第5話 怪盗レティア1
「ふう〜。これで必要な資料の読み込みは終わりだな」
俺はある事を調べるために事前に本を読んでいた。
「さてと、そろそろ部屋に戻らないというか二人が寂しがるな」
読んだ本を片付け部屋を後にした。
二人がいる部屋に向かうと珍しくテレビにかじり付いていた。
「何見てるんだ?」
後ろから声をかけるとびくりと跳ねる二人。
「マ、マスター。お疲れ様です」
「今日は早かったじゃないのよ」
「そうか?かなりの量を読んだから早くはないと思うが」
「いいえ、早いわ。だからもう少し本でもーー」
俺は二人から目線を外しテレビを見る。
すると。
「成る程。怪盗レティアか」
怪盗レティア。最近有名になって来た怪盗だ。その有名になった理由は……。
「別にアニメを見るのは悪い事じゃないだろ」
「で、ですが勤務中なので」
「いいよ。二人には沢山働いてもらってる。それぐらいの休憩、俺は気にしないよ」
「そ、そう。じゃあ気にせず見させてもらうわ」
そう言って二人は再びテレビにかじり付いた。
怪盗レティアね。全く、アニメの中だけの人物なら良かったんだけどな。
あれはつい二週間前の事だ。
■■■
「招待状?」
「はい。差出人は化粧品会社の社長さまです」
俺はヒカリから招待状を受け取り、中身を確認した。
えー、何々。新製品の発表会へのお誘い。そういえばこの間少し話した社長だったな。
せっかくの招待だがどうせ金目当て……。いや待てよ。確かあの子の社長は若くて胸が。
「ヒカリ。ミコトに明日パーティーに出かけると伝えておいてくれ。この新商品の発表会に出る」
「畏まりました。では失礼します」
さてと俺もパーティーの準備をしないとな。
翌日。
「お招き頂きありがとうございます。峰垣さん」
「こちらこそ御足労頂きありがとうございます。安堂さん、それに可愛いお嬢さんたちも」
峰垣エイリさん。化粧品会社を運営する若き社長。二十四歳で社長は業界でかなり有名な話だ。それにその若さと美貌で様々奈人たちを魅了している。
「それでは始まるまで会場でゆっくりして行ってください」
そう言って峰垣さんは他の人の所に行ってしまった。
あ〜峰垣さんが。
「ねえ、安堂。何か言う事は無いの?」
「……何が?」
「私たちの姿を見て何とも思わないわけ?」
ミコトたちはいつものメイド服を着ていない。何せ場所はいつもの屋敷では無い。ならパーティーに参加するならドレスを着るのが礼儀だ。その為今の二人の姿は。
「マスター、私たちのドレス姿はどうですか?」
「うん、とっても似合ってる」
「ふ、ふん。ならあの女にデレデレしてないでちゃんと私たちの事みてないさいよ」
えっ? 俺デレデレしてたの!?
「ミコトさんの言う通りですよ、マスター。他の女性に目移りしないでください」
そんな事言われてもな。俺も一応男だし。
「う、善処するよ」
それから俺も数人の知り合いに挨拶を済ませ、発表会が始まるまでドリンクを飲みながらゆっくりしていた。
あれ、そういえば二人はどこに……。
周りを見渡すとある場所に大きな囲いが出来ていた。
まさか。
俺はその囲いに近づき、何があるのか確かめた。
「あっ、マスター」
「もう、遅いわよ!」
やっぱり二人だったか。
ずっと一緒にいる為俺の感覚が狂っているのかもしれないがこの二人は可愛い。そのためこういった場所に来ると多くの大人たちが二人に目をつけてしまう。まあ雇ってる側としては自分の目に間違いはないという事実なのだが。毎回こうだと。
「はい、皆さんすみません。通ります」
囲いを抜け、二人を回収する俺。
「よいっしょ」
「「安堂(マスター)!?」
俺は二人を抱き抱え、囲いを抜けた。
「あ、あのマスター。これは流石に」
「そ、そうよ。皆んな見てるでしょ」
「でもこうでもしないと人混みに押されてせっかくの可愛いドレスが崩れるだろ?」
「「なっ!」」
そして人が少ない所まで歩き、二人を降ろそうとすると。
「も、もう少し抱えなさいよ」
「私ももう少しして頂きたいです」
まあ俺がやり出した事だし暫くこのままにしとくか。
そんな状況が数分続いた後、他の人たちに挨拶をし終えた峰垣さんがこちらに戻ってきた。
「あの、安堂さん。少しよろしいですか?」
「な、何でしょう」
「ここじゃ話しにくいので。二人っきりの場所で」
「……分かりました。行きましょう!」
俺は瞬時に二人を降ろし、峰垣さんに着いていく事に。
「ちょっと安堂!」
「すぐに戻るから!」
俺は峰垣さんに連れられ、小さな部屋に案内された。
「それでお話って」
「……これを」
渡されたのは一枚の手紙のような物だった。
そこにはこう記されていた。
『本日、あなた方の新商品を頂きに参上します〜♡ 怪盗レティア』
「……あ、あのこれって」
「予告状です」
こんなふざけたのが予告状か。何ともおかしな物だな。
「まさかこれを信じてるんですか?」
「はい」
「峰垣さん。これどう考えてもイタズラですよ。こんなの気にしなくたって」
「安堂さんはこの怪盗の名前に見覚えは無いですか?」
「い、いえ特には」
「そうですか。ではこれを」
峰垣さんは携帯で何かを検索し、それをこちらに渡してきた。
「怪盗レティア。アニメのキャラなんですね」
「その下です」
「下? えっとアニメから出てきた怪盗レティア。彼女は瞬く間に世間の物を盗み出した。果たして怪盗レティアの目的とは……。あのこれって」
「すげて本当の事です。なのでこの予告状も本物かと」
「でもそれを何故俺に?」
「安堂さんにも手伝って頂きたいのです。新商品を守るのを」
「それはいいですけど、具体的にはどうやって?」
「彼女は大々的に飾っている物を盗んでいきます。その為商品発表の時に出すケースに入った物を狙ってくるでしょう。そこで本当の新商品は安堂さんに持って頂きたのです」
「そんな事なら他の従業員にでも」
「私たちの会社には女性しかいません。なので万が一組合になっても勝てる可能性がある男性の方がいいと思うんです」
確かにその考え方は一理ある。対策方法も完璧ではないが盗まれる描く必要は低くなるだろう。
「分かりました。そのご依頼お受けしましょう」
「ありがとうございます!安堂さん」
近い近い。そして当たってますよ。
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