mission1 Make a delusion ー ドラハンの世界へようこそ
ドラゴンハンターの世界
どこなんだ、ここは?
結構な田舎だな…。家が落ちた?所の後ろにはゲームだったら魔物がいっぱい居そうな薄暗い森があり、目の前には木製の橋が架かっている小川が流れていた。今いるのは、その森と川のちょうど中間ほどである。
にしても何で木製なんだろ、今はもっと優れた文明があるだろ?コンクリートとか鉄とかあるじゃ?なんで使わないんだろ?訳分かんねぇ…。
まぁ、どこかわかんないし。むやみに外に行くのもなぁ…。
ひとまず家にいて様子を見るかぁ。
そんなことを思い、家に引き返そうとしたまさにその時。
ガサゴソ.........
後ろの森から何か物音が.........
なんだ? 魔物でも来たか?
何となく腰を下げてみる。
ガサッ.........ガサガサ.........
バッ!!
「うわーん⁉なんでこんなところに【レッドバニー】がいるの⁉聞いてないよぉ~?」
何かと泣き言をたらたら言っている少年が草陰から出て来た。
なんだ?冒険者か。驚かすなよな。
家に帰ろー。
って、えぇ⁉冒険者?噓でしょ⁉
でも確かに、今出てきた人は普通に武装なさっているし.........。
彼の手には両側に刃があるドラハンでは【スパタ】と呼ばれていた剣がしっかりと握られていた。
はぁい?マジかよ。確かに異世界なら納得かもな。色々とね。とひとりでに納得。
「あの!そこの人!助けてください。僕、あのモンスターには勝てましぇん.........。」
「はぁ!?お前冒険者なんだろ?モンスターどうにかしてくれよ。俺は家でゆったりしたいんだってば!」
「そんなこと言われましても、僕はそこまで強くないので倒せないんですよぉ。」
「えー?そんなこと言われても困るんだけど.........。俺、剣も持ってないし。だから貸して。」
「あっ、はい…」と彼はおずおずと剣を差し出す。その顔には『こんなところに住んでいるのに何で持ってないの?』という驚きの色が濃く出ていた。
「って、こんなに刃がズタボロじゃダメじゃんか。まったくもぉ。」
と言って突っ返す。
「あっ、すみません。」途端にシューンと顔を下げていく。
まったくどうしたもんだ?
ドッタドッタ・・・
足音がして下げていた顔を上げると少年が出てきた森から、体長1メールほどある、デカい薄桃色のウサギが、二足歩行でこっちに向かってきていた。
「わー!?なんでこっちに来るの?痕跡全部消して来たのに!!」
「こいつがさっき言っていた【レッドバニー】ってやつか?」
「そうです!どうにかしてください!」
「ウサギは聴覚がいいから、そんなに大声で話してたらすぐバレるっつーの。そこら辺ちゃんと覚えとけよ。」
「うぇ!?そうなんですか!でも、どうしよう!?」
「はぁ。こいつ見たことあるから、ちゃんとした剣があればどうにかできるんだけどなぁ。」
出来ればこの少年が持っていたような両刃の剣じゃなくて【ファルシオン】みたいに片側にしか刃がない剣がいい。出来れば短剣で。
何となく右手を握った、何かを握っている感触があった。
「あれ?」
少年の剣は返したはずなのに…。何で俺、剣らしいの持ってんだ?
ちらりと手を見ると、さっき俺が思い浮かべていた様な…いや、まったくおんなじ短剣が握られていた。
「どういうことかは分かんないけど、ともかく、あの化け物ウサギをどうにかしねぇとな。」
軽く足を引いて、スタートダッシュ!
こいつの倒し方は…俺の予想が、記憶が合っていたら.........。
弱点は首だけ!
あいつの拳とかをギリギリで避けていき、勢いをつけてから首を狙って飛ぶ!
届け!!
シュッーー!!
