092.王女殿下のはまだみたいです。

 アウトフィットも軌道に乗ってきましたね。これもみな、ラッセルさんのおかげでしょうか・・・この町以外のところでも売れるため、生産数が以前の何倍にもなりました。もちろん人員も増やしました。いままでの人数では追いつかなくなりましたからね。私ですか?本店で細々と服や装備を作ってますよ。オーダーメイドはここでしか受けませんから。


 こうなると、オーダーさえ受けなければこのお店もメアリに任せられるのでは・・・そうすれば私って自由ですね。ひと月くらい旅に出てもいいのでは?

 もとからゆっくり旅をしたいと思ってましたから・・・お風呂とお別れするのが嫌でここに居着いていましたが、それさえクリアすれば旅に出られますね。

 移動用お風呂に関してはいろいろ考えておきましょう。



 「それで、王女殿下はなぜここにいるのでしょうか・・・仕上がりはまだ1ヶ月ほど先と言ってあったはずですが・・・」

 「た、たまたま通りかかったのでよっただけです。」

 王都とここでは馬車で約1週間です。たまたま通りかかる距離ではないですよ。

 「わざわざ王都から来たのですか?」

 「そんなわけないじゃないですか。ずっとこの町に滞在しているだけです。よく今までここに来なかったと褒めてください。」

 なんですか、ずっとこの町に滞在してたんですか・・・2ヶ月も滞在するつもりだったのですか・・・後ろにいるメイドさんを見てみると大きく溜息をついていますね。そうですか、あなたたちも大変なのですね・・・

 「仕方ありませんね。まだ完成はしてないのですからね。」

 嘘です。しっかり完成しています。

 「とりあえず着られるものが1着ありますので見てみますか?」

 メイドさん用に作ったものを1着だけ出してきましょう。王女殿下に作ったものは出しませんよ。ええ、出しませんとも。あと1ヶ月悶々と待ってもらいましょう。



 「少々お待ちください。」

 王女殿下達を応接室に案内してから、自分の部屋に戻って空間収納から1着取り出します。あの場所で取り出してもよかったのですが、作業場から取ってきましたとした方がよさそうなので・・・

 「お待たせしました。こちらです。」

 近くにあるマネキンに軽く着せましょう。

 「従者の方用に作ってみたものです。仕上がったものはこれ1着ですね。後はまだ形になってません。」

 「私のはまだ作ってないのですか?」

 「ええ、王女殿下のものは万全の状態で作りたいので一番最後です。」

 「そうですか、万全の状態で・・・ですか・・・」

 なんか渋々納得したといった感じですね。

 「そちらの従者の方。サイズとか合わせて行かれますか?これは、前衛の方用に作ったものですが、形状は同じになりますのでそれぞれサイズを見させていただくといいかもしれないです。」

 「そ、そうですね・・・みな、サイズを合わせて貰ってください・・・」

 悔しそうですね。自分のだけないのですから。

 「王女殿下のものも形は同じになるので、サイズを合わせて行かれますか?」

 「・・・わ、私は自分のが出来てからで結構です・・・」

 かなり無理してますね。そわそわしているのがまるわかりですよ。1人1人順番にお店の試着室で着替えてはもどってを繰り返します。身長の上下はありますが、皆理想的な体型をしていますね。もとより、クリエイトで作っているのでサイズはピッタリに近くなるのですけど・・・

 「では、これでサイズの方はわかりましたので、1ヶ月後にはしっかりしたものをお渡し出来ると思います。」

 「や、やっぱり私もサイズを合わせていただこうかしら・・・カオリさんに余計な手間をかけさせてもいけませんし・・・」

 ああ、着てみたくなったのですね。メイドさん達の方を見ていればそうなりますよね。

 「ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると助かります。」

 王女殿下をたてて、感謝の言葉を述べておきます。メイドさんを連れて試着室の方へ行きますね。残ったメイドさんが頭を下げてきます。状況を理解しているのですね。よいメイドさんですね。


 戻ってきたみたいですね。

 「凄いですわね。王家にあるものと比べても遜色がないのではないでしょうか。」

 ほう、それほどの出来でしたか。そう言われると悪い気はしません。ですが、やり過ぎと言うことでしょうか?

 「そこまででしょうか?たんなるローブの延長と思っていただければ・・・」

 「そんな物ではありませんよ。そうですね、魔物素材を使った革鎧以上ではないでしょうか・・・」

 確かに魔物素材は使ってますが、服ですよ。革鎧以上ってことはないでしょう?

 「私がいつも訓練で使っている革鎧よりも丈夫そうで、それに動きやすいですね。何よりデザインが気に入りました。」

 「それはよかったです。王女殿下のものは生地が赤色で、金糸で彩られた感じに仕上がる予定ですよ。」

 いえ、もう出来上がっているのですけどね・・・

 「そうですか・・・それは楽しみです。」




 その後は普通にお茶をして、Tシャツの話をさせて貰いました。どうやら王女殿下もご使用と謳って売り出しても構わないとのお許しを頂きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る