Op.1-5第6節1拍
少し、時間を遡る。
『ご苦労じゃったな。パセリ』
「はい。依頼でしたので、お気になさらず」
『そうじゃったな。また頼むかのぅ』
「是非」
耳に装着されているイヤホンからツー……ツー……と、通話完了したとの合図が鳴り、そのままボタンに触れると、合図が鳴り止む。
「……」
パセリと呼ばれる仮面を付けた少女、本名はパセレッタ・ベラルーシ。パセレッタは物心がついたときには、人体実験は当たり前に行われる、狂気的な施設に引き取られていた。
パセレッタの四肢には、無数のメスが入れられており、その場所だけ皮膚の色が濃くみえている。
パセレッタは空に浮かぶ上弦を観ながら、夕方頃に出会った男女三人組を思い出していた。
「……」
しかし、感情というものがないパセレッタに、何かを思うことができない。
そのことに気づくか気づかないか、パセレッタは思い出すのをやめた。
そのまま手を下ろすと、影へ溶け込み、元から何もなかったかのように、消えた。
♪
「お兄ちゃん。あれ何?」
道中、
『お兄ちゃん』という、
そこには、『クレープ』という文字が書かれている、キッチンカーがあった。
「いい……に、匂いする……」
「クレープか。
「うん」
「わ……わたしも」
そこには色とりどりのフルーツが散りばめられたクレープのサンプルが広がっていた。
「お兄ちゃん、これ」
と、
抹茶アイス&ストロベリーホイップ
と、書かれた値札。お値段なんと六百円。やお手頃価格である。
「これ食べたいのか?」
「僕もすぐに決めないとな」
と、待ち遠しそうにしている
シンプルがいいと思った
ちなみに、塩バターの値段は四百円で全商品の中で一番安い商品である。
「わ……わたしは、これ……で」
「かしこまりました♪」
と、
「あと、これとこれを……」
「はい。以上で宜しいでしょうか?」
「大丈夫です」
「かしこまりました♪ お値段、千四百円です」
店員から「少々お待ちください♪」と、楽しげに言われたので、そばにあったテーブルで待つ。
「あれ」
と、椅子に座った時にふと見たレシートで何かに気づいた。
「み……
「
「むぅ。い……いま気づいたの……?」
レシートに、塩バターが二個、抹茶アイス&ストロベリーが一個と書かれていたのだ。
「み……
徐々に声が小さくなる
「まあいいよ。と、いうよりも……。
「……?」
「あっ……」
「クレープってこうやって作ってるんだね。お兄ちゃん」
記憶を失っている
生地が焼いている最中、隣に置かれたクレープ生地に、砂糖と四角く切り揃えられたバターが乗せられる。
その後すぐにクレープが折り畳まれ、クレープを入れる専用の、三角形のクレープ包装紙に入れられた。
既に一個作り終わっていたのか、クレープホルダーには同じ塩バターが既に刺さっており、その隣に出来立ての塩バターが入れられる。
クレープ店員の手際の良さに感嘆する
間をおかず、
クレープ生地の中央から扇型になるよう、ストロベリーホイップの線が描かれた。そこに、細かく刻まれたイチゴが散りばめられ、この時点でも充分美味しそうだったのだが、くるくると、クレープ生地が巻かれてからが本番と言わんばかりに、ディッシャーで掬われた抹茶アイスが乗せられる。その上からストロベリーソースがかけられ、最後に、スティックストロベリーチョコが刺された。
そのボリューム満点のクレープが出来上がり、クレープ店員は
「お待たせしました♪ 塩バターでございます」
「ありがとうございます。いただきます」
「あ……ありがとう……ございます」
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