あいつの首にある紅色の鉱石に俺の剣先がぶつかり亀裂が入る。
そのまま崩れ、あの化け物も見る間に消えていった。
「ふぅ.........。これで一件落着だな。」と少年の方に振り返る。
「え……えっ!?何であんなにすんなり【レッドバニー】を倒しちゃったの?あいつらD級のモンスターなのに?どうして?」と少年、滅茶苦茶オロオロ中.........。
「あぁ、確かにそうだったな。てことは…ここはドラハンの世界で間違いなさそうだな。」
ドラハンのモンスターはE、D、C、B、A、S、SS級とランク付けされている。
右に行くほど強くなる。今俺が倒したウサギはD級のモンスターで、ゲーム内では序盤によく登場するのだ。
「でも、弱点をしっかり押さえとけば簡単に倒せるぞ。」
「弱点…ですか?」
「おう。このウサギシリーズは首元に毛色に似た鉱石があるだろう?それが弱点なんだ。」
「それを壊せばどの種も倒せるんですか?何色でも?」
「そうだ。青でも、緑でも、黄色でも、なんでもな。全種あの石のおかげで直してるんだしな。」
ウサギには色違いがおり、どれにも石がついている。こやつが戦闘力は低いがD級になっているのは、石の影響で治癒能力が高く、いくら切っても倒れないためだ。しかし、その力の源である石を壊せば簡単に倒せるのだ。ついでに首なんかを切っとけばだが。
「そうだったんですね。そういえば、自己紹介がまだでしたね。僕の名前はルオンといいます。よろしくお願いします!」
「ふーん、ルオンねぇ。俺は、度会 諷音だ。こっち風に言うとフウオ・ワタライだ。よろしく。」
「ワタライさん.........ですか。珍しい名前ですね。」
「まぁな。この国の出身じゃないからな。」
「そうなんですね。そういえば、髪型似てますね。」
「ああ、そうだな。」
俺の髪型はドラハンのキャラクターであるルオンの髪型を真似ている。彼は薄紫色の髪の持ち主で、右の横髪により濃い紫のメッシュを入れている。そこで俺は地毛が茶髪なので、ベージュのメッシュを入れているのである。
「うん?お前の名前、ルオンだったよな?」
「はい、ルオン・マクノガレですが?」
「えっ!?マジすか。苗字まで一緒か、なるほどな……。じゃなくて!お前勇者じゃないの?」
ゲーム内での、ルオンは勇者というか英雄でプレイヤーが冒険するキッカケとなる人物だ。そんな野郎がなんでいるの?
「僕が?そんな訳ないですよ。今の勇者はガロさんですから。それに僕、強くないですし。」
「今言ってたガロっていうのはガロン・エグノエルの事か?」
「はい、そうです。」
なるほどな。それなら合点が行く。
ルオンが英雄になったのは、前の勇者のガロンを殺した怪物を倒したことによる。
そのため、まだガロンが生きているなら、こいつは勇者では無い。
ならば、なぜここにいる?ますます分かんない。
「今お前は、ただの冒険者なのか?」
「はい。でも、すごく弱いのでパーティーから追い出されそうなんですけどね。」
まじか…… 将来勇者になる人がD級のモンスターを倒せないのはだいぶ問題だ。
「それで、特訓にでも来ていたのか?」
「はい、そうです。」
「そこで情報になかったウサギが出てきて、逃げていたらばったり俺と出会いましたと。そういう事か?」
「はい!」
「なるほど。お前のステータスってどんな感じなの?」
「えっ?ステータス?」
「あー、剣術とかのレベルとか?わかんないの?」
「ああ、そういう事ですか!えっとー、【アビリティ・オープン】」
ルオンがそう言うと彼の目の前にウィンドウが現れた。だが、俺には見えない……
と思ったら、見えるようになった。
「これ、僕が仲間だと思った人に開示できるんです。」
「なるほど。」
そんでこいつのステータスはどうなってるんだ?
【 ルオン・マクノガレ
職業:冒険者
称号:駆け出しモンスター狩人
通常スキル
基礎剣術 Lv30
応用剣術 Lv10
基礎魔法 Lv15
固有スキル
動物言語理解 Lv50 】
……確か、最大レベル200だったよね?
通常スキル低!!
なんで、動物言語理解だけめちゃくちゃ高いの!?これじゃ、剣士じゃなくてテイマー向けじゃないか!
まぁ、おいとこ。比較のために俺のも出してみるか。
「【アビリティ・オープン】!」
俺の目の前にウィンドウが現れた!
【フウオ・ワタライ
職業:無職
称号:異世界より召喚されしもの
通常スキル
基礎剣術 Lv5
基礎魔法 Lv1
固有スキル
ヴォイド・イグジスタンス Lv1 】
ふむ?
通常スキルはまぁ、いいかな。
剣術スキルはさっき使ったからレベルアップしたんだろうな。魔法は使ってないから1のままと……
そんで問題なのが、固有スキルなんですけど!?
何なのこのスキル!?初めて見た!ゲームにはなかっただろ?
どんな内容なんだ?分からない……
さっき剣が現れたのもこのスキルの影響か?
もう分からん!この【ヴォイド・イグジスタンス】ってスキル何なんだー?
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