とりあえずこの条件で育ててみよう。
「栽培研究はこれで終いにして、次はポーションかな?」
「そうですね、栽培は一朝一夕ではできませんから」
私が栽培準備で出たゴミを片付けをしている間に、じいじがポンポンとポーション作りに必要なものを出していく。
乳鉢に乳棒、空の水樽、複数のポーションの瓶、布、漏斗…うん、道具からどんな風に作るのか見えた気がする。
「まずは一般的な精製方法からお教えします。それができたら時短の製法を教えますね」
「じいじが言う一般的な方法は本当に一般的なの?」
「何か仰いましたか?」
「イイエ、ナンデモアリマセン」
今までの経験からじいじが一般的に知られている方法を真っ先に教えてくれたことはない。
防具しかり野営道具しかり。前科があるので、疑いの眼差しを向けたのだが、じいじの笑顔に即座に視線をそらして誤魔化した。
「薬の精製は繊細で、ゴミ一つ入ってしまうだけでもできなくなります。本来は専用の部屋で行った方がいいですが、今回はワーキングルームで大丈夫でしょう。もうひとつワーキングルームを出してください」
「広さは同じくらいでいいよね?」
新しく出したワーキングルームに製薬道具を運び込んで、早速始める。
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