9 ランクアップ
「ということで、ゴブリンの団体さん殲滅完了しました。ついでにホーンラビットも納品します」
「おかしい、おかしいだろっ!」
ギルドに討伐報告と納品をしに訪れたのだが、受付で報告したところ再度ギルドマスターに会うことになりました。
現物は受付での報告時に渡して数を確認してもらっています。
なので報告が嘘でないことはわかっているはずなのに、おかしいと連呼するギルドマスターはどうしたらいいのでしょうか。
「ゴブリンの群れを発見した時にはすでに森の入り口でした。ギルドに報告せず討伐したのは申し訳ないですが、街に被害が出るよりいいと思うのですが?」
私もじいじも同じ判断で、それが最良だと思ったのだ。
おかしいと思うならその理由をまず述べて欲しいよ。
「いや、お前さんが言っている事とは違うことだ。お前さん達のランクだ、ランク!」
「昨日登録したばかりだからFランクは当たり前じゃないですか?」
「ハァ」
ギルドマスターは呆れたようにため息をついたが、何がおかしいのかさっぱりだ。
ジト目でギルドマスターに視線を向けると再びため息をつかれた。
「最初からゴブリンを殲滅させるほどの戦闘技術を持っている初心者冒険者はそうそういない。いるとしたら騎士や兵歴がある、もしくは学園出身者だ。そういった者は身分証などで確認して、すぐにランクアップできるようにしてある」
「そういう経歴がないのに、ゴブリンを殲滅したからおかしいと?」
「いや、経歴がないやつでも狩りができそうならランク試験を受けてもらっていたんだが、なぁ」
おや?そういう試験があったの?
説明にも規約にもなかった気がするけど。
「受付で判断するんだが、お前さんは『冒険者に憧れるどこぞのご令嬢とそのお目付け役の執事』だろうと判断され案内しなかったみたいなんだ」
「じいじはわかるにしても、私がご令嬢はあり得ないんじゃないですか?」
元村娘で男扱いされてた兵士みたいな経歴だよ。どこに高貴な所作があると?
「武器も持たず特技もない。文字の読み書きができる。その上その服がな、着ているソレどういったものか知っているか?」
これ、普通の服じゃないの?
王城を出るときに、じいじに用意して貰ったから、どういったものかなんて知らない。
何か曰く付きの服なの?不安になるんですが。
チラチラっとじいじに視線を送る。
「魔獣の繊維が編み込まれている、ちょっと防護力の強い服ですよ」
「…まあ、その辺の防具より強いな。だからそれを準備できるってことは裕福な家の出だろうと判断したわけだ。受付の案内が足りなかった。すまなかったな」
ギルドマスターに謝られたけど、武器も含め、装備に気をかけていなかった私にも非はある。
冒険者しようっていう人が、装備を気にしないわけないんだから当然だよね。私みたいな例は希だろうし。
次はランクアップについてだ。
「ヒール草200束に、ホーンラビットは86匹、ゴブリン136匹にゴブリンソルジャー5匹か。それにブラックベアーの討伐と、聞いていた以上の結果だな」
「じいじと2人だからね」
「ライザックと話していた時の通り一気には無理だが、一先ずDランクに昇格しよう」
目標にしていたDランクを達成できたようだ。
冒険者はDランクになって一人前って言えると言われているので、一日で達成できてよかった。
「森の調査結果はどうなったんですか?ゴブリンもおかしいですよね?」
「あぁ、ゴブリンの生息地もずれている。いや、移動してきたが正しい。ブラックベアーより奥の地域で異変があったと言うことだろう」
考えられるのはブラックベアーより強い魔獣がブラックベアーを生息地から追い出して、それが連鎖しているってことらしい。
ギルドもすぐ公表して、注意を呼びかけるようにするとのこと。
森の奥への調査は危険が高いので、高ランクパーティーと領主兵が集まってから、と計画しているそうだ。
「お前さんたちも強いだろうが、注意は怠るなよ。あと何かあればギルドに報告頼むな」
無事ランクアップもでき、あとは報酬を受け取りに行く。
「お待たせしました、ヒール草とゴブリンとゴブリンソルジャー、ホーンラビットとブラックベアーの討伐の報酬になります」
出された報酬は予想以上に多かった。
というかブラックベアーの討伐も報酬もらえるの?納品していないのに。
疑問が顔に出ていたらしく、受付のお姉さんが説明してくれた。
森の調査依頼を受けていた『希望の弓』パーティーが、ブラックベアーから救ってくれたのは私達のおかげで、それによって森の異変について報告できたのだから、その報酬を受け取る権利があると伝えてくれたそうだ。
律儀な人がいたものだ。有り難く頂戴しておく。
「差し支えなければ、ブラックベアーの素材を売ってもらえませんか?」
「わかりました。あとマッドウルフが11匹ほどあるんですが、毛皮とか買い取りしてもらえますか?」
「マッドウルフですね!この辺ではあまり生息数が少ないので、こちらも助かります」
窓口では全てを出しきれないので、倉庫で受け渡しをすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます