089.悪い王子様がいるみたいです。

 ガンテツさんの所で、ワイバーンの素材価格を聞いてきた翌日。アヤハ達が話をしていた王女様がやってきました。正直言って面倒です。


 「はじめまして、アリステレア・ダーナ・グランドニアと申します。」

 カーテシーでしたっけ、綺麗ですね・・・私?出来ませんよ。付け焼き刃でやるよりも普通にお辞儀する方がいいでしょう。

 「お初にお目に掛かります。カオリと申します。」

 言葉づかいとかよく分かりませんよ。なるべく丁寧に話しますが、大丈夫でしょうか・・・

 さすがに店内でお話しというわけにも生きません。奥の応接室にご案内です。


 「本日はこのような店におこしくださいまして、まことにありがとうございます。」

 どんな挨拶したらいいかわかりません・・・教養のなさがあふれ出てますね。

 「普段通り話してくださって結構ですよ。ここは公式の場ではありませんし。私も私用で来ているのですから。」

 そうですか、ではお言葉に甘えて普段通り話しましょう。なるべく丁寧に話しますよ。その位はわきまえてます。

 「それではお言葉に甘えさせていただきます。それで、今日はどの様なご用件ですか。」

 と言ってもうちに来るということは、何かしらの服を作って欲しいと言うことでしょうけど・・・

 「私と、私の侍女達の装備を整えて貰いたいの。」

 はぁ~装備ですか・・・服ではなくてですか・・・

 「それは冒険者が着るような装備と言うことでしょうか?」

 「ええ、そういった装備です。私と侍女4人分を早急に整えていただきたいのです。」

 全部で5人分ですか、しかも早急と来ました。何時までに必要なのでしょうか。

 「早急と言われましても、それなりに時間もかかります。後はどの様な装備かによってもかかる時間は変わりますので。」

 「そうですね。魔物素材を使った装備で魔法付与されているものが欲しいのです。」

 そうですね、1着1ヶ月。全部で半年としておきましょうか。あまり早く出来てしまうのもなんですから。

 「全部で5着作らなければなりませんから・・・半年ほど頂ければ大丈夫です。」

 「時間がかかるのは十分承知しております。そこをなんとか3ヶ月で何とかならないでしょうか。」

 ええ、十分出来ますよ。私的には明日までになんとかしろと言われても作りますが・・・

 「普通に考えて3ヶ月は無理ですよ。何か急がなくてはならない理由でもあるのですか?」

 何か理由があるのでしたら考えなくもありません。

 「話すと長くなるのですが・・・」

 王家には成人する時に行わないと行けない儀式があるそうです。ダンジョンの最奥まで行って、証をとってくると言うものだそうです。まわりに護衛の騎士を何人も連れてちょっと行ってくるだけの簡単な物だそうです。しかし最近になってかなり強い魔物が出るようになってしまったとか・・・

 「普段なら騎士を護衛に付けることが出来るのですが、兄に手を回されて・・・」

 早い話が妨害工作ですか・・・よほどこの王女様の成人の儀を失敗に終わらせたいようです。この儀式が失敗すると、周囲の評価がかなり下がるのだとか・・・誰でも出来るような儀式に失敗するのですから評価は下がるでしょうね。それに加えて王女様ですから、王位継承にもかかわってくるのだとか・・・嫌な話を聞きましたね。これって、もう断れない雰囲気じゃないですか・・・

 装備を整える為の商人にまで手を回していたそうですよ。とんでもないですね・・・

 「魔物素材を使った装備など、手配出来るような所は全てあたりました。主要なところは皆兄の手が回っていて・・・」

 いやらしい王子様ですね・・・そこまで妨害しますか。よほどこの王女様の出来がいいのでしょうね。きっと王様にも国民にも愛されているのでしょうね。私はこの国の人間ではないので知りませんよ。

 「最近、冒険者用の変わった装備を作っている店があると聞いてきたのです。何でも女性の冒険者に人気だとか・・・」

 アリシアさんやリリさんでしょうか・・・宣伝してくれているのは助かりますが、やっかいごとが舞い込んでくるとは思いもしませんでしたよ。

 「確かにちょっと変わったデザインの装備は作っていますよ。でも、それほど性能はよくないと思いますよ。」

 「今のままでは、ダンジョンに潜っても最奥まで辿り着くことすら出来ません。どうかお願いします。」

 この王女様頭を下げてきますよ。王女様がそんなことしちゃダメなんじゃ・・・

 「あ、頭を上げてください。わかりました。作りますから・・・」

 こういった人は苦手です。悪気はないのですよ。でも精神的に疲れる人ですよ・・・

 「ありがとうございます。これで何とかなるかもしれません・・・」

 「でも、私が王女様のために装備を作ったとなると王子様から圧力かけられたりしませんか?」

 もしそんなことになったら困ります。せっかくお店を開いたのです。工房だって人を雇っているのですから・・・

 「そのあたりはご安心ください。成人してしまえば私もそれなりの権限が出てまいります。兄の好き勝手にはさせませんので。」

 しっかりした王女様ですね。そういったことも出来るのでしたらいいでしょう。しっかりしたものを作らせていただきましょう。


 その後は、どの様な付与をするのか等、お話しを色々させていただきました。デザイン画などを見せると、普通の女の子ですね、可愛い・・・綺麗・・・などと、キャーキャー言いながらデザインを決めました。もちろん従者の方々も加わって、上下関係など関係なくワチャワチャしてました。

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