第3話 事件解決
ったく、あんなに本気で殴るなんて。相変わらずだな坂柳さんは。
「それで犯人はもう分かってるのか?」
「勿論ですよ。二人が頑張ってくれたおかげで完璧です」
「そうか。なら待たせてある容疑者をここに呼ぶぞ。いいな」
「お願いします。坂柳さん」
坂柳さんはその場を離れて、待機させている場所へ向かった。
「じゃあミコト。この資料と証拠品を見て誰が犯人だと思う?」
「な、何よ。急に」
「え?だってヒカリと勝負してるんだろ?だからその答えを聞こうと思って」
「それはそうだけど、なんで私ばっかり最初な訳?ヒカリからでも良いじゃない」
「確かにそうなんだけど、ヒカリはもう犯人分かっちゃってるぽいからさ」
まあ、重要な情報をピンポイントで収集してる時点で分かってるんだろうな。
「じゃあ私の負けじゃないのよ!」
「いやいやここでミコトが正解すれば引き分けになるでしょ。だから頑張れミコト」
さてとここでミコトは犯人を当てれるかな?
俺はヒカリがまとめてくれた資料をミコトに渡した。
しばらく資料と睨めっこし、難しい顔をしたかと思えば閃いた様な顔をしてこちらに話だした。
「犯人は佐藤よ」
「どうして?」
「だってこのコテージの利用申請をしたのはこいつ。ならこいつの申請で五人目の容疑者を呼ぶことだって可能だわ。それに夜被害者から相談を受けて全く相手にされなかったからその五人目と一緒に犯行に及んだのよ」
「うーん、成る程。じゃあさっき見つけた証拠品はどう説明するの?」
「そ、それは……。というかそんな鉄の破片本当に証拠品な訳?」
「ああ、ちゃんとした証拠だよ」
そう言われ再び難しい顔をしだすミコト。
まあこんな破片なんかじゃ正直難しいだろうね。
「うー、もう分かんないわよ!降参降参」
流石に分からなかったらしく地団駄を踏んで悔しがってしまった。
「……それで犯人は誰なのよ」
「今回の犯人はだな。おっ、丁度いい答え合わせは容疑者全員の前でやるとしよう」
目の前には坂柳さんが連れてきた容疑者たちの姿が。
「長らくお待たせしました、皆さん。今回の犯人が分かりましたのでお呼びしました」
「ま、まじすか」
「はい。ですが推理の前に今回の事件の流れについて一旦整理しましょう。ヒカリ頼むぞ」
「畏まりました。それでは皆さん私から事件の流れについてご説明しますね。まず十一時頃人影を見たのは間違いありませんね」
はい、と容疑者の全員が頷く。
「その後影は立ち去りましたが深夜二時頃、大きな音が鳴り島崎さんが様子を見に行く。そしてその音をは佐藤さんも聞いていますよね」
「ええ、音も聞いたし、ヒロトの姿も見たわ」
「ありがとうございます。その音が鳴った後の二時間後に被害者の川辺さんが死亡。皆さんの起床後に見つかる。とこれが一連の流れです」
「ありがとう、ヒカリ。それでは今回の犯人ですが……」
「彼を殺したのは?」
「犯人は……山田健太さん。あなたです」
「ぼ、僕ですか!」
「なんで山田なんすか」
「良い質問ですね。ではお答えしましょう。その前に島崎さん、この部品に見覚えありませんか?」
俺は先ほどの証拠品を彼に見せた。
「そ、それって俺が作ったロボットの部品じゃないすか!どうして」
「森の中で見つけてきました。それで説明していただきたいのですが。あたなが作ったロボットについて」
すると何故か山田はソワソワとその部品を見だした。
まあそうだよな。しっかり隠滅したものが出てくるんなんて。でもあの暗がりと短い時間じゃ木の上までは回収できなかった様だ。
「えっと俺実はこんなナリしてますけどロボットとか作ってまして。今回はほんの試作品程度のミニカーっぽいやつを持ってきたんすよ。でも」
