Op.1-6第3節

灯莉あかり花蓮かれんの所で寝たらどうだ? もう、夜も遅いし」

「あ……う、うん。そうだ、ね」


 夜、みやびは、壁にかかっている時計を指さす。

 すでに、短針がじゅうにじを若干過ぎており、すでに日付が変わっているようだ。


「……灯莉あかり?」

「な……なんでも、な、ない……よ?」

「何かあったか?」

「う……ううん。なんにも……ないよ……?」

「そういうならいいんだけど……」


 みやび灯莉あかりの小さな変化に気づいたのだが、隠そうとしているので、これ以上は言及しなかった。


「お……おやすみ」

「おやすみ」


 灯莉あかりはくるりと身体を回転させ、一拍置いた後、普通の足取りで、部屋をでた。


「……ばかっ……」


 そう言ったのは、扉を閉めた後だったため、みやびには聞こえなかった。


 みやびは、灯莉あかりが部屋を出たのを見届けた後、灯莉あかり楽譜スコアを見る。楽譜を見て演奏練習するのはライブの時に、灯莉あかりが魔法を出すために最も大事なのだ。


 ただ、弾けばいいってものではなく、灯莉あかりのことを想い、気持ちまでも同調させればさせるほど、より高い再限度を誇る。


「……ん?」


 みやびは、灯莉あかりの楽譜を見たとき、ある既視感を覚えた。


「…………」


 何かを考えながら、練習をしていくみやび

 それが、今後のとある結果になることも知らずに。


 ♪


「にぃ」

「なんだ、花蓮かれんか……」

「なんだってなんだあああ!」

「うわああ!? ぐぇえっ!?」


 いつも通りの日常よろしく、なんと今回は肘打ちである。当たり前だが、みやびはとても痛がっていた。


「また、先輩の譜面みてる! 浮気だっ!」

「浮気じゃないし、ちゃんと花蓮かれんのも練習はしてるから!」

「ならよしっ! って言いたいところなんだけど、さすがにそろそろ練習はやめた方がいいんじゃないかな?」

「そうなんだけど、ちょっと気になってることがあって……」

「?」


 不思議そうに首をかしげる花蓮かれんに、みやびは先ほど感じていた既視感を伝える。


「なるほど! やってみる価値はあるんじゃない?」

「だよな? 次の練習の時にやってみるか……」

「がんばってっ! 応援はしてるからっ!」

「うん、ありがとう」


 みやびの言葉を聞き、笑みを浮かべる花蓮かれん


「よし、じゃあ寝るか」


 雅は、机にぶちまけていた楽譜をきれいにファイルにしまい、花蓮かれんと一緒に寝室へと向かった。


 

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