091.商会と手を組むみたいです。
王女殿下に依頼された装備は出来上がっているようですね。さすがにもう出来ました、なんて連絡はしませんよ。2ヶ月ほど待っていれば勝手にやってくるでしょうから。王女殿下相手にそんな言い方はないと思いますが、聞こえるところで言っている訳ではないのでいいとしましょう。
それよりも工房の方からそろそろ新しいデザインが欲しいと言ってきました。そうですね。何か新しいのを考えないといけませんね。
あまり頻繁に新しいのを出してもどうかと思いますので、2ヶ月に1回くらいで良いでしょう。今回はちょっと早いですが、Tシャツを広めるためということで新しいデザインを作ります。
今あるのは「働いたら負け」、「明日から本気出す」、「可愛いは正義」でしたね。「
シルクスクリーン用の版を作っておきましょう。これもクリエイトで作らないといけないので、屋根裏部屋で作成します。意外と活躍してますね、この屋根裏部屋。
版は午後から誰かに持っていって貰えばいいでしょう。アヤハあたりに頼みます。私ですか?家でゴロゴロしますよ。そのためにいろいろ頑張っているんです。私は、「楽するための努力は厭わない。」そう言った性格なのですよ。報われない努力って虚しいじゃないですか。一時の努力でその後が楽できるのであれば努力のしがいもあるというものです。
『お嬢様にお客さまが見えておりますが、いかがいたしましょうか?』
私にお客さん?初めての人でしょうか?今まで来た事のある人であれば、ちゃんと誰が来たかくらい教えてくれるはずです。
「メアリ、どんな人でした?」
『ガンドレアの商人で、ラッセルという方です。』
ラッセル・・・何処かで聞いたことがある名前ですね・・・
思い出しました。ガンツさん達と初めて会った時の商人さんですね。
「奥の応接間に案内して。あと、お茶の用意も。」
あの時の商人さんであれば会ってお話をしてもいいと思います。直接話はしていませんでしたが、お世話になりましたからね。
「初めまして、ガンドレアで商会を営んでいるラッセルといいます。」
「お話しさせていただくのははじめてですが、いつぞやはお世話になりました。アウトフィットの店主でカオリと言います。」
お礼はちゃんと言っておくものです。
「・・・・・・・ああ、あの時のお嬢ちゃんか・・・あ、いやすまん。カオリさんと呼べばいいかな。」
「ええ、それでお願いします。」
いつまでもお嬢ちゃんと呼ばれるのはなんですから。
「それで今回はどのようなご用向きでしたでしょうか?」
そんな商会主のラッセルさんが何用でしょうか?何にも思い当たることがありませんね。
「カオリさんが出しているTシャツをウチで扱わせてもらいたいのです。できる事ならうちだけで・・・」
独占販売という事ですか・・・でも、そんなに売れるのでしょうか?
「この町ではそこそこ売れ始めましたけど、ラッセルさんのところで扱うほど売れるものでしょうか?」
「もちろん売れないような物を仕入れるつもりは無いですよ。王女殿下が出入りしている店です。売れないはずがないでしょう。」
えっ、王女殿下が来たのって昨日ですよ?それになんで知ってるんですか?
「えっと、どうして・・・」
「商人にはいろいろと情報が集まって来るのです。もちろん自分でも集めますがね。」
情報源はわかりませんが、王女殿下が来たことは知っているって事ですか。将来性を見越して、ここで契約してしまおうって事ですか。確かにウチで売っているだけでは数が知れてます。でも、ラッセルさんに売って貰えば数が捌けますね。
「わかりました。ラッセルさんの所だけって話は追々話すとして、まずはラッセルさんのところにTシャツを卸させてもらうって事でいいですか。」
双方の同意が得られたところからは、卸値をいくらにするかとか、月に何着卸せるか、などいろいろ話し合いましたよ。ひと月に何着卸せるかに関しては、工房の方とも話をしないといけませんので、とりあえず保留としました。場合によっては工房を大きくする事も必要かも知れません・・・
またしばらく大変になりますが、これでTシャツは私から離れて一人歩きし始めましたね。私が楽できる地固めができたという事です。いい事ですよ。
あれからひと月ほど・・・工房の方とも話をしながら、ひと月あたりの生産数を決めました。
ラッセルさんはこの国でも結構な商人さんのようで、王女殿下とも面識があるようです。
今月は数がそろわないのでサンプルとして、何着か渡しておきました。もちろん新作の「
なんだかんだと忙しいひと月となってしまいましたが、これで私が暇になってきましたね。それを考えれば、よい一ヶ月だったと思います。
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