「その試作品が森の中に走っていき大破したと言う事です。その大破の音が深夜二時頃に起きた」
「じゃあ俺の試作品がなくなってのはそういう事だったんですね」
一つ目の謎。大きな音の正体は彼が持ってきていたロボットの大破音だと言うこと。
「しかしその時間帯の山田さんは寝ている。更にその大破音を聞いていない。ですがその前の時間山田さんは寝ていましたか?島崎さん」
「えっとそれは……。確か音が聞こえる三十分前一度起きていました」
「と言うことですが事実ですか?山田さん」
「は、はい」
「しかしその時間に起きていたと言うだけでは犯人と決定づけれません。そう考えるなら遅くまで起きていた佐藤さんもその中に含まれますからね」
「わ、私はやってません」
「ええ、知っています。さて話を戻しましょう。島崎さんあなたは何の為にそのロボットを持ってきたんですか?」
「じ、実はあの人影は俺が作り出したんだ」
これで二つ目の謎「五人目の容疑者」の正体が明らかとなった。
「ちょっとヒロト。どういう意味よ」
「そのロボットにプロジェクターつけて大きな影を演出してたんだ」
「何の為に」
「みんなをちょっと脅かそうと思って。せっかくの泊まりだし」
証拠こそ見つからなかったものの彼の発言は真実だろう。何せ彼は普段から人を楽しませたり、子供の事を考える教育学部に入っている。その思考から考えるとそう言った盛り上がりそうな行動は必然的となる。
「ということで島崎さんが関与していた件はここまで。あっ、後最後にロボット製作を隠していた理由を聞いてもよろしいですか?」
「こんな歳になってロボット作ってるってなんか子供っぽくないすか?なのでその恥ずかしくて。でも人影の事は今日ちゃんとみんなにいうつもりだったんす。けどこんな事になって。紛らわしい事をしてすんませんでした!」
まあ、彼も悪気があってこんなことをしたわけではない。やり方は少しあれだがみんなを楽しませようとしていたのだから。
「島崎さん。あなたのやっているロボット製作は恥ずかしい事ではありませんよ。むしろ誇らしい事です。知っていますか?今ではそのロボット製作は様々な所で活躍してます。たとえば医療。ロボットアームで医者の手伝いや手術そのものを行います。なのでもっと誇りを持ってください」
「あ、ありがとうございます」
「さてと話を戻しましょう。では山田さん、あなたが彼のロボットを暴走させた理由ですが。いや暴走させたというよりプログラムを書き換えたという方が正しいですかね?」
「なっ!何で」
「当然ですよ。しっかりと調べているんですから。まあ調べたのはこちらのメイドですがね」
驚くのは無理ないね。なんせヒカリの情報収集能力のお陰でこの推論に辿り着いているんだから。
彼は何事にも器用だった。そのためある程度のことなら簡単にできてしまう。だから彼の作ったロボットの仕組みを理解し、プログラムを書き換える事は造作でもなかった。
「まずは山田さん。あなたは島崎さんがロボットを操っていることを知っていた。まあ大方学校かどこかで偶然見たのでしょう。そして彼の性格上みんなを楽しませたいという性格を知っているため計画に利用した。まあその性格は皆さんご存知ですよね?」
佐藤と氷川はその質問に頷いた。
「プログラムを書き換えたのは適当に理由を付けて部屋を出た時にでも書き換えたのでしょう。次にロボットを破壊したのは存在もしない五人目の容疑者または利用申請をした佐藤さんに罪を着せようとしたという考えのようですが上手く行かなかったようですね」
「あんた、罪を着せられなくて良かったわね。まあ私は最初から犯人じゃないって分かってたけどね」
どの口が言ってるんだ。さっきまで自信満々に佐藤が犯人だって言ってたくせに。
