Op.1-1第4節

 魔女。その存在はとても有名だ。


 魔女はこの世で最初に、魔法として使うことができた少女であった。

 今まで、非科学的な現象として知られた魔法が現実世界に起きる。その時、人々は狂喜乱舞になったと言う。

 魔女はどのようにして魔法を使ったのか。それは、『自分で楽器を演奏して歌を歌うこと』だった。

 楽器が弾け、歌を歌えるのであれば誰でもできるものだと思っていたが、魔女は次のセリフを言った。


「自分自身の中に眠っている願望を歌に載せ、その身に宿っている魔力を使うことができる人が魔法を使うことができる」


 その言葉に、「限られた人にしか魔法を使うことができない」とも意味が取れ、実際にその通りだった。


 科学を研究している研究者達は、数少ないであろう魔法をつかえる人材を探し、魔法を使える訓練をさせ、今後の未来の為、現象を解析できないかと考えていた。


 研究者達は魔女の指導のもと、長い年月をかけて日本全国から魔法を使える人物を探し集め、その人物達が魔法を使う訓練ができる学園を設立した。


 それが、現在の『ディーバ魔法学園』だ。


 そして、魔女が魔法を使うために『楽器を演奏し、フレーズを歌うことで、魔法を使える。』という光景から『歌姫ディーバ』と名付けた。


 ディーバ魔法学園に通う人達は、それこそ最初のうちは女子しかいなかったのだが、途中から男子も使えることが判明したため、男女問わず通える場所となった。

 『歌姫』と評されるのは女性であるため、男性にも同じ言葉として使えるように〈演奏者ディーバ〉と、書き直されるようになった。

 〈演奏者ディーバ〉同士によるライブを行い、エンターテイメントとして人々に魔法の魅力を伝えるという魔女の策略は見事成功した。人々に娯楽の一つとしてライブを提供し、人々はライブを見ることで楽しんだ。


 年月が経ち、魔法という現象が世界的に日常になってきた頃、突如、凄惨な戦争が始まった。第二次世界大戦だ。


 各国の軍隊を用いて行われ、拳銃やライフル、戦車、戦闘機、戦艦などなどの兵器を使い、敵国を降伏させるために血と涙を流すために行われるもが戦争だったのだが、日本という国が招いた種が発端で、この世は未曾有の大惨事が起きてしまったのだ。


 その種とは


 〈演奏者ディーバ〉を戦争に使うことだった。


 〈演奏者ディーバ〉は魔法が使えた。しかも、今まで戦争に使われていた兵器を越える威力、戦力を持っていたため、これまでの常識が覆されたのだ。

 すると別の国はどうなるのか。答えはもちろん決まっていた。


 対抗して〈演奏者ディーバ〉を戦争に使うことだった。


 それにより、戦争は今までの兵器と共に、〈演奏者ディーバ〉が一緒に繰り出されるようになった。その結果としておびただしい数の〈演奏者ディーバ〉達が、その尊い命を戦場で散らした。


 そんな戦争だったが、一人の少女によって終結へと向かった。


 その少女は魔女だった。


 魔女は何をしたのか。それは誰もが思ってもいなかったことだった。

 なんと、自分で育て上げた〈演奏者ディーバ〉を自らの手で殺し始めたのだ。


 魔女は、平然と、冷酷に、〈演奏者ディーバ〉達を焼いて殺し、氷漬けにして殺し、切り刻んで殺す。


 魔女は殺すための手段を問わなかった。

 しかし、そんな事態もすぐに終わりを告げた。


 〈演奏者ディーバ〉達は、協力し、魔女に対抗した。

 数の優位性があったため、次第に魔女を追い詰め始めていた。

 沢山の〈演奏者ディーバ〉に囲まれ、窮地を脱することもできなくなった魔女は、最終的にその身を捕らえられてしまった。


 魔女の殺戮により、自国の〈演奏者ディーバ〉が減ったため、今までギリギリの戦いで戦争に勝っていた日本は、戦線を維持できなくなっていき、戦争に負け、降伏することとなったのだ。


 その後、魔女が犯した罪は許されるべき行為ではないと、即座に処刑された。


 今まで魔女は人々の希望の象徴でもあったのだが、この時にはもう、『悪魔』と言う意味での象徴になっていた。


 魔女の行動によって世界的に魔法の使用が危ぶまれたのだが、


「〈演奏者ディーバ〉同士による戦いを行い、殺し合うことがないエンターテイメントとして人々に魔法の魅力を伝える」


 戦争で〈演奏者ディーバ〉を使用しないと言う制約のもと、ライブやその訓練でのみ、魔法が使われることになった。

 今では、その研究が進み、『魔法学』と言う一分野を確立したのだった。

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