Op.1-5 あかりは魔女の夢をみるか?

Op.1-5第1節

 目隠しされたあなたは、周り全てが閉鎖された石の空間の中にいます。

 封鎖された、と言うと語弊があるかもしれません。なぜなら、あなたの足元には底なしの大穴である、絶望の淵があるためです。

 あなたは何度も魔法を使おうとしますが、全て再現できません。

 それもそのはず、あなたを捕らえるために特別に作られた、全ての魔法を防ぐ魔法、〈封印術式アンチスペル〉が掛けられている石の空間ですから。


 布で覆われたあなたは絶望の淵へと足を掛け、飛び降りました。

 重き罪を小さな身体に背負って


          ♪


「気分はどうかしら」


 みやびは起き、のぞみの声に意識を覚醒させる。みやびの身体は治療されたのか、すでに痛みはない。


「ここはどこかわかるかしら」


 みやびは周りをると、とても見慣れた部屋にいた。


「僕の……部屋?」


 おかしいと、みやびは気づく。

 だって、



 のぞみは少し笑い、手を打合せ、で一回鳴らす。

 すると、パタパタと駆け足でみやびの部屋へ来る足音。ガチャと、ドアが開けられ、そこに現れたのは花蓮かれんだった。


「にぃ! 私、私、にぃがここへ運ばれた時、ほんとに……ふぇ……わぁああああん」


 花蓮かれんみやびの姿を見るや否や泣きだしてしまい、みやびの胸ぐらあたりに顔を埋めた。


「兄妹水入らずとはこのことだわ」


 などと、思ったことを言うのぞみ


九重ここのえみやびくん。実は……」


 と、のぞみはあの後を話し始める。


 どこからとも無く花蓮かれんが駆けつけ、すぐに保健室へ二人を連れていくことを提案するが花蓮かれんが却下。

 花蓮かれんが使う魔法、〈転移術テレポート〉によってみやびの部屋へ移動され、花蓮かれんによって簡単に治療したと言う。


「妹さんが〈転移術テレポート〉という転移魔法が使えることに驚いたわ」


 のぞみは妹の方を見る。


「ふふっ。いい妹さんを持ったわね。九重ここのえみやびくん」

「自慢の妹だからね」


 みやびは先ほどののぞみの説明を思い返すと、一つ聞きたいことが思い浮かぶ。


「二人ともここへ運ばれたと言うことは、灯莉あかりは無事かな?」

「もちろん無事だわ。本当にごめんなさい。〈カーバンクル〉を久しぶりに呼んだらあんなに成長しているとは思わなかったわ」


 この場にはいない灯莉あかりの無事を確認し、安心するみやび

 のぞみはもう一度謝った。


「事故はつきものだ。しょうがないよ」


 みやびのぞみのことを許した。

 そのままみやびは自分のベッドから立ち、顔を洗いに下の階にある洗面所へ行く。


「えっ?」

「……っ」


 そこには産まれたままの姿のまま、バスタオルで髪の毛を拭いていた灯莉あかりがいた。

 美しく傷一つない綺麗で、胸は少し大きめで、ぎりぎり大事な部分はバスタオルで隠れていた。そこから腰にかけて綺麗なラインを描いていて、さらにその下は……


「ごごご、ごめん!!」


 と、みやびは、灯莉あかりの小柄である身体を脳裏に焼き付けてしまった。

 時すでに遅し。階段を降りてきていた花蓮かれんに現場を見られていたらしく、後ろから声を掛けられる。


「にぃ……? 私がにぃが死んじゃうんじゃないかって心配になっていたのに? にぃはあれ? 先輩の身体でむふふした?」

「それは事実無根だ!!」


 花蓮かれんの方を向いたみやびは、花蓮かれんが起こした行動にさらなる悲劇に見舞われる


「にぃ、そんなに裸見たいなら私の見てよっ!」


 と、怒りっぽく言い放った花蓮かれんは、あろうことか自分がきていた服を脱ぎ始める。


花蓮かれん、兄妹とは言っても脱ぐんじゃない!」

「脱ぐもん! にぃが先輩の裸みたいって洗面所開けたんでしょ! 私の裸見て先輩のこと守るもん!」

「すでに灯莉あかりの見ちゃったから遅いんだってえええ!!!」


 と、はたから見たらとてもシュールな光景だが、その内容が爆弾じみている。

 服を脱ぎたい花蓮かれんと脱がせまいと花蓮かれんの暴れる身体を地面へ倒し、頑張って抑えるみやび

 後ろからガラガラと鳴り、扉が開かれる。


「み……みやびくん。わ……わたしの裸、み……見たいから開いたの……?」

「誤解だって! 顔を洗いに……ぶふっ!?」


 と、服を着た灯莉あかりがそこにはいるのだが、その服装がどう見てもおかしい。

 服がなかったからか、着ているのはみやびのワイシャツで、明らかに上だけしか羽織っておらず、みやびの高さから見上げるとチラチラと、飾り気のない純白のパンツがのぞいていた。


「な、なにしてるの!?」


 と、そこへ騒ぎを聞きつけたと思われる、のぞみが階段で佇んでいた。


九重ここのえみやびくん。幻滅しましたわ!!」

「誤解だあああああああああ!!!」


 と、そのまま階段を駆け上がるのぞみ

 みやびはただただ叫ぶことしかできなかった。


 結局、みやびが二人からの誤解を解くために夜遅くまで説得していたと言う。


         ♪

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