「そしてその騒動をきっかけにまだリビングで飲んでいた被害者に接触。その後彼に睡眠薬を盛った。違いますか?」
まるでその光景を見てきたかの様だと言いたげな顔でこちらを見る山田。ということはもう確実にこいつが犯人で間違いないな。
「ですがその時間に睡眠薬を盛ったとすると佐藤さんとの会話が不可能になってしまう。睡眠薬は効いてくるまで約十五分から三十分。しかし被害者は意識をしっかり保ち、会話をしていた。ですか一つ不自然なてんがありますよね。何故被害者は意識を保っていたのか。何故そうなるように仕向けたのか」
普通なら佐藤との話が終わった後に睡眠薬を飲ませ、すぐに殺せばよかった。しかし死亡時刻は四時。
「山田さんあなたは佐藤さんと川辺さんの話が終わった後、川辺さんと話していますよね?」
その言葉を容疑者全員が驚いたのだ。
「あなたは心のどこかで信じていたんですよね。自分に言われた言葉を取り消してくれると」
「ど、どういうことすか?」
「山田さんは彼に馬鹿にされていたんですよね?」
「……はい。あいつは僕と会う度に僕の夢を馬鹿にしてきました。それに成績のことも。」
「はあ?成績の事はあんたに落ち目があるでしょ。実際悪くもないのに口癖のように言って」
「君みたいな馬鹿には分かんないだろうね。僕の家は少しでも落ちたらダメなんだ。だから必死で努力して。でもそんな努力を彼は馬鹿にし笑った。所詮努力せずに成り上がったやつはそういう人たちの気持ちなんて分かんないんだよ。でもあいつは撤回しなかった。だから僕はあいつを殺したんだ」
そう彼は情報に書かれていた通り薬学部に入っている。だから調合は簡単にでき、持続時間もいじる事ができる。証拠品押収の時に出てきてない時点でロボットの部品と一緒にどこかに隠しているのだろう。
「さあ山田さん。もう終わりですよ」
彼は全てを悟り、その場に崩れ落ちた。
「何で彼を殺したのよ!私の彼を!」
「お、落ち着けって楓!気持ちはわかるけど」
咄嗟に彼に飛び付こうとした彼女を止める島崎。
彼女の気持ちはわかる。最愛の人を短な人間に殺されているのだ。冷静でいられるはずがない。
「天罰だよ。それを僕が下してやっただけさ。それに学校にはあいつに恨みを持つやつはたくさんいる。きっと清々してるさ」
「あんた、絶対許さない!」
「別に君に許されなくたっていいさ。僕は僕の意思でやったんだから」
そう言い残し山田は連行されて行った。
人間は誰しも自分に劣等感を抱く。たとえそれは周りから良く見えていても。今回は彼だったがもしかすると彼以外の人が犯行に及んでいた可能性がある。
そのため誰もが犯行と隣り合わせなのだ。
「これで事件は終わりですね。マスター」
「……ああ」
殺人は誰かが犠牲になり、それを悲しむ者がいる。当たり前の事だがそうなる事をしっかりと理解しなければならない。いっときの気の迷いや感情の暴走によって犯行に及び、人生を台無しにすることが殆どだ。言わば犯人はその犠牲者なのかもしれない。
「さてと、帰ろう」
「そうですね。あまり長くいてもお邪魔になるだけですし」
「……」
「どうしたんですか?ミコトさん」
「何だが可哀想だなって」
「みんなそうだ。だがその気持ちを少しでも晴らすのが俺たちの仕事だ」
「そうですよ。だから私たちは少しでも確実に犯人を暴き出さないといけないんです」
「……そうね」
俺たちは彼らを残し、家へと向かった。
■■■
「今回もご苦労だったな。安堂」
「本当ですよ〜。森の中入って証拠探しなんて運動してない俺からしたら重労働ですよ」
「それは単純にお前が悪いだけだろ」
「という訳でしっかり休ませて頂きます」
「そうか。じゃあ私は帰るぞ」
「はいはい、お疲れ様です〜」
