292.帝国から来たみたいです。

 イロハたちが帰って来てから10日ほど立った頃。帝国側から馬車の一団が到着しました。どうやら、レイナが連れてきた職人達のようです。結構何人かの冒険者達も護衛でやってきてるようですね・・・護衛を依頼したのでしょうか。



 「レイナ、おかえり。」

 「ただいま。職人とか色々連れてきたよ。」

 「結構な人数ですね。」

 「はい、商業ギルドに声をかけたんです。ギルド支部の土地を誘致することを条件にして、職人を集めさせました。」

 なるほど、それでこれだけの人数を集められたんですね。

 「護衛の冒険者はどうしたの?」

 「はい、冒険者ギルドの土地を条件にして護衛を集めさせました。どうせ、ギルドの支部は必要でしょうから。」

 「でも、王都でアリスも同じ事をしたらどうするの?」

 「アリスとはもう話をしてあります。人は両国のギルドから集めても、建物は一つでいいですから。どうせ、ここが本部に成り代わって一つになるのでしょうし。」

 なんかとんでもない事を言ってますが、アリスも同意見なのでしょうか・・・


 「そういえば、この森のこともだけど、すごい話になってたわよ。」

 「確かにいきなり森ができたのですから、すごい話になっているでしょうね・・・」

 「カオリ、多分話が噛み合ってないと思うから言っておくね。」

 「噛み合ってない?何がですか・・・」

 「すごい話っていうのはね、女神に祝福された土地だって・・・そう言った話になっているってこと。教会ではもう聖地扱いよ・・・」

 なんですか・・・それは・・・女神に祝福されたとか、聖地だとか・・・

 「で、でも、ここの教会の人は何も言ってなかったよ?」

 そうです、聖地とかそんな話になっていれば何か噂くらいは耳にするはずです。

 「ねぇ、カオリ・・・女神様に聖女認定されたあなたが住んでいるのよ?ここの教会の人たちにしてみれば、ここが聖地だなんて当たり前のことなだけよ。」

 「そうなんですか・・・確かに聖女様と呼ばれてはいますが・・・」

 「普通の聖女とは違うってことよ・・・ちなみに帝国で聖女と呼ばれている子が同行してるからあとで紹介するわ。」

 「えっ・・・会わなきゃダメですか・・・」

 「そうね、この国の女王として、女神様に認められた聖女として会わないとダメだと思うわ。」

 「はい・・・準備しておきます・・・」

 こういう時用に作ったドレスに着替えないといけないということですね・・・ウエスト締め付けるんできついのですよ・・・着物を正装にしましょうか・・・コルセットをつけるよりは楽ですから・・・

 前世とは違うのですし、振袖もありかもしれないですね・・・アリスとレイナにも話をしてできるだけ楽な服装を正装としましょう。私が楽をするためです、ラフな格好をしていても正装だと言い張ればいいのですから・・・民族衣装ってあるじゃないですか・・・




 「聖女様、お会いできて光栄です。ヒルダと申します。帝国では聖女などと呼ばれております。」

 「ヒルダですね。遠いところよくきてくれました。どうかゆっくりして行ってください。」

 よそゆきの言葉ですよ・・・しっかりした話し方をしないとダメだって・・・アリスとレイナに言われたんです。少し上から目線になってもいいくらいだって・・・そんなの苦手ですよ・・・フレンドリーに行きたいのですけど・・・他国に舐められるからダメだって言われてしまいました・・・他国って身内ばかりですよね?


 「ヒルダは教会に所属しているのですか?」

 「は、はい。帝国の教会に所属しております。」

 そうすると、教会の方に泊まることになるのでしょうか・・・レイナに確認した方がよさそうですね・・・小声で確認しましょう・・・

 「ねぇ、レイナ。ヒルダは教会の方に泊まることになるの?」

 「いえ、協会に所属しているだけで、シスターとは違うので宿を取ることになるのですが・・・」

 「まだ宿と呼べるものがないですね・・・ 」

 「そうなの・・・多分馬車を使って宿泊すると思うのだけど・・・」

 あまりよろしくないですね・・・せっかく来てもらって馬車の中ですごさせるなんて・・・


 「ヒルダは泊まるところは決めてあるの?」

 「はい、どこか場所をお借りして、馬車の中で寝泊まりしようかと思っております。」

 「ダメです。許可しません。」

 「えっ・・・それは・・・」

 困った顔してますね・・・ちょっとだけ意地悪な言い方でしたね。レイナもびっくりした顔してますから。

 「ヒルダは帝国の聖女なのでしょう?国賓として扱いますから、城に泊まってもらわないと困ります。馬車で寝泊まりだなんてとんでもない事です。」

 「国賓だなんて・・・」

 「もちろん、あなたにも従者がいるのでしょう?その方達もこちらで泊まるところを用意させます。いいですね。」

 「は、はい。ありがとうございます。」

 別に、涙流すようなことでしょうか・・・部屋を用意するだけですよ?大したことないでしょう・・・



 とりあえず謁見は終わりですね・・・部屋に帰ってゆっくりしましょう・・・

 「カオリ・・・流石に私もびっくりしたわよ・・・」

 「あっ・・・許可しないってところ?」

 「そう。帝国の聖女相手に何言い出すかと思っちゃったわ。」

 「ダメだった?」

 「ちょっと、意地悪だったわね。でも、いい判断だったと思うわ。彼女喜んでたでしょ?」

 「でも、部屋を用意しただけですよ?」

 「女神様に認められた聖女様直々に国賓だと言われて、泊まる場所まで用意してもらえたのよ?」

 ああ・・・そういうことですか・・・

 「これからは、聖女だって事を念頭に置いて話さないとダメかなぁ・・・」

 「別にいいんじゃない・・・カオリらしくっていいと思うわ。そういうカオリが好きになったのだし・・・」

 最後の方がよくきこえませんでしたが、いいって事ですね・・・これからも今まで通りでいきましょう。多少意識はしますけど・・・

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