3 成長

その後、無事日暮れまでに東端の国境の街に着いた。

余裕とまではいかないが、それでも体力が尽きることなく着けてよかった。

探知・風魔法・収納魔法などのスキルの熟練度もかなり上がったようだ。

一応ステータスを確認しておこう。あと新しく取得したスキルも確認しないと。


《ステータス》


名前:リサ

level:41

種族:人族

年齢:15

体力:980

魔力:1250

取得スキル

・アイテムボックス

・剣術

・探知(NEW)

・千里眼(NEW)

・鑑定

・武術

・全属性魔法

・身体耐性

・物理攻撃耐性

・魔法攻撃耐性

・地図

・身体異常無効

・精神異常無効

称号

・主神の加護スキル


レベルは1つだけ上がっていた。

戦闘したのもあのウルフの群れだけだったから仕方ないか。

今日新しく取得したのは探知と千里眼。

おっ?気配感知が消えている。上書きされたってことは探知は上位スキルなんだろうな。

千里眼は鑑定とはまた違ったスキルみたいだな。

あくまでも遠くを見るためのスキルってことかな。


体力と魔力については比較対象がないから、自分がどれくらいの力量なのかわからない。

他人を鑑定できれば比較できるだろうが、それはできない。

法律とまではいかないが、勝手に人を鑑定することはマナー違反とされている。


まあ、じいじの特訓に付き合えているのだから、人並みにはあると思っておこう。



さて、街に入ってご褒美のハンバーグを!と思いきや、ストップがかかりました。

街の宿だと調理場を借りれず、じいじ手製のハンバーグは作れない可能性が高いとのことで、仕方なく街道近くの森の中で料理をすることに。


では、自慢の魔石を組み込んだ小型システムキッチンの出番です。

小型でありながら、水と火の魔石で水道と3口コンロとオーブンまで使えるのはもちろん、風と光の魔石を利用した浄化付き換気扇を完備!

これなら森の中でも臭いを気にすることなく料理することができるのだ!


「お肉は途中で退治した、マッドウルフでいい?」

「はい、街で購入した肉より新鮮ですし、部位毎の食べ比べするのもよろしいかと思います」


じいじの言葉に涎がじゅるりと口から溢れそうになる。

逸る思いを押さえ、解体するマッドウルフを一体取り出した。

食べ比べすることも考え、丁寧に部位ごとに分け、更にハンバーグにするためミンチにする必要がある。


解体は村でもしていたので、慣れたもの。

毛皮もいくらか換金できるだろう。

少しでも余裕のある旅にしたいから、毛皮も極力傷をつけないように丁寧に剥ぎ取っていく。


ようやく一体終わったところで、思った。

これからのことを考えると、余分に解体しておいた方がいいかもしれない。

アイテムボックスで鮮度は保たれるとはいえ、いつでも解体できる訳じゃないし。街の中で血溜まりとかあまりよろしくないだろう。

でもいくら森の中でみ、今から何十匹と解体するのは駄目だよな~

解体する場所さえ確保できれば…。


「あっ収納魔法の異空間に、解体部屋作ればいいじゃん!」


アイテムボックスが大きな部屋になるように念じて、あと固定の作業台もあって、ドアを付ければ、


《ワーキングルーム取得》


できたー!!

おし、これでいつでも解体できる!


「じいじ!作業室でミンチ作業してくる!」

「はい、こちらは他の下拵えを進めておきます」


じいじに了解の返事を告げ、解体した肉をミンチにしていく。

あと思わぬところで良かったのが、部屋に散らばったミンチ肉もちゃんとアイテムボックスにまとめて回収できたこと。

細かな作業をするときも、これは便利に使えそう!



「できました」

「おおぉっ!美味しそう!!」


皿に盛り付けられたハンバーグは3つ。

照り焼きソースがかかったもの、大根おろしが乗せられたもの、チーズがかけられたもの。

食べ比べできるとは思っていたけど、味付けが違うものを3種類もいただけるなんて、なんて贅沢!


「いっただきますっ!」


まずはあっさり食べれそうな、大根おろしのハンバーグから一口。

脂身のお肉から噛むごとに出てくる肉汁は濃厚な脂の旨味と甘さが溢れて、でも後味は大根おろしでさっぱり。こってり、さっぱりのループでいくらでも食べられます。


次にチーズのハンバーグ。

カリっと焼き上げられたハンバーグにとろーりチーズの食感が堪らない。さっぱりとした赤身の旨味とチーズの濃厚さが絶妙なバランスで、フォークが止まりません。


最後に定番照り焼きハンバーグ。

お肉は脂身と赤身が混ぜられて、肉の脂と旨味が調和しています。そこに胡椒の効いた照り焼きソースがいいアクセントになって、白米ととても合います。白米に伸びる箸が止まりません。


一言も喋らず食べきった私をじいじは微笑ましい顔で眺めていました。


「余分に作っておいた分はアイテムボックスにいれておきましょう」


じいじの提案に即座に頷く。

アイテムボックスにいれておけば、時間は止まっていつでも出来立てが食べれる。

この御褒美ハンバーグがあればどんなことでも乗り越えられそうだし。


街に美味しいものがあれば、それも余分に購入して貯めておこう。不測の事態もあるだろうしね。

消費期限がないなんて夢のようだよ。


ちなみにこの世界のご飯文明はかなり進んでいる。

白米などの穀物やハンバーグなどの調理方法、醤油など調味料も流通している。

昔に転生者がいたのかも知れないな。

料理チートはできないけど、自分で作らなくても美味しいものをいっぱい食べれるのは幸せなことだよね。



その後はサクサクと街へ入る。

街に入るための身分証は、村を出て王都に行く際に作らされた村人の身分証を出している。

まさか、勇者として登録されている身分証を使うわけにはいかないし。

偶然とはいえ、作っていて良かった。

門の守衛さんにご飯が美味しい宿も聞いて、そこへ泊まることに。

評判通りとても美味しかったです。まあ私が一番美味しいと思うのはじいじのご飯だけどね。


数日後に出る船に乗るので、船旅に必要なものを買いに行く。

ご飯は各自準備だから、宿でお弁当を複数用意してもらう。スープは大鍋ごと。

最初はすごい怪訝な顔をされたけど、じいじが一言二言告げると納得したらしく沢山作ってくれた。

流石じいじだ。


ご飯の他は、防寒具や念の船酔い防止薬、着替えも購入しておく。魔王国に行ったときに余っていた旅費で賄えて良かった。

余っているとはいえ、今後を考えるとあまり無駄遣いはできない。

これから行く隣の大陸のエストガース国は魔獣の森に囲まれているらしく、冒険者の需要も高いから魔獣を狩ってたくさん旅費を稼いでやる!


宿の最後の食事をいただいて、船着き場へ向かう。

新しい国への期待に胸を膨らませて、


「俺は勇者だぞ!」

「はぁっ!?」

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