俺は見送りもせずベットに寝転がった。
さてとこれでやっとゆっくりできるな。
「マスター、先ほどの犯人を当てたので約束のあれいいでしょうか?」
おっとすっかり忘れていた。しかしあれは俺の同意なしだしな。でもヒカリは情報収集を頑張ってくれた。一つくらいいうことを聞いても良いだろう。
ベットから立ち上がりヒカリの前に立った。
「それで何をしてほしんだ?」
するとヒカリはもじもじとどこか恥ずかしそうにしていた。
「あ、あのですね」
「ん?」
ヒカリはそっとスカートの裾を持ち上げだした。
「わ、私のパ、パンツを見て頂きたいんです」
しっかり数十秒。考えこんで出てきた言葉は。
「はい?」
「ちょ、ちょっとヒカリなに言ってるのよ!」
「お願いします!マスター!」
そ、そんな真剣にお願いされても。
「安堂。絶対了承しちゃだめだからね」
「ミコトさん、どうしてそんな事言うんですか?ミコトさんだってマスターにパンツ見せたじゃないですか」
「そ、それは事故っていうか」
「それでも見せた事には変わりありません。なので私は見せても何も文句を言われる筋合いはありません」
「で、でも」
「ミコトちゃん。少し黙っててください」
「は、はい」
「そ、それではマスター、準備はいいですか?」
「あのそれ以外のお願いは」
「だめです」
どうやら俺にはもう拒否権はないらしい。
「で、では行きますよ」
ヒカリは俺にジリジリと近づき、スカートを顔の前まで寄せてきた。
「ちゃ、ちゃんと見てくださいね」
はあはあと息を荒げながら少し足を広げるヒカリ。
その声は少し震えていた。
ヒカリはそれはもう顔を真っ赤にして恥ずかしそうな表情で更に横に視線を逸らしている。
そしてヒカリのスカートは俺の顔を飲み込んだ。
中にはアニメの中でしかあり得ないと思っていた夢が存在していた。
縞々パンツが。
この状況が一分ほど続き、俺はヒカリのスカートから解放された。
緊張していたのか膝からペタリと崩れ落ちるヒカリ。
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫です。それより、私のパンツ堪能していただけましたか?」
た、堪能ね。何だかここでそう頷いてはいけない気がする。
「ちょっと安堂」
「ど、どうしたミコト」
「……わ、私もするからそこに座ってなさい」
「は、はあ?」
「あんな事されちゃ黙ってられないわ!」
「ミコトさん、それは卑怯ですよ。既に見せているじゃないですか。私は今回の犯人を当てた報酬としてやっているんです。ミコトさんとは違うんですよ」
「な、何よ、その言い方!」
「とにかくこの話はもう終わりです。マスターも先ほどの光景を堪能したいと思うので私たちはお暇しますよ」
そう言ってヒカリはミコトを連れて部屋を出て行った。
変な気を回さないでくれよ、ヒカリ。でも正直助かった。二連ちゃんでロリっ子のパンツを見てしまったら理性が保てなかったかもしれないからな。
にしてもあの二人は本当に変わったな。
俺は本棚に近づき、ある本を取り出した。
その本は所々滲んでいてそして血痕が。
これを見るとあの光景を思い出すな。
あの日は大雨で証拠が流れやすい日だった。
そんな日、現場には血を流して倒れている少女とその返り血が付いた体で立っている男。そう俺がその場にいた
のだ。
__________ 虐殺のクリスマス_________
今となってはそう呼ばれている事件。あの日から俺はこの道を歩み始めた。
そうだな。この物語の書き始めとしてこう記そう。
これはロリコン探偵と呼ばれるまだ未熟な少年の物語だ。
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